曇った窓ガラスに
家の印をつけて
それから
母の勤めている店の印をつけて
でたらめな道でつなげる
窓が汚れるから、と
後で怒られたけれど
それがわたしの初めて描いた
世界地図でした ....
益野大成さん「飛ぶ」に寄せて
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=42285



空を飛ぶ夢を見たことがあると思う。
「飛ぶ」という身体感覚を ....
深くまでつづいている
いつか見失った道の先にある、森で
夏の日
ぼくたちは、生まれた


頭上には空があった
ぼくたちと空の間を通り過ぎてく風があった
ふりそそぐものは、光
光とも見 ....
君がぽかんと口を開けているのは
口の中で風が吹いているからだ
その正体が何であるのか
問う方法も知らないまま
ある日突然に
君は君であることに気づくだろう
そしてそれは
君が君で無いこと ....
世界で一番好きな者同志が結ばれる。
それが一番幸せなことなのだと思うけど
なかなかそういうのも難しい。

思いがあちこちさまよって
行き場をなくしている。

誰が一番だなんて決められない ....
おばあさん たべねば だめだ

見舞いにきた人が
そう 励ましてから
おばあさんの 体調は悪化した

食べれねぐなったがら もうだめだ
と 急に思いつめたらしい

看護婦さんがみかね ....
いつのことだったか
おーきな木に寄りそって
声もなく泣いたのは

知ることのできた空は
果てを知らずに膨らむ奥行
しっとり流し目をすると
逃げ迷う合せ鏡の黒髪

時が来れば尽きる
 ....
君の家に続く道の

あの黄色い花は

なんていうんだろう

ちょっと君に似ている


可愛くて

寂しげで


僕は君の横顔を思いだして

心の中でそっと

好きだ ....
日に満ちた電車はそっと風になり火照ったほほをすりよせてゆく




夏に包まれた海の底の席で車掌が居眠りしつづけている




唇のはしからはじまる熱気にもあたたかないばら胸に ....
文科省認定漢字検定準2級問題集
この一行でも明白なことではあるが
アラビア風の衣裳を着ている余所者
漢字ではないものが一人潜んでいる
それが我が国の文化的な特徴と誤解

    ....
ねえいま

花瓶の水が

静かに動いて

グラジオラスの茎を

そっとなでたのをみましたか





そう まるで

首筋のキスでした





 ....
帰り道に迷って
泣いてる子羊
あの空の羊雲は
違うよ
君の帰るところじゃない

涙を拭いてよく見てごらん
発見はいつも
ほんの足元からはじまるんだ
背伸びをしてると
ほんと ....
金魚鉢かすめる涼風の行方知ってか知らずか手招きの夏



逝く春の背中押しつつ背中からはじまるアブラゼミの{ルビ時間=いのち}よ



きみがたわむれてた波ならひとすくい両手ですくって ....
お嬢の小唄を
宙に放れば
おてんと様が照らしてくれる

小僧の小唄を
地に撞けば
根っこの隅々しらべてくれる

手毬唄、ひとつ
この手に優しい
中身かどうか
優しくこの手に帰 ....
十二番目で
いつも言葉を間違えてしまう君は
その次の交差点では
左折ばかりを繰り返している
東京
狭い夕暮れで
夢から覚めたばかりの抜け落ちた体を
ついでのような角度でドアの隙間に潜り込 ....
  チョコレート

チョコレートの包みを
あけたのは
退屈なカエルが
土の中から這い出て
鳴いたから


  スカーフ

ほめたら{ルビ白髪=しらが}まじりの
老婆がくれた
 ....
何を忘れたかったのだろう
街に一つしかない小さな駅で
男は窓の外に向かって手を振った
無人のホームでは鉢植えに植えられた
カモミールの花がゆれるばかり
やがて男を乗せた列車が発車すると
駅 ....
 ボク

ボクは、僕といわない。
それは、シモベとよむから。

一羽の蝶が飛んでるよ


  あなたとわたし

わたしは、あなたから生れた。
そして、母も父も
わたしにはいない ....
もともと性に合わないんだ

優しくされるのも
穏やかになるのも
まんざらではなかったけれど

もともと性に合わないんだ


じっと見つめてごらん
鉄塔のもっと上

じっと聞 ....
男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
ほら、見てごらん
無数の蛍  
無数の蝶々

せっかく部屋を暗くしたのに

ほら、見てごらん
僕らはすっかり取り囲まれてる


吐息、ひとつ
(甘く、美味)

喘ぎ、ひと ....
瞬く間に消える儚い夢だから
希望という救いもないのかもしれない


でも

否・・・

だからこそ



その夢は人に希望を与える

人に希望を与え己は消えてゆくことができ ....
ねぇ、アリス
貴女が居なくなっても
この世界は続くと思っているでしょう

ここは 
たまたま落ちた夢の国

だから
たまたまなんて
二度と起きたりしないのよ


ねぇ、アリ ....
入院してる友達のために折ってるのと
その子はちょっと淋しそうに

鶴を折っていました

それを手伝おうと
わたしも折ったのですが
できあがった鶴の
羽を広げようとしたとき

その子 ....
まっさらなノートを買った
でも
それだけでは
所有にならない

光のようなシャツを買った
でも
それだけでは
所有にならない

汚さなければならない
涙が出るほどに
渾身の力で ....
寒冷に順応できず
やがて
命を奪われかけて
それゆえ
灼熱


灰と 火柱と 黒煙と


好き好んで
化身となったわけでは無いのに

ただ
寒さに耐えられず
ただ
冷た ....
久しぶりに家に帰ったら
家が他人行儀な素振りを見せた。

玄関の扉は
「いらっしゃい」
と、言い掛けて
「おかえりなさい」
と言い、
ベッドは
「ごゆっくり」
と ....
流れ星を見た。

うつむく彼の頭撫でながら
見ていたら
すっ
すっ、て

花火大会の余韻も
冷めやらぬ私の頭上
初めて見たよ。
2つも。

髪の毛をかきあげたら
鳴くんだよ
 ....
もともと
あてになる眼ではないけれど
それでも
夕陽の色彩くらいは
心得ている

川辺は 減速を始めている
木立は 瞑想を始めている
鳥達は 安息を始めている
あきらかに夕陽の時 ....
空からカエルの降る夜は
かたつむりに乗って 砂漠に行こう
羽の生えたカエル達が 僕を捜して
砂嵐の向こうから跳ねてくる

ムラサキカエルの思い出が
お化けになってやってきたよ
死んだら ....
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