お得意さんの取引先から
オフィスへ戻る車内
助手席の窓外は
穏やかな{ルビ田舎=いなか}の村と
夕焼け空の陽の下に
広がる畑
窓を開けた隙間から
入る風に
前髪は ....
春だから星を見てても暖かい一緒に見たよね僕ら青春
桜餅葉っぱを食べてもいいのかな会話の中にも散る散る桜
月笑うあなたは笑っているかしら卒業式を抱きしめる四月
水色が似合う ....
花冷えのころ
すきとおるあおと
ぬくもりをさがしながら
蝶のようにとびたち
風の声をとどけに
あなたの耳で
蕾になって
向日葵のだいたんな喜び
わすれな草のブルー
おしろ ....
もう飛べる翼はない
星の足跡 ここで、途切れた
出逢うまでの道も忘れて
広い空をただ見上げる
水平線に夕陽が溶けて
紫色の夜がまた、来る
やさしさ、だけ
欠けたパレットを ....
どこまでも続く桜並木の先に在るものを
確かめたくて
あなたと手をつなぎ歩く
親子ほどにも見られそうで
控え目なあなたの腕を
胸元にまで引き寄せ
歳の差なんてね
桜は潔く散るから美 ....
傘のしたでだけ
降り続ける雨がある
強弱では語り得ない、それ
交差点を渡る黒たちの
はじまりの日は
白だった
或いは
今も
嘘とほんとを
分けたがるけれ ....
夜の、
雨の、
それぞれのゆくえを
ひと色に染めて
あかりは桜色
煙る雨の甘さ、
舞う花びらの温み、
絡めた指が
やさしさを紐解く
夜に、
雨に、
焦がれる桜
時計の針 ....
私は元来
無口な男でありまして
うっかり、思慮深く思われがちですが
それは、本心を秘めている
というより、むしろ
現すタイミングを計れない
どうにも不器用な人間なのです
何か言わ ....
空の、あまりの青さが
出逢った日と同じ色をしていたから
なんだか違和感を覚えてしまって
それを誤魔化すように
むきになって笑ってみた
ここは夜景もいいけれど
飾り気のない素顔の街が見え ....
むずかしい顔をしていても
だれかに名前を
許すとき
見えない風に
腕だけ乗せる、ような
わたしはひとつの窓になる
だれかの背中のさびしさに
おもわず声を
かけるとき
....
漸く手にした教科書は
弟よりも重たかった
最初の挫折は三歳になる前で
最初の絶望は五歳の頃で
最初の贖罪は十二歳の秋だった
繰り返し踏みつけた水溜まりは
次第に黒くうねる海へと成長していたし
繰 ....
ゆふぐれ
ふみきり
みずたまり
おむかえの
はは、したがへて
黄いろいぼうし
せおう赤
あたらしいくつ
よごさずに
じょうずに
とべた、よ
はがいっぽん
....
自分の娘が二人の娘を連れて実家に戻ってきたら、どんな気持ちがするだろうか。三人の娘も無事に結婚したし、そろそろ引退でもするかな、と思っていた頃に、また娘と小学生の孫娘2人を扶養しなければならなくなった ....
霧雨で
全部言ったら霧雨で
それは何千日っていう僅かな
俺たちの
永遠で
霧雨に緑は映えて
おまえの瞳の緑は映えて
そんなに静かに
生まれたての春の花々のように ....
回る
火のついた犬のように
走りながら
回って今日一日の
憂愁を追う
今日も丹沢の山は見事に鋭角で
背後の空からくっきりと浮かび上がっている
おそらく上州前橋から見る山なみと
そう変る ....
君のその白い腕に
ふれたいよ
君のその首すじに
髪の薫りを
かぎたいよ
瞳と瞳を一つに重ね
すべての世界を
溶かしたい
*
( 車窓はいつ ....
水の匂いが燃えてゆく
漆黒は
うるおいのいろ
こぼれてはじまる
灯りにけむる、
波のいろ
疎遠になれない花の名に
ひれ伏すともなく
かしづく儀礼は、 ....
夜にまぎれて
雨をみちびく雲の波
朧気に月は
触れてはいけないものがある
ということを諭すように
輪郭を無くし遠退いてゆく
深く、
深く息をして
雨の降りる前の
湿った空気の匂い ....
一人になって
ふと疲れを感じる昼下がり
もう数えていないのと
ぽつり呟くあなたを
抱きしめたら壊してしまいそうです
指先で宙に描く願い事
それが何だかわかりませ ....
掛け違えた光だとしても
あふれかえることに
消えてはゆけない
肩だから
底に、四月はいつもある
泥をかきわけて
そのなかを親しむような
見上げることの
はじまりに ....
あの時サ、カあサんにツケバ
きっと素直にパパに
おめでとうって
言えたかもしれない
あのひとが
好きとか
嫌いとかじゃなくて
どうしても
逆さまの箒と一緒に
さかさバケツ ....
あなたに似ている
と。言われたくありませんでした
わたしはわたしに過ぎず
あなたのクローンではないのだから
あなたがいなければ
生を授かることはありませんでした
それだけは否定でき ....
写真では思い出せる
ものがたりは忘れてしまった
楽しかったことの記憶だけ
振り返ることもなく
通過電車のあとを追う
錆びた風であれば
印画紙を風の色に染めて
完成する思い出
岩 ....
ファーストフードのレジに並ぶと
厨房に立つ店員は
{ルビ神業=かみわざ}の手つきで
ハンバーガーを さっ と包み
すい〜っと横にすべらせる
「あれじゃあまるで、モノじゃあないか・ ....
はじまりはとても静かであたたかで目を開けた赤子は咲く花花を見ゆ
るるるると蛙の鳴き声が聴こえてきた青い田園を目を細め眺めるそふ
なんども口づけを交わす祭りの夜の恋人達蛍や花火の真上で黙るつき
....
{引用=くりかえされる、すべてのいのちと
いとおしきわたしの二人称たちに}
わたしがあなたを産んだそのとき
それとまったく同時に
あなたがわたしを産んだのです
この、配線だらけの街の ....
ある日
贈り物をしようと出掛けた
セーターを買いに行き
サイズを聞かれた
わたしは答えられない
靴屋に行き
やはりサイズを聞かれ
答えられない
ネクタイを買いに行って
好みの ....
嫁の腹が日に日に膨らんでゆく。
検診に行くたびに倍の生命力で大きくなってゆく。
嫁は四六時中続く気持ち悪さを懸命に我慢している。
風邪を引いてもなるべく薬を飲みたくないという。
嫌いなニンジン ....
夜空に見える、という
星座ってやつが
点在する星をつないで
こころでみる絵画だった
とは、しらなかったころ
僕は君の名前を
まだしらなかった
君の名前を
まだしらなかったころ 僕は ....
メガネをはずした
わたしの素顔
おとこのひとにはじめて見せた
胸ボタンの間にネクタイを押し込め
腕まくりした。あなたは
同僚を叱咤激励して
そんな。あなたに恋焦がれていた
それで ....
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