産婦人科から出てきたみえこが
あっけらかんと言った
「二ヶ月のなかばだって」 ....
私の方向音痴を笑いながら
手を引いて
東京タワーはあっち
六本木ヒルズはあっち
あれが皇居
お台場は向こう
新宿はあのあたり
晴れていたらあの辺に富士山が見えることもある
さて
あな ....
ある乳飲み子は
愛ある母の乳を飲み
栄養の意味を知らずとも
子供に育ちゆきゆきて
ある男子は乳を忘れ
愛撫ゆえに乳首を吸い
重ねる日々に乳房を選び
ある日衰えを知ってゆく
ある ....
瀬をはやみ割れたきりなる年の夜
心眼を持たぬ我らの初詣
拾ひしは空の財布ぞ初夢に
二階なき我が家にぞめくひめはじめ
ちはやふる{ルビ雪花菜=きらず}炒めつ落語聴く
せなかあわせじゃ
きになるもので
おなかあわせて
しせんあわせる
なんかしあわせ。
*
せなかとおなかあわせ。
とうさんのおなか、なかなか
あったかい。
うえをむいたら ....
夢のなかで
影踏みをしていたら
踏まれたわたしの影が
スッとあしもとから離れた
夕暮れのながながとした影たちのなかに
わたしは自分の影を見失った
目が覚めて
燦々とふりそそぐ陽の下で
....
思いと傷の深さは比例するという
言葉のあやとり キャッチボール
傷の深さ 存在を笑顔の奥にひた隠し
おざなりの営業スマイルで
微笑むあなたは どこかの他人
犀川の河原
しゃがみ込んだらあ
対岸の
浴衣色が滲んでるげん
うちの気持ち
いっくら解いても
解いても
頑固に
縺れていくじい
いじっかしい
こんな
うちの気持 ....
我が国の経済発展および
国民の豊かなる生活のために戦い
既に残業月百数十時間
この酷い戦いに散った魂は
靖國の英霊となれるでありましょうか?
嗚呼諸外国の安き人件費で生産された
数多の ....
紙に書いてください
書けるものならば紙に書いて
紙に書いたそれを見せてください
世界を
モニターの向こうにまで感じるとるためには
第六感まで動員しても
なお追いつかないような想像 ....
年明けの雑煮は夏の尻子玉
君がため汲みし若水 皿に注ぐ
寒施行 狐と分け喰む小豆飯
そっと割る頭氷の鏡開き
水底は青女の朝より温かく
名護岳のキジムナーから花便り
それがほしいのだという
網の籠を背負って
捕まえて入れるのだという
静かな息に
舞い上がり漂ったのち
重さを感じて落ちてくる頃に
掴むのだという
小走りに途切れて
靴音の後ろか ....
ある時あなたが産まれた
あなたを抱いた看護婦さんは
「わあ〜やわらか〜い」
と、とても暖かな気持ちになった
ある時あなたは小さな子供で
あなたのまるいほっぺたを見たおじさんは
「ああ、 ....
窓枠の向こう側に海溝が寝転がっている
紺碧が逆立ちした午後
ぼくは物語と煙草を携えて
ゆらり生える象鼻の先に
時をぶらさげた
路地裏の化石にチャイを注ぎ
....
切なさをもっとたくさんください
君のお父さんとお母さんは
中途半端に愛し合っていて
ほんとうは 友達だったけど
セックスも何だかなまぬるくて
彼はずっと壁を見ていて 彼女は天井を見ていたので ....
まばゆさの
明かり障子 前にして
あらゆる形状の輪郭は
努めて 溶け
まばゆさの内にあり 薄く 美しい水墨のようで
それでいて
あらゆる形状は 悲しかった
思わせ振り ....
厳密には
中性浮力ではないのだろう
プランクトンたちは
死ぬとゆっくりと落ちていく
海の雪は
深いところで
光合成なんてしたことも見たこともない
生き物たちを養っている ....
ちいさいくつは
ちいさいころにはいったっきりで
ちいさいおもいでとともに
ちいさいはこにいれて
ちいさいおしいれに
ちいさくしまいました。
ちいさいってなんてかわいらしくてかなしいのだろう ....
ある日、ぽろりと取れた二つの耳持って
ウサギは永遠を探しに行った
永遠というものは友達のウサギによると
それがあるだけで
取れた耳を元に戻すことが出来るらしい
母さんウサ ....
おぎゃあ
一字一句間違わないように強要された私のからだに
それとなく触れるだけであなたは最前列から並べら
れた裸体ばかり順番に、顔だけは別にするようです
....
青くにじむ蛇と
赤くつややかな蛇が
雪の下の暗いところで
からみ もつれ合い
溶けていった
残されたぬくもりは
ゆっくりのぼり
顔をだしたとき
花びらをまとった
森の ....
ひかった
ナイフ きらった
ライフ
きまった
サイフ しかった
サイム
しまった
タイム にたった
アイツ
いかった
アイツ したった
ハイツ
きたんだ ....
むかし読んだ本のことを
ふっとおもいだした
外国のある家族のはなしなんだけど
みんな関西弁で
もうちょっとちがう風にかけば
大草原の小さな家みたいな
おはなしなのに
みんな関西弁で
お ....
吉野家で並を注文する時の
卵と味噌汁は基本中の基本
黄身を潰して軽く掻き混ぜ
丼の上にとろりと浮かべて
紅生姜を満遍なくまぶして
....
悲しい歌がひとつ終わり
静けさが喜びのようにやってきて
ふたたびはじまる悲しさに微笑む
雨の花に空は映り
空には雨の地が泳ぐ
水の歌が降り
歌の水が降り
鳥 ....
冬の短い昼の合い間に
日の当たる草の上で
寝る黒猫
1/7
となり町まで歩いていく。
交差点で人がオートバイに跳ねられるのを見かける。
スローモーションで再生はされなかった。
帰りは地下鉄に乗った。
人がオートバイに跳ねられるのは ....
これは居酒屋で友人から聞いた話
というより友人の話
その当時つきあっていた彼女に彼は夢中で
まだ若かったけれど 結婚まで考えていた
今の彼は平気で二股三股かけて
平気で女を捨て ....
頭の悪くない毎日
たまには酒を飲まない
そんな毎日
雲間にぽっくり
遺産で食ってる老人のための
きいろい雪玉のしずくの
せせらぎとなった
今宵の
(りーりーりー ....
人間がいつか骨になって消えてなくなることを初めて知ったとき
小さな私は庭に飛び出して
道路でバトミントンをしていた母に向って
「人間はいつか死ぬと?死ぬと? 私も死ぬと?」
と、何度もた ....
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