歌声は海に響かない
完食

少女は壊れた人形を抱き、
死んだように海底を歩く

行き先などないのでしょう
目的は?夢は?憧れは?
と、そんなものも当然なく

穢れなき君の容姿
傷だらけの君は

穢れだらけの僕は
傷つくことを知らない

僕ら少しも似てないね
前へ、前へと進んで君は傷ついて
今、今沈んで行ったけれど
後へ、後へと少しずつ僕は
傷つかないように気をつけて
こうも穢れてしまったのだろう

海底で、口笛は吹けない
君の好きだった唄も、歌えない
今度は僕が、泣きそうで

でも、君はまだ僕に手を差し伸べてくれるんだよね
一緒に歌ってくれようとするんだよね
小さいはずの君の手が、とても大きく見えたんだ

傷ついて、それでも笑う君に夢や憧れは何もない
穢れてて、傷つかない僕にも夢や憧れはいらない

僕たちは、深いところで似ていたんだね
呟けない海底で、僕は君の手を握り
今、歩く


自由詩 歌声は海に響かない Copyright 完食 2005-06-14 20:42:47
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