頁をめくる指に
降る水がある
温度とそうでないものとが混在し
それは仄かな懐かしさで
やがて積もっていく
一月の末日
漢方の匂いが漂う診療所の待合室
あなたはまだ誰にも知られていない
....
水の都
おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて
ふたつめの大きな戦争がはじまる前に
船にゆられて日本にやってきた
おばあは
メリヤス工場をさぼるように言われ
大阪の橋の上 ....
どこまでも続く道を一人暗闇の中歩いている
一人で一人で一人で一人で ひぃっ
人生知れたこと
どうなる地球
どうなるルー大柴
まだこんなことろにいる自分
さっさと片 ....
「雪の音階」
舞う羽の静かな音こぼれるよう
手のひらの中で羽化した希望(のぞみ)
こんこんとこころに積もる雪の下
あなたが埋めた種が芽を出す
....
地球を2周半もする 僕の長い両手から
君は そんなに簡単に 逃げられるとでも思ってるのか
どんな巧妙なフェイント ギミックを駆使したとしても
僕を撒けるわけないだろう あきらめが悪いのか ....
寝苦しさに目を覚ますと
やはりホリデーインの一室に泊まっていた
わたしの隣では
脇臭く寝相の悪いやつが
馴れ馴れしくいびきをかいていた
エーチャンのニューグランドホテルは
わたしのこころの ....
じいちゃんの初盆
霊がいっぱい飛び回るよ
八月十五日
船にあなたの思い出
ゆらりのせて
{ルビ黄泉=よみ}へ流そう
どーいどい
鳴り止まない爆竹
どーいどい
浮かぶあなた ....
そのスピードで。キミだけの速度で。
キミにしか見えない道を まっすぐ歩いていって
そのスピードで。十分間に合う。
誰も目的地までのキョリなんて
わかってないんだから
まっす ....
わたしは詩のなかで
一本の木になることができる
地に根を張り
そこにい続けることができる
少女が来て
本を読んで
少女は帰ってゆく
わたしは詩のなかで
そらをとぶことができる
高 ....
もうひとつの空の下には
空想好きの少女がいた
彼女は瞳の中で
小さな星を育てていて
世界からこぼれるように鳴るメロディーに
詞をつけては歌いながら暮らしていた
詞の中では少女は
....
白藤の棚にそよぐ 薄紫の風に
邸(やしき)じゅう、色めきたつ菫(すみれ)たち
草葉の緑に、ふるえる白いドレスの君。
房を垂らした大きな帽子から、ほんの少し
零れる笑みと恥じらいを覗かせて
....
何も書かれていないノートに
想いを綴る
真っ白な小さいノートの中には
えんぴつでしか書かれていないけれど
そこには
色がある
歌がある
風がある
とても小さな平面の上には
とても ....
あたしはいつだってあたしがいたというしるしをつけたがった。
きみはなくす事を恐れていたのにも関わらず、それをとても嫌がったね。
あたしの視線から君がいた記憶、数えるほどにしかない記 ....
エレベーターに乗ろうとして
エベレストに乗ってしまった
家のローンもあと二十年くらい残ってるのに
まさか自社ビルで遭難するなんて
眠ったまま電車を乗り過ごすこと数回
失恋十数回
上司に怒鳴 ....
発熱しそうだ
と
感じて
手のひら
あおじろい炎が
そこかしこにあって
ああ
ほんもの、だ
と
からだのどこかが叫んでいた
あたしはまた
しょうこりも ....
動かして 動かして
痛んでるときに
さらに動かすと
成長 するという
まるで
君への想いみたい
鼓動が速くて 痛いほど速くて
気づけば
もっと君が好き
君が食べているソフトクリームが
あまりにも美味しそうだったから
一口だけと取り上げてみたら
子どものようにすねた顔をした
僕はいつもふざけてばかりで
笑顔の君を見つめていたくて
時々本 ....
あなたをすきになって
ことばにできないおもいをしった
あなたをすきになって
きもちのおもてとうらをしった
あなたをすきになって
しらないわたし ....
そうだ
あたしの右側にだって
風は吹くんだったわ。
風はずっと
左ばかりを流れるものだと
すっかり
あたしはずっと
風の隙間で生きてきたの
そんなことさえも
....
雨の日は雨のうたを
ころんだらころんだうたを
おきあがったらおきあがったうたを
うたおう
晴れたら晴れ晴れとしたうたを
お掃除したらお掃除のうたを
逢いたくなったら逢いたいってうたを
....
おばばから聞いたお話
ちょっと根暗な少年のお話
昔々あるところに それはそれは暗い少年が居たそうな
毎日毎日考えることは悪いことばかり
{引用=皆、俺を嫌ってる。
明日死ぬ ....
いつだって君はそうなんだ
本当は塩ラーメンが食べたいくせに
なんでもいいよと答えてみせる
そのくせ
味噌ラーメンを食べたあと
必ずこう言うんだ
塩ラーメンが食べたかったのに
アイ ....
気分転換にと入った本屋でばったり会って
少し話そうか って歩き出した
別れてちょうど3年目
3年目 の再会
元気にしてた?
してたよ〜そっちは?
してたしてた
いつもみたいに並ん ....
わたがし
夏祭りの日
君に逢う為だけに並んだ
君と話すためだけに並んだ
....
人それぞれの顔が違うように
人にはそれぞれ持っている力が違う
同じ重さの石をもっても
重たいと感じる者もいれば
軽いと感じる者もいる
仕事だって、人生だって
同じ環 ....
『ヨーイドンッ!』
した瞬間に全力でこける。
全力出した結果なので正解。
でも後ろの人に後頭部を踏まれたので不正解。
『グチョッ!』
新品の靴で吐き捨てられたガムを踏む。
他の誰かが踏 ....
冷たくて無愛想なホテルのバック通路にまで
複雑に入り組んで伸びてきた
甘い生クリームのケーキ
黒いのはダークチェリーで
緑色のはマスカット
桃と、アプリコットと苺と梨とフランボワーズ、ラズベ ....
ペニーロイヤルティー
が
上手く和訳出来ない
ミルク
を
もう少し増やして
リアルソサイエティ
に
上手く調和出来ない
シュガー
を
もう少し減らして
ハート型のペンダント
....
こわいのです
この果てしない草の海が
どこまで行っても地平線しか見えて来ない
この世界が私はこわいのです
風がびょうびょうと吹き荒れる草原のただなかで
私はひとり立ちすくんでいます
絡 ....
空がいつまでも陰り続けていたとしても
その向こう側には太陽があると
信じて
信じて
最後まで
信じて
少し意地悪なあなたのささやき声が
耳に纏わりついて離れない
あいしている
の ....
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