春が
わたしの中に入ると
増えます
やがて溢れ出して
玄関では靴が
遊びたそうにしています
星より遠いところで
唇が光った
君がまばたくと
古い世界は滅び新しい今がひらく
午前のテニスコートに飛び交う
黄色いボールは
それが僕のパッションなのでした
午後いや午前も
コルゲンのようなうずら卵のような
つるりと白く圧倒的にやわらかく飛び散りそうな
つきぬけてせつないぼくらなのです
ただポケットでヴァイブする神経が
吸い付くように研ぎ澄まされ ....
地に埋まった男は
逆さの姿勢で固まっている
そのまま足を伸ばし続けて
彼は、いつしか
木、と呼ばれるようになった。
最後の人が飛び降りたまま
裏返ったブランコの鎖が歪に静止している
翌日になれば元に戻される、それだけのこと
わたしは、もうずっと公園にいない
だから知らない
ブランコ ....
覗き込むと
少年時代だった
手頃な石を落としてみても
いつまでも帰着しない
頭上では飛行機雲と交差する記憶
不意に飛んできた雲から雨粒が落ちていくと
からーん、からんと
遠くで跳ね返る音 ....
ここに入れるは可。人様に見せるは不可。
ためいきのつば ここに吐き
埋めます
お酒も愚痴も吐きません
一滴残らず 飲み干し
目下のくま 色濃くでて
....
軒下で鳴ってる
縁側ではいつも同じ場所で躓いてしまう
窓は池
今日も小さな沈黙を保ち続ける
外の通りを
笑わない男の人が歩いていく
僕らの小学校
黒板の右、日付の下では
誰かが ....
いっそ
流せばよかったんだ
流せたなら。
溜めすぎて
ココロにカビがはえました
女の残り香が飽和した部屋の片隅のベットを
夏が来る前にシングルにしよう
と決めてから
もう何度も朝日を浴びて
僕が寝返りを打つたびに
ぐっと沈み込みながら
男臭いにおいを嗅ぎ続けてくれ ....
線をまたぎます。季節も七夕をすぎれば夜のための日々が延々と続くのです。アスファルト、アスファルト、きみは熱という熱を呼吸していますか?と話しかけてはこのマンホールのように丸い月 ....
君の好きな白いTシャツとリーバイスを脱いででも僕とセックスするかい
圏外は僕を孤独にするからさ、わざと知らない番号を打つ
くちばしをとがらせとがらせひからせてさいごのキスにしようと ....
こはるびよりのひだまりで
つりをしながらあくびをすると
ぽろっとくびがころげおち
ついでにうでもころげおち
なかよくはりぼてけりながら
うみのうえをかけていった。
いそにのこされた ....
どうしようもなさも手伝って
今日の夜は37度
人に縋るのも止したいような暑さです
あなたは決まって三歩先
速度を緩める優しさです
月だけ大きく真黄色で
止ま ....
1
無印の裏の自動販売機に
たまに売ってるオタマジャクシみたいなの
120円入れたら二個出てきたから
ポケットに入れて家に帰ると
一個死んでた
2
確定申告を出した帰 ....
右曲がりの坂道を
30歩のぼったところ
雨上がりには
アジサイが
酸性やアルカリ性に色づくので
それならば涙は、と
通りすがりのにわか雨を
ふたたび
つま先に
ひと ....
かつて恋にわれを忘れた人々のレールの上を走ってるだけ
火にくべる本の数だけ甦る いつの時代もありふれた恋
アフリカは広大過ぎて ぼくたちは湿った土面を踏みしめている
手が届きそうな低い空を
逆光に輝く雲が流れる
私は何か恐ろしかった
歩く犬の眼が不吉だった
堤防の道を愛想笑いで
私は歩いていたと思う
濁った ....
私は今風船をふくらましています
止まらないため息のように
少しずつ少しずつ
全てをはきだしてしまうと
手にしている風船を
捨てたい衝動にかられます
私はおととい風船を手放しまし ....
抗争に喘ぐ放送部員が歩く鋪装道を包装する為に
散開に難解で三階から飛んだ先輩を包装する為に
喧噪より面妖な卵巣を転送した女を包装する為に
葬列の猛烈なムスク香の倒立松明を包装する為に
高揚と抱 ....
パイの実がすぐ空になる すぐ空になるものがあと一つだけある
一人では食べきれなくて汚された皿の匂いは部屋の匂いで
単純な作業に終われああ今日も八年前と同じ青空
「何」と打 ....
ガムを噛みながら
赤いドアから君が入って来た
ガムを膨らませて
青いドアから僕は出ていく
この風船の中に
きっといくつも
理由はあるんだろうけれど
どの道僕らは
....
不意に
あたし窓と
繋がってしまう
鉛筆で
描かれた
教室の
窓
田の字のあたし
とても
赤い空が
あたしの中
震えてて
どんな
ちいさな欲望も
残さず
きれ ....
いやおうなく そめゆくのです あかくあかく あなたのなかの 薔薇のぶぶんが
あたしのこと かなしいもののしょうちょうと おもわないでよと 菊がいいます
せんせんせんげつにさいてた桜のき、き ....
歩き出す 30分で寝るために回り続けた扇風機まで
売春で出会った君が好きだったロイズのチョコを噛んだりしてる
今一度死んでもいいというような気分で英語の授業を受ける
明日の朝、起きら ....
空や海の碧に染まず
ただよう白鳥のように
かっこよくもなく
蝶々のように
ダッタン海峡もとべず
かといって
酔いどれ船に乗る勇気もなく
まして
悪魔の風船をとばしたり
大地の商人にな ....
「ほんとはね」
爆弾を仕掛けてるの
あなたの急所を
探り当てたよ
遠まわしに少しずつ
見えないように
わからないように
気づかれないように
ねえあなた燃えちゃうよ
燃えち ....
みんな石になる
みんなみんな石になる
おやきょうだいしんせき
ともだちだんなおくさんこども
ただのしりあいそしてしらないひとたち
いつかいつかみんな石になる
何色のお墓にしようか
変 ....
五感をはたらかせて
すれすれ を
歩いてゆく
波が薄く寄せるので
バランスを崩しながら
逃げよう
追いつかれたら
もうそこは恋で
出たり入ったり は
さくら貝 ....
二人で地面に小石を並べる
ひとつ、またひとつ
やがて円の形となり
収束していく始まりと終わり
夏の日
暑いね、という言葉だけが僕らだった
何故だろう
あんなにも
世界がありふれ ....
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