おぼろ月夜の
淡い光に
照らされて
陽炎のように現れた
秘密の扉
ゆらゆらと
揺らぎながら
こっちへおいでと
誘っている
この扉の向こうに
何があるの?
ためらい ....
安美錦
アミニズム
あれはクビライ・ハンの来襲だったのか
心技体
やおろずの神々に祈りを捧げ
丸い土俵の上にあるものを
観音菩薩。弁天様。
ご利益いかばかりであったとしても
女人禁制
....
朝のように 夜のように
当たり前に 僕はいよう
ワビのように サビのように
心に沁みて いたいよう
空のように 風のように
当たり前に 僕はいよう
眠りの中に落ちていく ....
終わってしまった
はずなのに
それは密閉した
重いふたの透き間から
かすかに甘くたちのぼる
人知れず心の底に
埋めたはずなのに
かぐわしい記憶の薫りは
ゆるゆると漂い
真夜中 ....
夕刻を告げる時計が
散らばった色鉛筆を
一本だけ、手折る
私がその光景を
消しゴムへと告げ口した頃
光りだした小指は
小さく震えて、色鉛筆となった
立て掛けたキャンバスには
....
闇、叫び、月、銀、狼、爪の痕ほとばしる血は昴の花弁
月を噛むアカイ目眩に舞いくるう鴉揚羽の鳴り止まぬ翅音(はね)
雷(イカヅチ)の刺さる。蒼きは明星の息遣い。眠れぬ ....
銀色のマストに映るまるい月甲板上に舞う{ルビ四重奏=カルテット}
月と地の逢瀬は今宵ひとたびのカレイドスコープ闇は緋色に
紅い海ガレオン船が進んでく鞭打つ波に叫ぶ号砲
....
勢いベンツのSクラスで
裏通りのちっぽけなパーキングへ
恥も外聞もなく突っ込んだ
そこに無人契約機「むしん君」がある
「むしん君」は大切なトモダチだ、
たった今も20万円を引き出した
....
雑踏のあちこちで発生する
ポップな着メロ
それぞれの手のひらの中
ぽろぽろとカラフルな
想いをつかまえる
まるでゼリービーンズのよう
人工着色料かけたみたいな
絵文字やコトバが
....
しばらく海を
見ていない
とうに街には
飽きてしまっているけれど
それにもすっかり
慣れてしまった
誰の笑い顔も
どこかぎこちない
それでも疑うことは
何より疲れ ....
近づいてゆく
風が乾いた草の匂いをはこんで
近づいてゆく
滅んでゆくものの気配を
怖がらないで足をのばし
サンダルを遠くに飛ばして
近づいてゆく
秋のサテンのやわらかな手触り
私はこの ....
光の綱が 交差する
あや取りみたいにくぐり抜ける毎日
そのなかに哀しみでもいい
あなたにそばにいてほしい
知らない間にねむってしまった
カーテンが揺れて、わたしを起こした
....
くちびくろさんぼ
銀星を憎む製図コンパスについ
た小さい鉛筆のぼくだ
おっかけこする心臓がつぶれそ
うなくちびくろさんぼのぼくだ
くるくるまわるタイガーの春だ
空から桜が散るよ叶わない ....
終電の終わった線路に
踏み込もうと思ったけど
青く点灯する信号を見て
しばらく迷った末 やめてしまった
スタンド・バイ・ミーごっこは難しい
夜だけど
いつも感じる夜とは匂いが違った
....
君の、何だか灼けにオヤジ臭い微笑い方が
ポーカーフェイスのこの僕に見事に感染したのはそう、あの夏が終わり随分と時間が経ってからだった。
会社の上司に、年の割に老けているだとか破棄がないだとか、そん ....
浅瀬のような空でした
私は止まれない魚になり
そして反芻する言葉の中で
現実だけが薄暗く沈んでいきます
ぴしゃりぴしゃりと時間の岸に
私の影が跳ねています
それよりもあなたは
....
ひさしぶりに会う
という 感覚は
目の前がはにかんで
人見知りのふりをして
かよっている
流れの果てには、どこ
時間の果てには、なにも
少しずつ、はなれてゆくね
さみしくな ....
太陽が沈んでゆく
そこが西の空だ
そして今日は下弦の月
だからすぐには
月を見ることができない
真夜中までじっと待て
そうしたら
太陽が沈んだ反対側を見ろ
今日の理科で習ったばかり ....
青や緑の絵の具を
うすくのばして
あの透明をあらわそうとして
さっきから
なんども失敗している
{引用=
手をひいて
石を渡る
ぬらりとした光沢に滑らせた足を
からだごと、ぐいと引き ....
音楽はときめき
音楽は淋しさ
その肩からちゃんと
体温を
感じられるように
限りなく寄り添っても
埋めることは出来ない
重なっても一つにはなれない
多分一生どうすることも出来ない
....
一番大好きな人とはうまくいかない
大好きに一番が付くと今までガマンできていたことができなくなる
ハンバーグは大好きだから最後においておける
....
良くできたうめぼしは
故郷の懐かしい味がする
すっぱさのなかから
忘れかけていたものが顔をのぞかせて
こんなんだったよね
と問いかけてくれるような
ほどよく皺くちゃで
秋アカネの ....
ー圏外ですー
見えない壁に阻まれて
打ち砕けていく
想いの断片
わたしの中で
バラバラ散らばる
感情の鋭い破片
拾いあつめようと
無造作に触れて
斬ってしまっ ....
ねえ、キミもためしてみてよ
魔法のシガレット
小さいころに気どってくわえた
....
数段にかさなった雲がちぎれて
やがてあなたのところに届く
そうして同じ雨を降らすの
目に映りこんだ人の波を追い出したくて
必死で目をつぶってみるけど
ぶつかり合う肩の痛みに
思わずあな ....
なにかが欠けていたのだろう
あなたに伝えること
いま
全裸を隠そうとしている
この月のように
僕があなたを
少しずつ愛していった
はずなのに
あなたは
不信で覆われていく ....
・
家を出ると
道端に
無数の舌が落ちていた
赤信号が
誰ひとり停められなくて
途方に暮れているような真夜中だった
舌たちは
うすべにいろの花のように
可愛らしく揺れなが ....
あ いして います
い つか 逢える日を信じて
う やむや な こころ に
え いえん を こじつけて
お それは 捨てて。
か なしい時 も
き びしい時も
く いは残らないように ....
花屋の娘に恋をして 妻に花束を買って帰った
なにも言葉を 落とせそうにない口を ありがとうの唇で塞いだ
愛人が旅行へ行きたいと言い 出張を装って出かけた
「早く仕事が 終われば日帰り ....
あなたは
きえそうなひかりのまえで
手をかざしている
胸元から
オイルの切れそうなライターを出して
何度も 鳴らす
うつくしいけしきの
まんなかにいる
いつも
き ....
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