くぐり抜けていく
いつも裸足だ
闇のそばでは
どうして自分だけは
かわらなくていい、などと
つぶやいていたのだろう
ああ、それはちがうよ
タングステン
熱で溶 ....
明るい夜も、暗い夜も、それぞれに色々な夜があったけれど。
遠く回り道をするように。言葉が言葉からそれからを選んでいくように、一瞬だったものを、ふと、足を止めて拾い上げてみれば。もう、「それか ....
「最初で最後の、黙礼を交す」
いまはむかし
(この{ルビ宇宙=そら}もなかったころ)
それは無としかいいようのない、事象でした
そんな折に私は、
星占いをゆめゆめ零さぬようにと、 ....
識閾下の原罪の内部で成長を続けた粘性の原始海である
午後六時の迷路の中をひたすらに彷徨う球体の少女である
オリーヴの地平線の際で揺れている乾いた人のかたちである
ついさっき僕の目の前に現れた金属 ....
僕らは縄跳びをします
回数はとっくに僕らの歳を超えて
縄の外、日が暮れていきます
僕らは縄をなくし
それでも縄跳びは終わることなく
気がつけば僕らは形をなくしています
誰もが僕らのこと ....
あめ、いつからふってるの?
めをとじてあなたのこえをきいてると
じかんのかんかくがくるってく
すきなしょぱんのあのきょくが
とおくからきこえてくる
ぱぱがむかしおしえてくれた
いどのおは ....
アドリアの真珠
烏羽玉
饒舌な罪
無限階段
閉鎖
欺かれた空間
尾を咥えた蛇
厳かな闇
畏怖された光
美しい入り江
消し去られた物語
テ ....
街灯
夜が膨張する
単に1つの影
それ
(それは終了(停止)
この人は私のために到着する
そして静かになる
そして1つの/影―発生
私は行く
雨上がり
{ルビ水溜=みずたま}りには
哀しい顔が浮かんでる
ひょい と飛び越え
曇り空の一日に向かって彼はゆく
{ルビ仄=ほの}かな{ルビ灯=あか}りを 人の{ルビ間=あい ....
わたしたちの
夜の
「わたしたちは
夜のアスファルトに
アルコールの溜息から順に
音も立てずに
わたしたちを、落としている」
を
体中で受け取って故意に ....
渡し場で舟を待つ。
遠くから響く風に耳を遣ると
今しがた現れた
言葉がみんな消えてしまった。
残念なことだ、
水面の紋でさえ
こんなに早くは消えない。
渡し場に佇む。
風に運ば ....
甘くない綿菓子が
細い線となって
時を紡ぎます
堪えきれずに
少しかじると
ただそれは消えるのです
甘くない綿菓子が
丸く光って
ことばをふくみます
離れられずに
そっ ....
しらないものが多すぎて
わたしたちはいつも
上手におぼれる
陽射しとは
なにを探し出すための
あかりだろう
こたえなどわかる筈もなく
求めるわけもなく
わたしたちはいつも
上 ....
わたしの眼は旅をする
わたしの心は部屋にとどまる
都市から原野までのあいだで
眼はあらゆるものを見て記憶し
それだけで帰ってくる
心は記憶を平面に読み
何ひとつ解釈しない
過去から未来ま ....
頭の上に
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首 ....
月が消失点のようだ
描かれた風景は
オルゴール、オルゴォル
ピンの抜けたドラムの内側で
漏れる光を、星だと
僕たちはささやきあったね
モルモットの遊具のように
夜空をまわし
時計の ....
また会いましょう)
その黒髪の薫りは
つげの櫛に波立つ海原であった
その深海にひそむつめたさのかたちに
ささえられている波が
{ルビ風色=ふうしょく}の移行を生んでいた
静まったか ....
いつの日も 青空は明るい
紅茶に溶けた 角砂糖
スプーンの渦が 止まる
こんなに悲しいのは なぜだろう
テーブルの光に カレンダーを描く
....
前頭葉の破損した
黄緑色の花
その雫に映る機械都市
無音で作動する化学工場
時計仕掛けの月明かりと点滅する電燈に
反射し黒光りしているコンクリートの河
立ち並ぶ病的に白い蛍光の列
点々と ....
爪からこぼれる蜜の香りは
やさしく手毬に
塗り込めましょう
今宵
千切れてしまう羽はいくつ
枯れてしまう草木はいくつ
夜露は静かに
鏡となって
子守唄がにじみます
いつわりの片鱗 ....
ある季節の終りに
風鈴が
まぶしくゆれていた
わたしは 風へ帰れるだろうか
いつの日か
空で回旋する球形の庭園に
立ちよることが出来るのか
ゆれることと立ち尽すこと
そして、歩いた ....
昨日が朝になりたがる日
どうにも眠れない嘘がある
まだ、一つひとつを上手く運べない君は
回りくどい道程でもって
明日の夕暮れになりたがる
前へ、前へと変容する君たちがいる
秋空がいつの間に ....
アスファルトにいて、
わからない、
夏、激しい群青で遊び過ぎ、その果てに、
すっ、と発狂するようにしてひどく青く、
遠ざかる空、その秋の為なのか、
或いは ....
間もなく思想がまいります。
危険ですので
足元、黄色い線の内側に
心してお下がりください。
どちらが内側で
どちらが外側なのかの判断はお任せします。
ともかく黄色い線の内側に
心して ....
遠くまで 届きたい
おもいが 橋となる
その たもとから
深淵を のぞいて
たちすくむ
プラットホームを行き過ぎる風
の形をした夜、の度に剥離する熱
を見送ってわたしたちは
さらさら、
最後の車両の跡地で長引いて
蛍光灯の微かな痙攣音とも分離しながらわた ....
ほほを桜色に染めた
小町娘が夜道をすっすーと横切って
午前零時の散歩
{ルビ映日果=いちじく}の葉に反射する
コウモリの声
超音波時計に刻まれた
わたしは悲しみに冷静でいたつもりだった ....
それは
私が見た
たくさんの野を駆け
私が見た
たくさんの空を駆けて
いつも また
ここに帰ってくる
別のかたちが あるなら
どんなに いいだろう
目覚めた 明け方の
浅い ....
魚の名前や花の名前に似ているけど
それとは違う言葉
直線ではなく曲線にも似ていない
それでも閉じている言葉
数え切れないそれらを
生み出しては忘れ去り
墓標をたてては
思い出と気取っ ....
明かりの消えた教室で、
ひとりふたりと、
席につく。
学籍のないぼくたちは、
幽霊みたいにゆらいでて、
いつも不安で不安定。
黒板のかすれた数式は、 ....
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