語り口は風向
夢に朦朧
うつつに当惑
六畳一間
食べ残しのチョーク
まっすぐに引かれてない白線
そこはわたしの場所だ。
遠ざかれ。
そこがわたしの場所だ。
天気図のサブリミナ ....
教室に入ると
みんな騒いでいる 明日テストなんだって
いっしょに騒いでいたかったのに
僕はいつからか先生になってしまっていたらしい
みんなが僕の一挙一動に注目する
頭を掻いてみようか ....
あなたを駅まで送る途中
あまりに寒すぎて
顔をあげて夜の色をのぞいて
ふうわ と白い息を吐く
さっき飲み込んだあなたのこども
寒い夜の空の中へ、それきり
あたしのこどもにはならなかったの
....
夜に雪が降る
街頭の灯りの中に暗闇の中からすーと姿を現す雪
手を出すとふわりと手に乗り、スーと消える雪
儚いような命の雪
しかし、無数に降る雪は、消えても消えても又降ってくる
そして、何時か ....
しのぶの夢を見た。
20年前に分かれた女
スーツを着て今でも昔のそのまんま
公園の人ごみの中で目と目が合った。
ジーと視てしまった。
しのぶも見つめていた。
側に寄って両手を広げて見せた。 ....
今は崩れし前方後円墳
色褪せ剥がれたる胡粉
古への熱狂と興奮
陰鬱に漂へる悲憤
見出されし死者は怒り
水気無き額に雨滴り
明かされし{ルビ咒=じゅ}は空を{ルビ撓=たわ}め ....
少年は旅ゆく広い北海道
耕耘機に乗り地道に移動
のんびり過ぎて地虫がたかる
地虫も喰えばうまいとわかる
なんと美食家この怪童
***
社長さんの実家は青森
故郷の地酒で今 ....
ししゃもはいいねぇ
そういって親方は
お弁当を頬張り
しわくちゃの目尻が
太陽でいっぱいになる
むこうの田のなかで
ごろごろ転がしている
しろいのが白鳥です
ほらよく見てごらんなさい
稲の切り株のあたりで
落穂や二番穂をむさぼっています
あのやさしげな長いくびは
あなたの腕のようで ....
胃が四つに分裂しています
健康診断の結果、そう言われた
どういうことなのか理解できずにいる私に
つまりは反芻するということです
医者はたたみかけるように言う
反芻とはウシがするあ ....
コールタールのごとき
嫉妬剥がれぬ
我が舌先よ
「小さな」
と ついつい垂らして
わたしには
「小さな」
お醤油
小さな 春
小さな 夏
小さな 秋
小さな 冬
小さな 朝
小さな 夜
....
すばらしい日は
目から はちみつが出る
下を見れば
青い空き缶が吸い殻入れ
もたれかかれば、白い壁はやわらかい
ドアをあけると
黒壁に詰まった、赤い自販機
吸い殻入れの隣に
....
僕が話しているのは
まるで君が話しているよう
だから君が顔をしかめると
僕は苦しくなる
君を喜ばせてあげたくなる
そのときもたぶん
僕は君のなかにあるほほえみの種に ....
こい、しっと、ときめき、どきどき
そんなものをうたうようなじだいははるかはいごにおきざりにしてきたきがして、
うちはまたこんやもみみざわりなはぎしりをしながらねむりにつくんやろう
かなしみ、 ....
芸ができない犬はだめなんですか。
いえいえ。
そんなことは言ってませんがね。
でも、そんな感じのことは言いましたよね。
いえいえ。
あなたの犬は可愛いですねと言いました。
本音はどうなんで ....
そんなひまがあったら
窓を開けて月に吠えます
そんなひまがあったら
空をつかみ鳥になります
そんなひまがあったら
雲をちぎり雨を描きます
そ ....
黄金の陽が白い壁に照りかえり
あたりに歓びをまきちらす
肉づきのいい葉の一枚一枚より重く
なだらかな幹の淡い化粧よりたしかに
雨の歌は静かに
時計の針をとめた
あなたの顔 わずかな物 ....
翼が水面に
触れるか触れないか
それを楽しむ
それが飛ぶ者の在り方
傾けて弧を描いて
差し伸べて
張り詰めて
愛するように
触れずに
飛ぶために身体のあらゆる部分を
作り変 ....
入居見て日々数える敷居かな
ゐりいみ(て)ひにち(かぞえる)しきい(かな)
うるうると潤む舟見て歌津救う
うる(うると)ゆ(る)むふぬ(みてうた)つすくう
をろし味蓬ほのかに屠蘇凍り
をろ( ....
シゲジロウは大戦前の生まれである。
幼くして酒屋の丁稚奉公に出され相当苦労した時期もあったが、まあ今となってみれば概ね平穏な人生だったと本人は思っている。
戦場に駆り出された時も五体満足で本 ....
そいつは間違いなく蛇だった
カッと照りつくような夏の日
蛇はきまって現れる
1匹目は
小学校の時の夏休みのの暑い1日
隣町の海水浴場へ行った帰り道
その町の白いアスファルトの上に
小さな ....
ぬれた銀杏から
ぬれた銀杏の においがする
眼をとじても とじなくても
晴れた日の銀杏から
晴れた 葉のにおいがするように
紙の 傷のある指と
かさの柄をにぎる指
と ....
「監督ぅ、ここの寸法はどのくらいにしたらいいんですかー」
越後工務店の若い職人が急ぎ言う
「そこは、rがこれくらいだから・・・」
サンダルを脱いで上に上がると
こっちをちょっと振り向いて監督が ....
初冬というには、カーテンとレースと硝子の温度差の
循環もいまだ緩やかな隙間 立冬の日の深まりらしく
ベランダに出てみれば 秋のつつがない光
唖 唖 そうそろ落陽ですな
....
ひるまに
今年はじめての
しろい息をふきだした
わたしの口は おそらく
しろい雲でおおわれていたことだろう
わたしは雲をうみ
そう ひつじのかたちをしたしろい雲を
ながめて
ながめ ....
湯船にゆっくり脚をのばす
私は顔をお湯から半分だけ出して
鼻息で作る波紋を楽しむ
沈黙
あなたが入ってくるとき
私は寝たふりをしている
湯かさが増して
鼻で息ができなくなったとき
はじ ....
[目ざめている]
朝からずっと
手のひらを見つめる
遠くのほうで
蛙が鳴いている
[祖父]
耳が遠くなった祖父は
海に似てきた
くりか ....
平和ボケしています
毎日いそがしくしていますが
平和なことにかわりありません
冬の寒さにまいっていますが
平和なことにかわりありません
あたしには
必要最低限のものがあって
べつに必要最 ....
こころがあったかくなるように
がっこうから帰ってもまだあったかいカイロを飲んで
くちびるを ぶるぶぶぶぶ ってして
粉をたくさん吐きだしながら
かみさま、ってよんだ
今日も一日中
足の ....
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