洗面台の鏡を傾けたら
小さい流木がころげおちた
どうやら 渦巻くのは小さい海
どこか角度の違う世界へと
つながっているらしい
悟ってはいけないよ、と
こころの母の声がして
そっと指を ....
一昔前の愛の歌を聴きながら
歌詞を追っていた
たとえこれが、私のために歌われたものでないにしたって
それでも、感情移入してしまって
いつしか、涙が零れ落ちてしまった
『 さよなら 』 ....
ぞくぞくするものだから
風邪をひいたように思ったのだけれど
なんだ
背中に離婚届が貼り付いていたのか
ついでだから
その上から婚姻届も貼ってしまおう
少し温かくなるかもしれない
それ ....
あ
もしもしオレや
おいオマエ今どこにおるねん
またアメ村あたりを
酔っ払ってフラフラんなって
歩いてんのとちゃうやろな
ええかげんちゃんと家に帰れや
オマエの嫁さん
あのブッサイクな ....
目が覚めたら旦那さんが二人いて二人は友達でとても仲が良い。この世では女が一人に旦那が二人、それは当たり前。二人以上は許されない。それは不倫。
どうして3人でできないのかしら?わたしは不思議で仕方 ....
一歩一歩沈む
沈む
さ迷う森のあなたに
黒く湿った土が香り
白日夢の欠けた月が
まあるく青ざめて眠る
白む指先で
鼓動にふれる声が
ふるえて腐蝕へ沈む
をんなは
なぜか黙り ....
待ち合わせに遅れそうな時
メールひとつで済ませてしまう
嘘っぱちの言い訳も
おたがいの顔が見えないから
罪の意識を感じずに誤魔化せる
どこへ行ったか
寂しがり屋の待ちぼうけ
....
つんと鼻を刺激する
空気の冷たさに驚いた朝
慌てて出したコートには
お気に入りのマフラーが巻かれていて
それは大袈裟かもしれないと
くるりほどけば
ひらり舞い落ちた
枯葉が一枚
....
パパはね うならい やってんの
うれしそうに 駆け寄ってきた ちいさな女の子
これはね パパの おみくじ
と さしだした小さな手には いちまいのカード
単勝 ディープインパクト ....
秋はいいよね
ストーブは焚けない季節だから
おふとんの中
冬のおふとんはあったかすぎるから
パジャマのボタンを外して
背中に手を伸ばし合う
私の胸の脂肪は つぶれて横にはみ出る
私は君の ....
木の葉が水面に舞い
遠い街の音楽隊が通りを行く時
私の想いはそこはかとなく乱れ
思わずイギリスの賛美歌を口ずさむ
耳を凝らし密かに求める主の言葉
祈りの後に祈りを重ね
右であろうか 左 ....
泣くために悲しんだことがある
砂浜にかじりつくようにくいこんでいた白い貝は
まるで生きているみたいに艶やかな色をしていたから
指先で撫でたら深くもぐりこんで逃げてしまうような気がした
....
与えられた運命のがっちりつなぎあわせられた糸
ほどこうともがくぼくは
一匹の昆虫としてもぞもぞと眠るだけ
何かしなきゃってわかってる
信じようとしている運命を
それが正しい道 ....
僕の部屋の電球が切れた。
仕事から帰ってきて
丁度いい高さにあるスイッチを押すと
電球が切れていた。
なんだ?
何度かスイッチをカチカチと押したが
やは ....
ぎゅっ に ぱっ がいいました
わたしだって とじてみたい
ぎゅっ はだまって " を ぱっ にあげました
ぱっ はいそいそと 。 と " をとりかえました
....
父に宛てて
父からの京都土産の{ルビ簪=かんざし}をさすこともなく歳を重ねて
破天荒。こんな娘に誰がした?苦笑しつつも宝だという
「もし人を殴るとしたら親指は内に握るな折れたら困 ....
もし僕が猫になれたなら…
初めは君の足にまとわり付くけど
すごすご家を出るはめになるだろう
そうしてゴミをあさるうちに
人間だったことな ....
見ていられない手つきで
君が包丁をにぎるものだから
僕は目がはなせない
指の皮すれすれで切り出される
それはきっと食べ物なのだろうけど
目を皿にしても
そこにおいしく彩られることは ....
夜闇の波に揺れて
わたしの海は広さをなくす
いったい何が不安なのかと
ひとつひとつ問いかけてくる波に
ひとつも答えることもなく
わたしはひとり揺れている
「あ」から ....
風のむせび泣く
夜のはしっこの
ほんの隙間に
こぢんまりと
丸くなって
眠ってしまえ
水銀の上下する
オブジェを見て
ころころと
声をたてて
笑えばいい
とじた
....
わたしのお腹
別の生き物
だって
鳴くから
わたしの意思を無視して
勝手に鳴く
泣きたいのは
こっちだ
静かな場所で鳴くな
情けない声で鳴くな
好き ....
さよなら
今度いつ会えるかわからないね
冷たい雨の…
夕暮れに 高速バス乗り場で お見送り
人がいたから 泣けなかったよ
あなたは私の近くにいない
いつもの場所にふらりと会いに行け ....
夕陽
沈まないようにね
駆けてるの
ヨーグルトや アイスを食べるとき
フタについた ちょこっとを 舐めるのがすき
不思議と おいしく感じてしまう
寝坊したと 勘違いして
いつもより 30分もはやく起きれたときは
と ....
ヤリキレナサという
生き物である
緑色の
細い草の陰で呼吸を
している
秋の虫ならばまだよかったが
ただ
月を浴びるのが日課らしい
正しいとか
正しくないとか
....
豚の目を{ルビ解=バラ}した
肉付きの眼球が二十個 並んで此方をみている
父にもらった手術用の手袋を嵌めて 一つ 掌に置く
冷たかった
どこまでも 質感は在った
メスによく似た鋏を ....
二匹の鮭が
内蔵を捨てられ
切れ端をからませていた
私の手はまだ薄いが
母の手は血にまみれている
頸骨ははさみでぶち切り
卵と白子は引きずり出した
その度にあがる、歓声
嬉 ....
都市では
すべての生きて動くものはその死の時に
鳥によってついばまれる
そのようにして葬られる
人も 例外ではない
夕陽が昇るように沈み
そのかたわらでくるった金星が
美しくほくそ笑む時 ....
アンケート用紙にずらっと並んだ
「いいえ」を眺めていたら
「え」が物凄く変なもののように思えた
何だこの曲線は バランスがおかしい
「い」はこんなに整然として綺麗なのに
だんだん ....
お酒を飲むと
むかしは
食道から火がついたように流れ込み
身体じゅう燃えたようになったのに
いまは
まるで水のよう
そうやって
何杯もやっていると
目が回ってくる
すまし顔じゃい ....
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