下方を流れる
動けないアスファルトを
凝視している
夏の衣服の軽率な体で、出来うる限り
常に重力のことを忘れず
下方を流れる、動けないアスファルトを
凝視している
歩く私 ....
うすももいろに
秋桜はまわり
コスモスが
ひろがる
死が
のみこまれてゆく
草原の秘密基地
今はもう影だけで
虫取り網を振り下ろす
残像が目に焼きついた
夕暮れの蝉時雨を
いつまでもそこで聞いていたっけ
通りすがりの車窓から指差した
この草原は僕なん ....
夜の手のひらに
背中を押されて
チラチラと散らばる
港の明かりを見下ろしに
いつもここへ来る
デパートの裏の階段にすわり
わたしたちは
寄り添ったり
ときどき 無口になったりし ....
あなたは、
簡素な手順でわたしの胸倉を開き
匂い立つ土足
こればっかりは慣れないものです
その度に鮮やかに毟られる
あなたと遭難したい
篭って
香しき動揺が眼に見える位置で
わ ....
▲
そして
どこまでも
群青の闇を往く
魚のあとを追い
かつての白い肌は
鈍く焼けてしまった
水の角を曲がり
更に水を下る
....
ひろい
のはらいちめんに
ふりつもった
ゆきが
キラキラキラキラ
すんだ
あかいひかりを
はなちだすと
うまれたばかりの
あのこが
ぽつんと
そこにたっていた
やさしく
すな ....
水族の呼気を満たし
肋骨を開いて浮く
揺らぎのなかで
ターン
長い長い眠りから目覚め
ゆっくりゆくっり目を開ける
繰り返し繰り返し見ていた
悲しい悲しい夢が瞼をかすめる
なぜこんなにここは白いのかと
あたりを見回す
白い壁
白いカーテン ....
カ ン パ ネ ラ 君 の 骨 な ら 返 さ な い 。
殺 し 合 う に は 低 す ぎ る 空 。
月にテープを送ろう
これが僕の声だよ
誰かに似てると思うかい
風の速度も知らないし
今日も素面で歌ってる
虫に答えは譲ろう
僕は分からなくていい
悟りは空に任そう
....
あなたは
とてもかなしく
笑う。
こすもすの
ひろがりのように
笑う。
いきものの
さがをいとおしむように
笑う。
窓枠から遠く、鴉の発音から
鴉の翼が発生して
西の方角、地平線に降ってゆく
黒い花火があったとしたら
こんな風に
ゆっくり悲しいのだろう
この手の中の窓枠を忘れず
この手 ....
90%知りたい
だけどそれはやめておく
死ぬのはいくつの歳か
それを聞きたいけど
聞かないことにする
と、57歳のおじさんが言った
ぼくの座る
駅前の公園のベンチの前 ....
右手を挙げると
鏡に映る自分が左手を挙げた
右手を挙げさせるために
僕は左手を挙げる
外の方から小さな鳥のような鳴き声が聞こえる
空はまだ晴れているだろう
午後は爆弾を買いに都会へと行 ....
捨て猫は泥濘で踊る
お婆さんの膝の上の心地好さを思い出しながら
捨て猫は泥濘で踊る
水たまりに映る汚れたトモダチと共に
雨降りの病みは、月明かりを遮り
大好きなトモダチを ....
母さんは何も知らない
母さんは全てを知っている
母さんはガラスの空である
母さんはのたうつ虫である
母さんは輝くひまわりである
母さんは君たちの母である
母さんは何も知らない
母さんは全 ....
その音を鳴らして
108
108
その音を
わたしだけにわかるように
ヘッドフォンをぶち抜くほど
大きな音で
何も聞こえなくなるほど
大きな音で
そうしたら
二人になれるよ ....
二足歩行を続けていると
いいことあるな
今日は
とびっきり かわいい
中学生に会ったし
青空に
薔薇は咲いてるし
コントロール、して、クローズ。巻き付いて離れないターバンのような頭痛が周りを跳ねて泳いでトビウオの羽が銀色に輝いて次にくるくると高速で回転してターンテーブルを指先で逆回せば戻るような軽やかな時間に華や ....
はかりしれないほど
白い カール
次の瞬間にはもう散り散りに
泡
退屈だから
ゲームでもしよう
三角波を数えて
せーの、で
ライド
今ならまだ
右にも左にも
踏み ....
私の紫陽花が色を求めはじめる
もう一度白い雨の日を思い描く
止まない雨はないのですね
白く白く煙のようにぬれていた
私の白い紫陽花を
一目でいいから見せたかった
....
知らない街で
洗濯物が揺れている
風に洗われて
青空を映しながら
知らない道に
鳥の羽根が落ちている
素通りなど出来なかった
「これは大空の破片なのだ」と
....
父さん!
なべぶた!
忘れものです!
僕です!
宛先を!
手足があったらヘビだって
歩いていたに違いない
晴れた日には日傘のひとつでも差してさ
そうだね、父さん
だからまだ
どこかで生きてて
ひるがえる灰色のシャツ
がそっぽを向く夕暮れ
の片隅に咲いている花
とそれをなじるあなた
本当は愛してたいのに
を口にしないひと
そして思ってもいないのかも
と勝手に悲し ....
伸ばした腕の先の
手のひらの先の
中指の先っちょが
触れるか触れないか、
のところまで
夏が。
列車を待つ顔たち
照らす陽射しの角度を
知ってか知らずか
右へ傾く
....
気がつくと きみは
魚になってしまっていたので
ずっと
きみを知っていたのに
はじめて見たような気さえした
望遠鏡をのぞくと いつも
波がよせては砕け
飛び散る
セロハ ....
塀の上のツツジの蜜をアゲハ蝶が吸っている
硝子屋の軽トラが道の脇に停まっている
見上げたら
茎のような電線の向こうに
無期懲役の太陽がある
自分の魅 ....
冷蔵庫には蟹がある
九本足の蟹がある
あたしは今夜見ないふり
首の赤味を押さえます
もしか
あなたが欲しいのが
甲羅の色のランプなら
あたしは ....
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