よじ登るんだ
向こうに行くんだ
自由になるんだ
あいつがカメラを
構えてるすきに
「宝くじ当たったんでここ辞めます」
山下がそう言った時
またいつものような嘘だと思った
だけど本当に次の日から
山下は工場に来なくなった
電話にも出なくなった
「彼女が出来ました」も
....
焚き火をじっと見ていた
三日月が荒れた海の上に濡れて
俺達は二十人ぐらいで
世界の果てで
最後の夜で
世界の果てで
焚き火を囲んで
女たちはずっと歌って
男たち ....
泣くな 10円玉
1円に笑って1円に泣かされる奴もいると言うのに
おまえが泣いてどうすんだ?
まだまだ諦めちゃダメだ 自分を諦めちゃダメだ
おまえは硬貨なんだからきっと効果があるんだ
なあ、 ....
宇治橋
夕霧にかすみつ渡る面影に
露けき花の色が重なる―――
観月橋
しめやかに
欠け満たされぬ夕月の
心を以ってなぞる君の名
....
大地が 少し 揺れた
ここはパリなので
それは夢だと分かった
モノクロのカーテンの幕が
ゆっくりあがるように
日を目覚めさせる そういう揺れだ
意識の向こうに
黒く流れる ....
あまい あまい ユメをみて
にがい にがい 思いをした
それでも 何度も あまい ユメをみる
あまい私に 君はあまい
あまい あまい ユメをみて
いたい いたい 思いをし ....
シオリちゃんは わたしを見つけるといつも
はじめまして、と言う
わたしも はじめまして、と言う
たくさんいっしょに遊んでも
次の日には わたしのことを覚えていない
でもシオリち ....
指先だけで、そっと
窓を開いてみる
隔てていた向こう側には
空の海があり
紙飛行機を飛ばす
誰宛てとかではなく
紙飛行機を飛ばす
そこに、意味なんてない
ここは海だろ ....
サイコロをふって
コマをすすめたら
梅雨入りのため
一回休み
と、出た
しかたなく
ぼくは軒下で
ほかの誰かと相合傘の
あなたの後ろ姿
おとなしく見送った
彼女は言った
「くらげぷりん」
を食べたい
僕は方々探した
聞いても誰も知らなかった
デパートに行って恥をかいた
ばかにされた
悲しくなって海に行く
堤防から網でくらげをすくっ ....
埒もない想いに身を委ねてしまうのは
この季節特有の気紛れと
触れて欲しい
昨日までのわたしを脱ぎ捨てた
わたしのこころに
この瞬間に生まれ変わった
わたしの素肌に
季節は夏
....
ずっと、将来や自分のために肩肘はってエイコラやってきましたが
結構、自分のためというのはしんどいです
失敗すると、たいていブルーになってしまいますから
これからは、誰かのために良いコピーをと ....
夜色のドレスを纏って
等身大の鏡に向かった
そこに鬼が立っている
奇怪な言葉でしか
表現できない
気持ちを持った鬼
涙を持って行ったのはだれ?
涙を持って行ったのは
朝になれば ....
狭い部屋なので
多くのものを置けない
だから
多くのものが載っている本を
たくさん買おう
そう思って
まずは大きな本棚を買ってきた
本屋に行って
買えるだけの本を買ってきた
本棚 ....
抜け殻になっていい?
退屈してたけど
面白いかもなんて
完璧なんて
程遠いのに
とまる事が
怖くなって
影ふみ遊び
繰り返して
いつの間に
日が暮れて
抜け殻 ....
20世紀末、夏のうた
永遠に閉じ込められてしまった
チューズデイ・ガール
飛んで行きたくなるような青空
世界の終わりを想う
繰り返しのウィーク・デイ
ギターと末法思想と
煙草とミルク ....
動物園の猿が
声を食べている
人間の声を
むやみに与えないでください
と、注意書きがあるので
みんなただ黙って
猿を見ている
携帯が鳴った
電話の相手が
ものすごい剣幕で怒ってい ....
その家は理想の家だった
効率性と便利性を兼ね備えたキッチン
窓から入る光具合を上手く考えられた
それぞれの部屋やリビングなど
すべてが申し分なかった
庭も手入れするのに苦労もせず
植木や花 ....
一
寝息をたてている。
親父も最近、まるなったな。
福岡に住んでるとき、
一晩かけて車で京都に帰ってきて
舟岡山で大文字をみるのが毎年夏休みの楽しみでさ、
兄弟三 ....
街なかやフェイスタオルの落ちたまま
夏至の日に
キャンドルナイト{ルビ流行=はやり}だし
ニヤリと笑う ロウソク屋の子
走り去る季節
振り返ることなく
いじらしい子供達がふざけあっている
それでいい
問題はない
梅雨晴れの空には飛行機雲
空を割っている
心奪われる
....
強さの羽根が一本、二本
折れては生えてを繰り返し
今もまだ輝いている
弱さの羽根は思いのほか丈夫で
だけど君には見せられない
わたしは強い女でありたい
もし、本当に
本物 ....
溜め息でできた曇りガラス
微妙に感じる温度差
胸の中にぽっかり現れそうな空洞
もう囀れない歌えぬカナリア に
なってしまうのだろうか
味わってしまった夢は ....
ステンドグラスが光る
クラシカルな部屋で
私は無言のまま
珈琲を含み
ケーキを頬張っている
鏡張りの壁に
もたれ掛かる身体は
きっと、もうすぐ
溶けてしまうのだろう
....
靴をぬぎすてて
乾いた道を疲れるまで
進んできた
僕は裸足が好きだ。
裸足で土を踏みしめるのが
好きだ。
ときどきうめき声をあげさせられる、
そのふいの痛みが、なにか重大なことのレッスン ....
書庫の扉を開ける
水の中になってる
たぶん海なのだと思う
昨日まで資料や本の類だったものが
魚みたいに泳ぎ回っている
手を伸ばして一冊つかまえる
ページを開くようにお腹を指で裂くと
文字 ....
あなたがいなくなったシーソーに
わたしはまだ乗っている
もともと互いの質量が
違いすぎた為に
あなたへとばかり傾いて
あまり楽しい
シーソーではなかった
今ご ....
遠くに感じては
刹那を溢す
けれど
思い過ごしな心気は
優しさを浮かべ
涙を枯らしていく
何時の日も
何時の世も
此処が還るべき場所
迎える準備などせずに
当たり前を差し出して
....
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