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◆ 『盗まれた記憶の博物館』 ラルフ・イーザウ/酒寄進一訳(あすなろ書房) 双子の姉弟 ジェシカとオリバーの元にある日、警察がやって来る。ベルリンの博物館から、貴重な古代石像が盗まれ、その容疑者は、そこで夜警をしていた、姉弟の父親トーマスだというのだ。ところが、姉弟は、たった一人の肉親であるという父親が存在する記憶自体をそもそも喪失していた。父親は、そして父親の記憶は、いったい何処へ消えたのか? 姉弟は、屋根裏にあった父の日記を見つける。そこには、父がかつて著名な考古学者であったことや、記憶の王国クワシニア(そこは現実世界から抹消された記憶の墓場)の存在が書かれていた。。 芸術的才能があるがちょっと頼りない弟オリバーは、父を探しにクワシニアへ乗り込み、ITに長けたしっかり者の姉ジェシカは、弟の記憶をも失いつつ、現実世界で、学芸員ミリアムの協力を得て王国の謎の解明に挑む。 多くの古典が読まれずに埋もれているのは惜しい限りだ。 記憶は勝手に消えてしまうのではない、という。対象に何の意味も見いだせないとき、それは姿を消してしまうらしい。ならば、もし記憶の本棚があると仮定したら、そこに集められた一冊一冊の本に、何らかの意味が見いだせなければ、その本棚には一冊も無いのと同じである。 裏返すなら、 記憶とは、きっと懐かしいほどの愛なのであろう。 *(END) フランツ・カフカ『審判』(岩波文庫 辻 せい訳) ちょっと前に『城』(新潮文庫 前田敬作訳)を読んだら意外に面白かったので、読んでみました。こちらも面白かったです。 とはいえ、お話の内容そのものはそうでもなく、どちらもKという主人公が不条理なあれこれに翻弄されるというもの。お城にどうしても入れなかったり、いわれのない罪への訴訟に悩んだり。 そうじゃなく、時々出てくるボケ?みたいな文章。 例えば、『城』では、出した書類が戸棚に入らないからって、戸棚を倒して書類を無理につっこんで、その上に三人がかりで乗っかって扉を閉める、という描写がある。ばかなの? とか、Kに助手としてくっついている二人がいるんですが、その二人が人の後ろからかわるがわる顔を出したり引っ込めたりしてる、っていうところがあったり。 『審判』でもそれは健在で、机に手を押し付けて指の長さを確かめている人、カーテンをしわくちゃにする人、ろうそくを腿の上に乗せてバランスを取る人、敷物の毛を指でかきなぜる人、KはKで、弁護士の家でそこの看護婦(お手伝いさん)と弁護士の書斎でいちゃいちゃしはじめる、弁護士は自分が偉くなった設定で肖像画を画家に描かせるし、画家は似たような荒野の絵(ベッドの下でほこりまみれ)を何枚も売りつけてくる。 あと、役人が弁護士を拒むために来たかたっぱしから階段から突き落とす、弁護士側は役人を疲れさせるために階段を駆け上がり、わざと突き落とされ、下で仲間に受け止めてもらうを繰り返す。 って何これ???前に『審判』を映画で観た時、ここの映像は無かったと思うけど、こここそ見てみたかった。 とにかく、不条理な事がどんどん進む暗っぽい文章の中に、時々変なことをしてる人がすっと挿入されてて、そのタイミングが絶妙で、何とも言えない可笑しさを生んでいるのです。 普段冗談を言わない人が、真顔で冗談言ってみた、貴重な瞬間。 それで、内容はさほど面白くないのに、それが見たくてどんどん読んじゃう。 面白くないとは言え、不条理さは、現代に通じるものがあって、役人に、村の人たちが翻弄され、支配されまくる、裁判官や弁護士に、一般市民が翻弄され、支配されまくる。セクハラやパワハラもあり、洗脳されていく過程みたいなのもよく書いてある。 こんな他にはない小説、カフカは捨てて欲しいって言ってたのに、死後未完成ながらも出版してしまう友人の気持ちも分かります。 真顔の冗談が見たい方は是非。 書くか書かないか、どのように書くか、迷われている方がいたら読んでみてください。 その場の空気はどうあれコンセプトは自分で決めること。必要ならそれを自分で表明すること。題材を書籍という縛りのなかで自由に決めること。その自由に対して責任を果たし、読ませる文章を書くこと。それが大人の嗜みです。そして、私は参加者の文章の凡非凡は問題にしません。書く意志にくらべればそれは誤差のようなものだと思います。読む人はあくまで本と出会えるきっかけと捉えて、本当にその本について知りたければ自分で探して手に取る。書き手に責任を押し付けない自主的な態度もまた大人の嗜みです。 内容要点のしっかり書かれた書評も美しいものです。一方で数百ページの哲学書を短歌一首で言い当てるような「感想文」にも出会えないかなと期待しています。そんなものばかり集めたい、などと虫のよいことは考えていませんが。 以上、スレッドオペレーターとしての現在の私の考えを表明します。本との向き合い方は様々にあります。子供ならばひとつの有り様を教師に教わる状態も仕方ありませんが、大人は自由です。向き合う本も、向き合い方も、自分で選ぶのです。 中勘助『銀の匙』(岩波文庫) そこに自分の身体を移動してその場所の空気を吸い、音を聴き、景色を眺め、様々なものに触れて味わい、普段とは違うときを過ごすのが旅だ。読書と旅の違いは様々にある。身体の移動がないぶん、身体の限界を想像で越えようと思えば越えることができ、空間だけではなく時間の移動も可能であることは、魅力的な差異だと思う。インターネットはおろか、テレビすらない時代の会話の息づかい、様々な植物の名前、その場の空気さえも感じとった気にさせてしまうのは、それを圧縮し、格納し、注意深く読む者にだけ解凍されるきめ細かい言葉なのだろう。 この小説での中勘助による滑らかで美しい響きを伴った文章がもたらす感触は、好きな詩に出会ったときのそれに近い。『銀の匙』は中勘助の自伝的小説である。自伝的小説という性質上、明確な筋書きというのはなく、感想文の書きにくい本ではある。接し方によっては閉鎖的で、感想や批評を拒み、自身の世界を守るための静かな戦いの意志さえも感じるかもしれない。書かれた感想文やレビューの類いをさっと検索したが、岩波文庫版の解説にかかれた和辻哲郎の文章を足掛かりにしたものが多い。私もその和辻哲郎の次の言葉を足掛かりとして、踏み込みたい。狩りのときに周囲と一体化する狡猾さを、不様な私なりに演じて。 (引用) 『銀の匙』には不思議なほどあざやかに子供の世界が描かれている。しかもそれは大人の見た子供の世界でもなければ、また大人の体験の内に回想せられた子供時代の記憶というごときものでもない。それはまさしく子供の体験した子供の世界である。 (引用終わり。岩波文庫版の解説より) 子供時代を回想して書くことと、子供の体験した子供の世界を書くことと、差異があるとすれば何だろう。それはたぶん、大人が想定する子供の枠に収まらない子供を描いているのではないか。それはたとえ自伝であっても実像とは限らない。私的な記憶の取捨選択と絶妙な配置があるに違いない。取捨選択され配置されたそれらが読み手にもたらすものは、たとえば伯母さん、お国さん、お恵ちゃんなど頻繁に登場する関わりの深い人たちからみたものとは異なるであろう。私的な観察に基づく自伝だが、読み手がまるで自身の過去を追体験するように懐かしがったりできるようにも感じる。事実この作品は国語の教材として3年間かけて深読みされるような読み方にも耐えているのだ。この客観性は、文章の甘美な印象とは一見裏腹な、辛辣な人間に対する見方に基づいているように私には思える。 安藤繁太と喧嘩したのを中沢先生に叱られた場面で、繁太が先に根負けして泣いて謝ったのに対して、「自分がただ小さくて弱いために理不尽におさえつけられるのがくやしくて 今に見ろ と思いながら」泣くという意地の張り方をする。ここに至るまでに体力でも学力でも決して恵まれて来なかったことが、安易に屈してはいけないという気持ちになっていたのだろう。その気持ちをみせるほど中沢先生のことを信頼していたようにもみえる。大人に対しても、同窓の子供に対してもその人間をよくみているから自分が悪いか悪くないかも分かるのだろう。こういう意地の張り方は好きだし、緻密な観察の源泉になっているような気がする。恵まれない境遇ながら教養が豊かだった伯母さんから得たものも、お国さんやお恵ちゃんと遊ぶことで得たものも多いだろう。お恵ちゃんのにらめっこで顔が崩れる描写の辛辣さもこの本の好きなところのひとつだ。 散文に興味がなくほんとうは詩を愛した著者なりの美意識と、こうした意地の通し方が交わり、この文章が生まれたのだと思う。その文章を好きな詩を読むように接する私の読み方が正しいのかわからない。美意識は到底及ばないとしても、この作品に見える意地の通し方が私は好きなのかもしれない。 本年もたてました。年齢制限は引き下げました。学校の読書感想文は本を嫌いにさせると聞いたことがあります。本を好きになれるような書き方で、年齢を詐称してここで書くのもひとつです。マンガOKを明記したのでそれも歓迎します。字数の目安はこのところあまり守られていないので外しました。短くても長くても、短歌でも詩でも俳句でも川柳でも、内容形式は一切問いません。もちろんオーソドックスな感想文でも。 1 スレッドを新規に作成したり、コメントを書き込むにはログインが必要です。
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