小学三年のとき、図画工作で足の彫刻(といっても粘土細工)を作った。手首から先の手か、足首から先の足をつくれといわれ、私は足にした。足の方が単純構造で指も短く、簡単そうに思えたのだ。基本的に、全員が自分 ....
夜の霧の街灯の脇から
ほんとうに小さなものたちが湧いている
きぃきぃと
ほんとうに小さな声を上げている
いられなくなったのだねと
手を差し伸べると
爪の先から入り込んで
....
閉店まで迷って
結局最初のレターセット
会った事のない相手なら
少ない情報すら
印象になるから
探していたのは
好みのレターセットではなく
わたしの分身だったのでしょう
きゃらめる 7
ことば
1
とてもさむいあさはやく
よぶこえでめがさめた
もうふにくるまったまま
ずるずる
ゆかをは ....
まぐろの解体ショーに行く
はんてん角刈り包丁持って
さばいてさばいて大喝采
死んだまぐろが
このように
ほら奥さん
一枚どうですか
一枚一枚
まぐろって
骨と骨のあい ....
甘い言葉は
どんな悲しみも
悦ぶ虫達が
赫ぐ影を
柔らかい地球は
固めて伸ばし
チョコレートコスモス
何をか透かして
吸い上げられた空が
象の奥で咲きゆれる
....
唐突に
襲い来る淋しさ。
全身
悪寒に震え
奈落の底へ
足元から崩れ
途徹もない空虚。
この感覚
何もかも
空しい。
欲望が消え
世界が消え
立ちすくむ。
....
視界に広がるこれまでが
あまりに深いので
私たちはすくみながら頂に立ち
いつの間にか手を繋いでいた
あの層を一枚一枚剥がしてゆけば
私たちがいつか手放した大切なものに
また会え ....
今にも
空へ溢れていきそうな桜の花弁や
空へ昇っていくような雪柳の白さに
そろそろと背伸びをしながら
私も溢れていきそうな
春 です
南向きの坂道を
とんとんとん と降りていけば ....
海から見えるように
植えられたので
海岸沿いの山の中腹を何キロも
桜並木は続いている
去年は車の中から
弁当を食べながら観たけれど
いつか海の上から見たいね
ずーっと櫻色の帯になって
....
昭和生まれの私の肩を
平成の雨が容赦なく打つ
汚れや痛みは流されず
ただ剥き出しの私だけがここにいる
昭和という時代の終わりを
私は祖母の墓参りの帰り道
高速道路の車の中で聞いた
ま ....
チリチリしたものがふわふわして
涙たっぷりの朝の食卓になりました
誰もいない台所はいま荘厳なひかりにあふれています
醤油のこびりついた容器も金色に輝いています
空気の一粒一粒が新しく生まれ ....
空はだいぶ春色ですが
この足元は冬色です
がりがりと音を立てる
そんな冬色です
前も後ろもまっしろです
雪とは少し違います
地面にしがみついている
構成成分は一緒ですが
前も後 ....
駅のホームは終電まで1時間の23時で、ぼくは「のりかえ」が「チェンジ・ヒア」と訳されているのに気づく。「チェンジ・ヒア」というのは「いる」ところからスタートしているが、ぼくらは「いない」ところからスタ ....
あら、困ったわ
が口癖の君が困った様子なんて
今まで見たことがない
あら、困ったわ
なんて言いながらも
トントントンッとまな板の上で大根を切ったり
ザッピングをし続けた挙句の果ては ....
またはドキュメント晩酌時の佐々家。
夜のテレビの紀行番組で、
アンダルシアの風景が写る。
「アンダルシアって、アではじまってアで終わるね」
と夫。
「そうだねえ」
とわたし。
....
シルクハットの手品師は
自分の姿を消しました
種も仕掛けもなかったので
もう元には戻らないのでした
相棒の鳩は
空を飛んでいます
わたしを忘れた光が
昇りつづけて朝になった
目を閉じても冷たい指先
さよならを言う光に触れた
さらさらと
さらさらと
雨雲が川のなかを遠去かり
水鳥を連れていってしまった ....
4本の弦を見つめるあなたの写真を見つめる4人の仲間たち
誰か私に少しばかりの
愛と痛みを与えてはくれまいか
ちくりと刺すような愛と痛みで
この眠った心を蘇らせて
背負いきれない宿命を
投げ捨てて森を駆けても
方角さえも掴めずに
結局どこに ....
「 あぁ あぁ あぁ あぁ
嗚呼 嗚呼 嗚呼 嗚呼 ・・・ 」
休日の公園
木々の上から
{ルビ烏等=からすら}ののどかな調べに
地上の鳩等も舞い踊る
噴水のほとり
餌 ....
エスカレータの
頭上
鳩の巣
歩く歩道を
歩く人
売られてゆく
手すりの色は
声枯れの黒
反対側
ガラス細工の壁
地 ....
まけじゃんけんというものをおそわりました
さきにあいてがだしたてに あとから
わざとまけるてをだすじゃんけんだそうです
ぱーには ぐーを
ちょきには ぱーを
ぐーには ちょきを
ま ....
開け放たれた音楽室の窓から
合唱部員たちの歌声が聞こえる
放課後、行き場の無い僕らは
校庭の隅にある鉄棒に片足をかけたままぶら下がり
いっせいの、で誰が好きかうちあけると
やはり同じ子が ....
春泥が
明るいインクの
滲み、です
その滲みが
無意識に漏れる
芳香、です
その芳香が
呼吸のような
肌色、です
文字を読む幼子の口調の明朗さで
明 ....
あした て何だっけ
陽が昇ると それは朝 て気がするんだ
確か 記憶では
でも 暗いときもあったような気がして
それも朝だったように 思い出されて
朝 て何だっけ
あした て何だったか ....
コーヒーには砂糖をいれない、
いま私はめちゃくちゃに機嫌がわるい、
人間なので機嫌が悪い日くらいあって当然なのだけれども、
こんなに機嫌が悪くなるとかえって気分がいい、
コーヒーにはミルクもク ....
君は木立の中に
透明な花を
隠している
涙は霧のようで
僕から熱を
奪わない
幾たびも逢いたい
僕は変わってゆくけれど
やわらかな予感に包まれた
君が変わることはない ....
音も無い
そんな雨に出会って
そんな中に
佇んで
包まれて
張り付いた前髪から跳ねる雫も
もう遠くの出来事のようで
霞んでいく風景に
この道はどこへ行くのかと
この私 ....
君の笑顔は椅子に似ていて
笑うと誰もが顔に座りたがる
散歩途中のお年寄りや
旅に疲れた旅人
アイスキャンディーを持っている人
ただ夕日を見ているだけの人
誰かが座ると嬉しそうにする ....
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