赤い傘を、どうしても、心持ち高く掲げました
救われない愛らしさが骨を伝い腕を伝い無意味に流れてしまい
雨景色を溺れ終えた傘と掌が打ち上げられた上がり框にて
ああ、と言ったらそれ ....
『近寄らないで』
本当はぎゅっと抱きしめてほしかったの
『構わないで』
本当は真剣に叱ってほしかったの
『探さないで』
本当はあの紙に残した香水の香りを辿って着てほしかったの
....
わたしはシャッターの降りた酒屋の前で人を待っていた。夜だ。幸いにしてベンチはあったが、なければ凍り付いていたかも知れない。木で出来たベンチは冷たく、しかし体温は冷たくなく、わたしはすぐに暖かくなるだ ....
14歳の冬
生理が1ヶ月近く
止まらなかったことがあった
わたしは学校で倒れ
保健室に運ばれた
どうしたのと先生に
やさしく聞かれても
上手く話せない
自分でもわからない
母親に病院 ....
僕の部屋にある
君の洗濯物を見る
「付き合ってるんだな」と実感
Tシャツや下着を見て
ちょっと微笑む僕は
傍から見たら
ただの変な人かもしれない
でも
とても幸せな人であること ....
それをそっと両手で包むと
私は私のそれに、
途方に似た
責任を感じ
る。
これが
こう誰かに包まれる時が来た
ら、
これは一人歩きして、私の知らない
何処かへ行ってしまうかも ....
結婚を来月にひかえた僕はその報告もかねて
今年で94になるミツエばあさんの見舞いに行った
案内されたのは3階のはしっこの相部屋
しわくちゃの顔たちが
ギロッといっせいにこっちを睨みつける
と ....
笑うカスタネット
I
石原大介さんの詩を読んでいる。石原さんは、そう言うことができるとしたら、短歌を
よくした。そう言えないという人がいらっしゃれ ....
伊勢の名物、赤福本店にて
赤福セットを注文する宿命の俺達
お店の人が持ってきた瞬間
俺は土下座をしたよ
赤福に。餅菓子に。
小皿に盛られた赤福餅3片に対し
土下座する俺のフォルムは ....
お前が好きだ
どこにでもいる女だって思ってた
悔しいけど違った
お前の魔法にかかっちまった
お前のことが頭から離れねえ
何とかしてくれ
お前に電話したくてしょうがねえんだよ
どうにもなら ....
木の音
水の反射
日なたの匂い
奪われたあと
残るもの
木の匂い
水の音
日なたの反射
午後の恐竜 ※
砂に埋まる墓碑
言わないさあれこれ
ひと ....
朝飯の味噌汁ぶっかけ飯(俗に「猫まんま」ともいうが、猫は味噌汁ぶっかけ飯なぞ喰わない。味噌汁ぶっかけ飯を喰うのは犬だ。故に我が家では、味噌汁ぶっかけ飯を「犬まんま」と呼ぶ。「猫まんま」は鰹節をかけた飯 ....
能動的な
恋をしようよ
待ってるだけじゃ
NO・NO・NO!
おいらのちんげは
BO・BO・BO!
ストーブが話す、「赤はすべて夕焼けなんだ」と。世界がドーナツのようでぼくは嘘をついた。「きみは笑っているようにみえるよ」。ストーブの彼、嬉しそうだ。雨の音、の、記憶。たとえば階段をのぼればきみがいない ....
わたしと わたしとはまったく縁のない十数人のよそびとたちは皆押し黙って沈痛な面持ちをして バスの中にそれほど窮屈でないにしろごみごみと固まってひとところからひとところへ運ばれる途中であった わたしは豪 ....
やわらかいからくるしいのでしょう。目をつぶれば、しょぼしびれるまぶたの裏側にそれまで見つめていた画面の裏腹が白く白く皮膚をとおりぬけるかもしれないと思いきやひろがる想像上のパレードに身を包んでも目の奥 ....
それから
僕は僕をはじめ
僕は僕の体にしがみつく
僕の体が僕から離れるまで
僕は僕の魂にしがみつく
僕の魂が僕から離れるまで
僕は僕の僕にしがみつく
僕の僕が僕から離れるまで
....
歌と踊り
失った恋人に
歌と踊り1
歌
それはむかしの
それはお ....
「スネアヘッドってつまりすね、ドラムの一番こうなんていうか、つまりすね、基本的なリズムを刻むってか、つまりすね、そんな感じのやつをスネアドラムっていうんすけどね、つまりすね、その表面の皮のことなんすね ....
やみが白んだ
きょうも夜明けの3時過ぎから起きている
もう2時間がたったのだ
トイレで小鳥のさえずりを耳にした
やがてはかれも空から堕ちるときがくるのだ
それまでの ....
たかやは
じいじのひざうえで
はじけんばかりのえがおです
たかやは
おふろにいれられて
てあしをばたばたよろこびます
たかやは
ふとんによこたわり
あんしんそうにねむります
....
晴れた空は、あまりに眩しくきれいだ
幼い頃、一番欲しいものはなあに?と問われて
そら とは答えられず
むきかごーぶつ と答えた
(空は大きすぎて僕のおもちゃ箱には入らないとわかっていたから ....
いつまでもそうやってそこにいなさいかみさまとみんなはあなたを呼んでいるけど
まだ誰も知らない土地でひっそりと虹の種など埋める秋の夜
悪だくみしてもいいけどもう二度と砂のお城は作れな ....
夜明けはちかい
けさは3時から起きて
調べものをしている
ほんとうはきょう
水曜日はぼくの公休日なのだが
うちあわせがあって午前中だけでも
でてくれといわれたの ....
かたゆり ついの
まわせぬ あえい
とおりの あせぬ
のろえぬ ゆきよ
不意に後ろから呼ばれることに身構えている名前のように
わたしは鉄板のように滑らかだと思っていたら 後ろから打たれた
ひどく鋭く尖ったもので ハンマーの音は屋根裏から聞こえるのだ
知らないこと ....
あんたの短歌はフルーチェの匂いがするね愛しいだけさ
真白なTシャツで作ったフラッグを振る死んでも名前は同じでいたい
眠れないのは誰のせい深夜音楽番組を片っ端から惚れる土曜日
....
{ルビ医師=いし}らバス{ルビ停=てい}にいてすばらしい
{ルビ酸欠=さんけつ}さん{ルビ診察検査=しんさつけんさ}
{ルビ残念捻挫=ざんねんねんざ}
インテリ{ルビ庵癌=あんがん}あり{ルビ転 ....
狂気の愛
白髪の拳銃
を書いたのは
シュールレリズム宣言を発表した
アンドレ・ブルトンだ
彼には『ナジャ』という
優れた純愛小説がある
最後に彼女は精神病 ....
(木の果て枝の果て
浮かぶ自由なき雲)
せきれいよ、せきれいたちよ
せきれいよ ....
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