独りの部屋で
暑い、暑い、とつぶやきながら
服を脱いでしまった
裸になってしまった
シャワーを浴びようと思ったけど
面倒で動けなくなってしまった
今日はとても疲れた
エアコンをつ ....
ヘッドフォンで音楽を聴きながら眠ってしまった
朝それに気づきヘッドフォンを外すと
一緒に耳が取れてしまった
焦ったけど
焦っていてもしょうがないので
耳は置きっぱなしにして
ヘッドフォンを ....
すっかり草に覆われた
ぼくらが秘密基地と呼んでいたここに
今年もまた暑い季節がきました
打ち捨てられた自転車が
見捨てられたこの場所に
あの頃のまま忘れられて
なにが秘密だったんだろう ....
ひとみなひとり
ひとみなひとり
ひとみなひとり
青空にいる
地球の天井と
海との間で それは生まれる
気まぐれに上昇しては
白く漂う。
時に藍を
時にねずみ色を 背に
やがて
白(あるいは城)の中に
点在していたそれは
手と手をつなぎ ....
おれは海を釣ろうとする
海からおれを釣ろうとする
あなたは海を産もうとする
ひとの不思議を産もうとする
ぐるり
この星が太陽をひとまわりして
海辺の町に
また
桜が咲いた
....
目が開きました水死体
生きていれば ロマンポルノ雇い入れ
誇示したい孤児
泥酔で昨日を問い
泥酔を 死ぬやもしれぬと
とにかく泥酔はあなたによくないよと進め帰路が 退行
件名がRe: 好 ....
男は物陰で
右目だけ出して
立っていた
男は物陰から
右半身だけ出して
立っていた
男は物陰から離れ
ようやく全身を見せた
そんな事にひと月も費した
まったく ....
掌の木々が育ちすぎてしまったので
部屋はまた落ち葉で満たされていく
金属疲労した喜びのような朝焼け
台所の隅にある停留所で
君は名の知らぬ街へ行くバスを待っている
その靴は曇り空の下 ....
彼女と喧嘩して
いい加減にしろ
と怒鳴るつもりが
いい加減にすれ
と言ってしまった
こらえたがやっぱだめで
吹き出してしまった僕の
少し後に吹き出した君
ふたりで涙を流して ....
名前は?
いちおうクサノダイゴという記号はある。
どこから来た?
あの空のむこう。
歳は?
知らない。
仕事は?
ささくれ屋本舗
具体的には?
心 ....
遅れます 見なくてもわかる写メなんか送ってくんなら死ぬ気で走れ
重ね着もいいけどブラはしてきてよ乳首かキミか迷う初夏です
立ち並ぶビルに出社のキミよりも 今、声をかけてきたヒトの勝ち
....
大切にしていた箱が
最近とうとう見えなくなった
白い輪郭を今でも覚えている
美しいと思えるものを
美しいのだと思いこんでいたものだけを
少しずつしまっていった
一番最初に消えたのは ....
四二.一九五キロをみな包丁持て走る (摂津幸彦)
俳句は怖い。恐ろしい。どのくらい恐ろしいかって、「俳句」というキーワードでぐぐってみたらいい。いくつひっかかると思う。どれだけのひとが、どれだけ ....
夜の洞をぬけるとき
火のしずくにふれるとき
眠りの軌道をすすむとき
蝙蝠のいらだちに とろける皮膚に
濡れた夢の繊毛に
からまり もつれて
声は発熱する
星のページを閉ざすとき
....
深刻な顔で
アナウンサーが原稿を読んでいる
車が正面衝突したらしい
反対車線に飛び出し・・・
事故現場が映し出される
運転していた男性と・・・
最後の言 ....
(1)
僕は眩暈をおこし倒れゆく途中、眩暈の原因はこの部屋の絨毯の模様がどうにも見慣れない形に変わってしまったからだということに気づき、しばらく斜めになったまま考察を続けた。
(2 ....
赤く青く黄いろく黒く戦死せり (渡辺白泉)
なんだかだんだん非ジョーシキでなくなってきた「俳句の非ジョーシキ具体例」、今度は時事ネタである。それも茶化すわけにはいかないたぐいの時事ネタである。 ....
ニュー。ニュー。
新しくなることについて考える昼すこし前の柔らかい光だ。
上着のポケットにしまっていた石を垂直に投げる。加速度と重力。そう、加速度と重力がせめぎあうその瞬間の曇り空に、押し ....
わがうたは闇にあまねくある星のいまはほろびし宴のなごり
この酒を忘れてならぬ痛みさえ癒されゆくをかなしむひとと
寂々とさくらしべふる宵闇にただのみかわし酔いどれていた
ローソクもつてみんなはなれてゆきむほん (阿部完市)
このひとは現役ばりばり俳人で、ネットで検索するとたくさん句を読むことができるので、探して読んでみてほしい。普通の有季定型俳句も書く人なのだけ ....
母を脱ぐ
血を浴びて
いまだ名もなし (高柳重信)
すでに忘れられたとおぼしき「俳句の非ジョーシキ具体例」シリーズ、まだ終わってはいない。天災のごとく忘れたころ(実を言えば他のネタが尽 ....
網膜が揺れる
それが私の波動
井戸のように深い深い水底から
すっと浮かび上がり
光りの前で躊躇する
それが私の波動
その一瞬を見逃さなかったあなたは
あまり私の目を見なかった
嬉々として初夏の陽気を真似てまで我が玉肌を見たいか春よ
花に水をあげている君を見て
ああ、じょうろのまま一生を終わるのも悪くないな
と思ったのは、もう
うつらうつら
していたからなんだろう
背中の取っ手から
ひんやりとした手の温もり ....
遠い国で鳥があの娘を
拾って育てる
鳥はあの娘に名前をつける
あの娘は鳥に名前をつけることを考えている
鳥はあの娘に
おいしいお粥を作らせる
あの娘は庭のいちじくを
鳥にもいで来させ ....
「結婚しないの?山内さん」
とは セクハラなんやけども
小さい都市なのでまあ
お茶菓子とともに 語り合い
娘がおりますけど あんたら 話したらひきますやんかあ
アチラが立っても こちらは立た ....
リバーサイドは
駆け抜ける5歳児の髪にからまる花吹雪です
遠くを
視線が地平に出し抜けてカーブする先を
指折り数えている ものおもいする午後は
集合が いつか知ったことのように繰り返 ....
視界にて
生成される
着色料と甘味料
そこから逃れるようにして
ぽとり、と、うつ伏せるしかない
あなたとわたし
春に間に合わない体
ああ
お砂糖の誇 ....
夜が呼んでいるような気がしたので
誰かが待っているような気がしたので
自転車のかごにウイスキーボトル入れて
僕はさんぽに出たのです
どこか遠いところで
凪いだ海のおなかの中
呼び交わす ....
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