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凍らせた私の血を
温めなおしていた
あの季節とは
もう
さよなら
サングラスも
その帽子も
ここから先は
進入禁止
ベランダでは
服を
もう一枚
涙
拭う間もなく ....
十月の午前の窓は開いていた
どこか遠くで冷やされた風
部屋はあのときの青に澄んでいた
十年ほどまえ商用で行ったアルゼンチン
仕事を昼までに終え
通訳兼運転手の日本人が ....
アイデンティティという言葉を知っていますか。
自分が何者であるか?
自分が何をなすべきか?
ってなものらしい。
最初はみんな意識しません。
しかし、そのうち意識せざるを得ません。
それ ....
「ただいま」とあなたが言う
「おかえり」と私は応えてお鍋を火にかける
リビングにいるあなたを見ながらキッチンに立つ
別々のことをしながらも同じテレビを見る
厳密には私は音を聴いているだけだ ....
白いシーツがうねりながら迫ってくる。ぼくはおおきなベッドに
いる。シーツは生き物のようにぼくのからだを捕らえる。シーツ
に巻き取られると、頭まで包まれて目の前が暗くなる。シーツが
締めつけてきて ....
くちびるをとがらせて
こいしをけとばす
りょうてはせなかでむすび
あかねぞらにあかとんぼ
こころはくすぶって
やりきれないりゆうが
くちをついてこぼれだす
きのうはだいすきなあのこを
....
空を見る人に詩はいらない
ほんとうに
空を見る人には
月日星の巡りや
吹く風のわけを思う人には
咲く花を知っている人も
詩を欲しがらない
花が咲くということの意味を
ほ ....
授業が終わると、真っ先に教室を出る
いつもなら軽音楽部の部室で
とりとめのない話をして
演劇部の発声練習を聞きながら
ひとりの娘の姿を追いかけるのだけれども
夏休みの間、炎天下の中ひたす ....
ウルル 〜エアーズロック〜
気を失うほど大きな岩
アボリジニーの聖なる地
地球のへそと言われる大きな岩
幾億年、赤い砂漠で時を待つ
風よ、太陽よ、月よ、、星よ
....
おれは酎ハイ
ふたりは生中
途中下車して駅前の
会社の帰りやきとり屋
仕事の話
お互いの主張
多少気まずくなる話
家族の話
時計を見ると
もう ....
突き破れないでいる
太い風が渇いている
誘われる粒子たちよ
きみらは何処へゆく
精神に吹く風を幻視
声が虚無を連打する
突き破れないでいる
太い風が渇 ....
赤い紅、鈴虫の声
夏の光を殺して空に唄う
君の細い肩、狂おしく
すべてが溶けて時は止まった
どうしてまた帰ってきた、何もないこの場所に
鈴虫の声
今年もまた聞こ ....
メガネをかけた、小さな年老いた首相は、辞職を宣言する。
彼に炊かれたフラッシュは、孤立を強いる。
「我々」は「君」と「僕」に無限に分割される。
かつて、「我々」と、語った唯一の宇宙は、 ....
思いのすべてを投げ出して
あなたに抱かれたあの日の夜
微笑みの影に気づかないふりして
瞳をそらしながら目を閉じた
空には十六夜の月
満月は、あまり好きではないと
....
絹のすれる音が、ひとひら
二枚、三枚と
声にならない音をたてて
深い闇に落ちていく
夕と夜の間に
音もなくまぎれこみ
ひとひら、ひとひら
落ちていく
....
見渡すかぎり曼珠沙華
曼珠沙華だけの世界に
二人で行った
風もなく、音もなく、香りもない
ただ、曼珠沙華だけが咲き乱れる
あか、赤、紅
すべてが止まってる
....
あのね
とりあえず声に出してみた
答えなんかでた訳じゃ無いし
そんなものはなから無かったりする
えっとさぁ
次のことば続かなくて
それでも携帯の画面へ逃げ込むのだけはぐっと堪え ....
わたしたち、結婚しました
うす桃色の踊るような文字と
着物姿で微笑みあう男女の写真
はがきを持つ指の腹から
じわりじわりとあったかさが
組織の中まで浸透してくる
温度の正体をはっき ....
髪型を変えました
心も変えられるかな
新しい服を着ています
あなたの知らないわたし
住む街を変えました
きのう仔犬をみつけました
ベランダにからまる蔓の緑を
....
夜の海ほど怖いものはない
宵闇の奥のさらにその奥から
打ち寄せる波の音色は
私の心を光の届かぬ深海にまで
攫ってしまいそうで
ひとつの物語が今日
終わってしまった
私の支 ....
さやかで悲しい朝なのに
夏の匂いをかぎました
感謝でむせぶ朝なのに
黒いこころもありました
ひとのこころはどうも遠くて
応酬ばかりのありさまでした
さやかで ....
割った石を硬い石で叩いて
形を整えて積みあげる
石と石との間には剃刀も通らない
石の壁は数百年を経ても崩れないで
空に近く雲をしたがえて
城塞と都市とを保っている
毎朝通勤電車の始発駅 ....
あなたによく似たひとだった
人違いと戸惑うわたしの顔を覗き込み
どうかしたのと気遣ってくれた
これを落としたひとをずっと探しているのと
あなたの落しものを目の前に差し出した
その ....
私だってムカつくことくらいあるよ
いつだって泣き出したいもの
いくら神様を信じていたって
いくらきれいなものが好きだからって
現実、そんなこと言ってらんないでしょ
だから諦めることに ....
ここに一脚の椅子があって
それは懐かしいにおいのする木製の小さな椅子
小学校の教室にあるような椅子
揺らすとかたかた音がした
そんな椅子にあなたは腰かけている
手には一冊の詩集
マ ....
悠久の言の葉の邂逅の中
無限は収束する
君に幾つ与え
君に幾つ与えられただろうか
君を幾つ知り
君は幾つ知っただろうか
矛盾が行き交わす
混沌の街で
いつしか君と出逢い ....
倦み果てた。何もかも倦み果てた。来ぬものか、陶酔のその時は。
にび色のアスファルトに映える月は虚像であった。
この世は、私には、紙を貼らない銀色フレームに感じられた。
未完成なのではないか? ....
業務用空調機は吹き出し口から花々を吐き出した。少し湿っている。
背広を抱えた中年や、帽子を被り小さい手を引いた主婦に、
鞄を襷掛けにした学生や、カートを引くお婆さんに、降りかかっていった。
熱い ....
祖父は毎日欠かさずに山へ通った。
祖父の自慢の果樹園には、桃、栗、林檎などがなった。
かつては、興味津々だった孫たちも、もうカブトムシやらには無関心だったし、
毎年届く2箱の林檎には飽き飽きして ....
あかん。
あかんあかん、
あかんかんかんかんかん
わたしはもう現実を直視できません
このままではだめになるので
なんでもいいので
ぶちこんでください
でき ....
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