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運動場の
トラックを
規則正しく走る
小学生達
まるで
回遊する魚のようだ
こんなに小さいときから
命令されるままに
同じところを
何度も
何度も
回っていて
誰一人として
....
ドアの前に立ち
ポケットに手を入れ
家の鍵を探していた
古い玄関灯が
暗闇の中から
鉢植えの植物を
浮き立たせている
ふと見ると
合同な三角形で
濃い白色をした
蛾のたぶ ....
空き地の真ん中に
青い椅子が置いてあった
誰かが捨てていったのか
少しだけ古ぼけて
四本の足をきちんと揃えて
誰かが座るのを待っているかのように
倉庫の隅で
ひとつの闇と
もうひとつの闇が
汗をかきながら踊っている
南京錠のこじあけられる
冷徹な音をおそれ
かれらは時折、同時に
....
私は蜜を吸い
毒蛾になって
篝火に
吸い込まれた
けれど
明るいほうから暗いほうをみたのだった
逆からよくみえるということに気づきながら
ぼくたちは暗いほうを暗いねと言い
明るいほうから笑いながらみつめていたのだ
赤いひかりだけが1つ2つ3 ....
ぬるい春の夜
アスファルトの上に
花が降っている
葬儀屋の看板が
ほんの少し口角をあげる
目に見えぬ桃色の貝が
ひそかに息を吸い ....
憎しみが
孤独の中で 渦巻く
寄り道を 忘れた
乳白色の世界を
あの冬の雪だるまを
冷凍庫から出して
溶かした
新しい夏を迎えるために
全部
捨てようとした
もはや逃げ場はない
追い詰められた
袋のねずみだ
1万円が入った財布に
レシートの山
白ナマズの指
ロックがなくちゃ
やってられない
行き場のないホームレス
おんなはおとこをつれてわたしのいえにやってきます
あるときはひげのひと
あるときはとしのひと
あるときはすごくやさしいおとこでした
おんなはわたしをくらいへやにとじこめます
それがさいん ....
呼んだりするし
あいしているし
分類はいらなくて
おそらく実在して
手繰り寄せて
撫でる要領で
一見集中しているようで
投げやりにあつかったり
あのひとのうちで食べた朝メシは
こんがり焼かれたトーストだった
自分ちとはちがうパン
自分ちとはちがうマーガリン
ジャムもちがった
そのなにもかもに違和感を感じて
....
きみのオデコはとがっている、おやすみと言うたびに、やだやだされて、それはちょうど夏の虫だったから、掛け違えたボタンが蝉のように、ポックリ病だ、ぼくはきみを目覚まし時計と間違えていた。
縞模様 ....
きゅうりに背骨は
ないけれど
きみの背骨は
きゅうりの味が ....
くらい魚が一匹
つめたい壁をおよいでゆく
誰かが忘れていった
後ろめたいつくりごとが
ライターの灯りに揺らめく
髪の長い日暮れ
アマゾンという
喫茶店の水槽で泳いでいる
あの魚はピラニアだと
まことしやかに
客の間では
ささやかれていた
根拠といえば
そこに
張り紙がしてあった
「指を入れないでください」 ....
海上、
都市をつくろう
なにもかも波になれば
こわれるのに
疲れました
飛沫のように暮らす
花にも、
貴方にも
四月半ば
笑ったまま
夕飯の仕度をして
熊の冬眠のように
僕は夢の中でぐうぐうと眠りたい
この世の全てを失って
打算と利害を放棄して
愛したいだの愛されたいだの
何かが足りない、何かが大きすぎる
そんな言葉を捨て去って
僕は永 ....
僕は君と二人
コーヒーを飲んでいる
テレビの中では音と映像が入り混じり
ネットの中では人々が
様々な罵り合いを演じている
僕は君のために
二杯目のコーヒーを淹れる
君は微笑って、コーヒー ....
Yさんの可愛さが一億八千万くらいあるからスカウターが故障しましたよ
といって
つぶしためがねをさしだすのは
まえもやったし
だめっぽい
なんか
すごくまずいあめを
あげて
まずいで ....
自分の指を切り落として火を灯した夜
非可塑のたばこは声ではなかった
ささくれを噛んで飲み込んでみても
ち、ま、ちました皮が歯茎に張り付くだけでもう誰もいない夜
恒星は辛くて吸えな ....
南へ向かう鳥達が
薄色の空に溶けて行った
きみは衣装棚から
厚い上着を出してきて
胸元に飾った小さな憧れを
そっと隠した
子犬が地層の匂いを嗅いでいる
鳥の化石に恋をしたんだ
....
テレビがぼくを嗤っている
ぼくはテレビに向って笑えない
薄暗いプラットホームから
各駅停車の
ジェットコースターに乗る
あの日、僕は
いったいどこに行きたかったのだろう
雨降りの遊園地で
もう手をつなぐ人すら
いないというのに
....
彼女は父親の浮気を知ると
ホテルの駐車場での捜索を始め
理不尽に僕は運転させられた。
彼女はサイドミラーをへし折るとか
ライトを叩き割るとか物騒なことに関心はなく
自分の名前を書いた紙きれを ....
死んだのだということだけが確かだった。自分のことなど理解できない。それは、寂しかった。だけどそれは、確かなのだろう。簡単なことなのかもしれなかった。何故なのだろうと思う。自分のことがよくわからない ....
夜になり
気温が下がると
子供たちの咳は
ひどくなった
地上から浸潤してくる氷水を
順番に舐めに行った
毛布が欲しかった
ただ死なない
それだけの私たちを
地下に閉じ込めて
外から ....
男であること
なよなよした言葉で
変装してみせる
中性の安全地帯がビーカーの液で黄色に変わり
青いリトマス紙に
夜な夜な試験にかけられる
女であったなら
明日の仕事勤めなんか考える必 ....
白い砂漠を
透きとおるように走り
ドアを開けるひと
十字路から続く
道はあおく
どこまでも続いている
この土地に立つわたしに
何が見えるのかと聞く
見えるものは全ての風
見えない ....
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