歌声は海に響かない
完食
少女は壊れた人形を抱き、
死んだように海底を歩く
行き先などないのでしょう
目的は?夢は?憧れは?
と、そんなものも当然なく
穢れなき君の容姿
傷だらけの君は
穢れだらけの僕は
傷つくことを知らない
僕ら少しも似てないね
前へ、前へと進んで君は傷ついて
今、今沈んで行ったけれど
後へ、後へと少しずつ僕は
傷つかないように気をつけて
こうも穢れてしまったのだろう
海底で、口笛は吹けない
君の好きだった唄も、歌えない
今度は僕が、泣きそうで
でも、君はまだ僕に手を差し伸べてくれるんだよね
一緒に歌ってくれようとするんだよね
小さいはずの君の手が、とても大きく見えたんだ
傷ついて、それでも笑う君に夢や憧れは何もない
穢れてて、傷つかない僕にも夢や憧れはいらない
僕たちは、深いところで似ていたんだね
呟けない海底で、僕は君の手を握り
今、歩く