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カーテンの裏に潜んだ結露を
指でなぞると
するすると雫は流れ落ちて
行き場のない小さな水溜まりは
冬の外気と人の温みのあいだで戸惑っている
わたしはうっすらと冷えた指先を持て余しながら
....
秋の空気には
透明な金木犀が棲んでいる
陽射しに晒した腕が
すこし頼りなく感じ始める頃
甘く季節を騙す匂いは
思い出の弱いところを突いて
遠くにいるひとの微笑みだとか
風邪気味の ....
最後の赤を脱ぎ捨てた
紅葉の合間から冬の声が届くと
過ぎた年月は
あどけない写真に
痛々しく画鋲の痕をつけながら
かなしみを、ときめきを、
なつかしさのオブラートに包み込む
....
春までの道のりを
手探りするきみの指で
うたは束の間、白く結晶する
凍れる河と
色褪せた山並みと
特急列車の行方を挟み
わたしの前で野分の一陣はわらう
今日も約束の書けぬ手紙 ....
赤錆の目立つ時刻表のバス停に立ち
来るか来ないかの
微妙な時刻にバスを待ってみた
進路の前にバスは無い
順路の後ろに気配も無い
行く先も馴染みの無い駅の
名前の書かれた ....
まるで他人行儀な
挨拶で書き始めたのは
あなたの選んだ便箋が
何だか照れ臭く
上目遣いにさせたから
感情を露にせずとも
温かな文となるようしたためたい
そんな課題 ....