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空がゆっくりわらうから
わたしはよるを待ちました
つきはわたしを見下ろして
二月はさむいといいました
雪もふらないのに何を
ふくらみはじめたつぼみを前に
ぱちんとひとつ音たてて
わた ....
小さな輪と大きな輪に
おやゆびとその他のゆびを差し込んで
しょきしょき 振りまわす
年代物のたちばさみは
わたしの手に大きすぎて いつも
切りすぎてしまう
on the 眉毛のまえがみ ....
わたしはまだおわらない
きみもまだおわらない
おわるのはだれだ
昨日や今日や今年のよるか
今日がおわる
明日がおわる
今年がおわる
ふりかえらない
毛糸がおわる
てぶくろがで ....
二月ぶりに実家に帰り
仏教徒のくせにクリスマスに会う
きみはいつもの通りアニメソングを口ずさんでいて
まるで昨日別れたようにわたしに声をかける
いつものように15分遅れて
待ち合わせ場所 ....
おふろに一緒にはいってくれるきみへ
にくにくしいねといったときに
なぐらないでくれないか
わたしはこんなにほねほねしいのに
といったときに
胸のふくらみをつつくのをやめてくれないか
と ....
ひるまに
今年はじめての
しろい息をふきだした
わたしの口は おそらく
しろい雲でおおわれていたことだろう
わたしは雲をうみ
そう ひつじのかたちをしたしろい雲を
ながめて
ながめ ....
あなたに手紙をかいた
ながいながいマフラーに
愛情だの執念だの絶望だの
うらみごとを鈎針でえんえんと
かきつづけた
読み返そうと
手繰り寄せたマフラーの編み始めに
秋が見える
....
空はややこしく物悲しい
こつこつと誰かの一人帰る音がきこえる
車の高いクラクションがなる
冬の風が耳にしみる
先ほどまでうすいシャツ一枚でいられたのに
わたしはカーディガンをはおり
つ ....
目を閉じて
自分の身体をなぞる
髪がある 冷たい感触
耳がある したのほうが柔らかい
眼窩がある 目が飛び出そうで怖くなる
鼻がある 少し油っぽい
唇がある 言葉が溢れそうだ
首がある ....
20時半発の夜行バス
わたしは財布片手に飛び乗った
12時間かけて向かう先は東京
海山川を越えて
わたしは東京に向かう
ただ埴輪に逢うために
前の席に坐ったサラリーマンのいびきに
仕 ....
目をとじると
だれかの鼓動が聞こえる
机のすみや天井やそのダンボールのかげからも
だれのものかはわからない
けれども だれのものでもいい
わたしの気配をうかがう
いくつもの鼓動
....
メルルーサというさかながいるらしい
昨日食卓に並んだ
私はそのさかなをしらなかったので
想像してみることにした
全長三メートル
深海にすみ ぎょろめ
口はとがり
歯がある
縦に ....
ひとりきりでいなくなろうと思った
特に悲しみなどないのに橋の上から
飛ぼうかと思っていた
わたしはみかんがだいすきだったので
最後に一つと思ってくちにふくんだけれど
あまりにおいしくなかった ....