月曜は、月がよろこぶの、
自分の日だ、って、
新月でもないのに、
月が飛んでいく。
二時ごろ、
線路に立っていると、
へんなかたちの電車が止まる。
車内は奇妙にあかるくて、
気がつ ....
街の上で
朝を 投げている
小さな 丸い 飛沫が
きらきら ころがりながら
あふれかえる
夜よ
よき 友人よ
くりひろげられる
問いの多くを 吸い取り
泣きな ....
雨が降る日曜日の午後
雨宿りをした金木犀の木の下で
電線に連なって揺れる雫を見ていた
耐えるように震えながら
世界を逆さまに映した雫が静かに落ちる
君はその小 ....
おだやかで生ぬるい風
消毒液のにおいを消してくれるまで
君の部屋には入らないと決めた
病院からすべてを見下すように続くながい下り坂を
ガードレールにぶつかりながら歩いた
僕の手は機械 君の手 ....
暗い
宇宙の夜に中に
最初の人間が現われる
途端に 宇宙の空は晴れ渡る
ように見えるが それだけだ
相変らず
宇宙は 際限のない夜に包まれている
最初の人間はぼんやりと坐りこみ
すべる ....
毎日が
ずっと、遠浅だったらいいのに
って、言ったのは
あなただったか、わたしだったか、
もう わすれてしまった
うつろいやすいふたりだったから
ただ
手をつないだ
波が
....
からだの曲線にそって
あなたは
かんたんなじゅもんなのだと指を折った
てのひらをそっとひらいて
りゆうもなさそうにわらった時
すこしだけ
えんえんとつづいてゆく
朝の風景を おもいだして ....
硝子細工の
幾つかの重なりは
小さな風の溜まり場をくるくるとかき混ぜて扉を揺らし
丘に続く小道を夢見るのです
夏が降り
気まぐれな模様を織りなして
あのひとの指に留まった雨粒が私の
....
たとえば
この曲をきみのために捧げたとして
いったいそれに
どんな意味があるというのだろう
おれは
もはや ただの亡霊
朽ち果てていくだけの運命
白鳥の視た束の間の夢の中で
歪 ....
そこいら中に溢れる言葉が
私の角を削り取っていくよ
奔流に晒された丸い石ころ
転がる石はロックじゃない
貴方に言いたかったことは
いつだってのどの奥に蟠る
何時から貴方と私の距離は
....
溶けるまで
眠れそうな遠くの日々が
溶けていくまで
深々と、動かない部屋で
指を折る
指を折る
ありきたりな言葉では
追いつけなくなりそうで
街灯がつくまでの時間を
静かに歩 ....
地球はもうはぜてしまったくす玉だ。色褪せたリボン。散らばってしまった紙吹雪。蔦はどこから生えていいかわからなくなって、橋桁から橋桁にかけて危なっかしく川を渡ってゆく、川の向こうには一本のけやきがあり坂 ....
もうすぐ船が発ちます
朝までには雨の都に着きます
深い夜にさしかかる船室で
二分の一の足取りの 旅の者は寝床に誘われ
誰も彼ものまぶたが重く まどろんだ呼吸が漂っています
共犯者のあなた ....
踏み込んだところが山の入り口でお眠りここがゆめの入り口
僕はまだ死んでいないとあなたから雲の手紙がひろがる深空
この花の名前をあなたに聞いたはず昨日の夢の廃屋の庭
生きて ....
何か掴まなければ と
恐れなくてもよいのだ
いつでも繋げるように
私の両手は空いている
嘗て星々に触れたとき
驚きながらも微笑んだ
一秒よりもはやく
私たちは老いてゆくから
....
さらり、さらり
さら
さら
さら
もう少しで越えられそうな
海辺の砂の城が
指を折る度に
遠ざかっていく
懐かしい人の声で
ここから離れることのない
耳の奥で鳴り続ける乾い ....
誰かが言った 蒼穹は大地を抱きしめていると
月まで行かなければ空に抱かれる地球は見えない
遠い星まで行く気がないのなら
僕らが何に抱かれているのかは いつまでも分からない
....
やわらかく流れる小川わたくしのちひさな闇にきらめくひかり
クローバー探して回る少年と少女の絵画にみとれるぼくら
ぼくたちのこの関係を奪うのが風なら運び来るものも風
河原に ....
夜は死ぬ
その中に秘密を宿らせたまま
ふたたび夜が生まれ変るまでの
小さなひととき
人は夜がその死に際して降らせた
ばらばらの
暗い破片を
胸に突きさしたまま歩く
何かおかしい
どう ....
蝶々蝶々蝶々蝶々
あの街へまっすぐに続くこの道から
次々と黒揚羽が湧き立ってくる
蝶々蝶々蝶々蝶々
抜けるような今日の空から
次々と大水青が舞い降りてくる
午後二時
陽が自らの重 ....
暖かな雨に追われて迷い込み君と出会った六月の町
徒に花びら数え占った恋の行方を君も知らない
花は花やがて綻び散るものの定めの前に花鋏有り
裏庭でか ....
現れては、消える
どこか遠い宇宙で
星がはじけるように、生まれるように
現れては、消える
深い
深いとだけ言える心の水面の縁に腰掛けて
切るようにしてつま先を遠くへと投げ込めば
それは確 ....
山の端にさそり座一つずつ昇る
釣り針の尻尾が銀河を吊り上げる
文字盤を重ねて二つの柄杓時計
麦と真珠 腕をそらせて指ししめす
冠をひとに贈りたがったひと
冠をひとに贈りたかったひと
....
雑音まじりのレコードを絵にしたら
古いテレビの画像みたいになって
鳥と葉っぱの区別がつかなくなった
川べりを歩く ゆうぐれ
右の道が途切れると
橋をわたる
左の道が終わりそうになった ....
花を摘んだの?
群青に沈んでゆく
風の流れてゆく
窓辺で
聞かれて
君の後れ毛を
遠くに感じて
僕は急に
君の腕をつかんだ
とてもやさしい腕を
君は驚いてそして笑っ ....
桜が散った
銀河の端で
はなびらの命が
燃えています
{ルビ私=ここ}と{ルビ私=ここ}以外のすべて
(距離とは
けして
交わらないことか)
右のうなじあたり
....
初夏の夜、首が痛くなるほどに
高い空を見上げて、
あれがかんむり座だよと、
いつかそう教えたのに、
あなたは忘れてしまった。
七つの星でできた王冠を、
あっさりと投げて捨て ....
どうしようもない高層ビルが砂煙あげて物静かに崩壊していった。それはいつだったか、たぶん去年の五月のことだ。もう終わってしまったゲーム盤の上で人々は右往左往していた。怒鳴り散らしていた頼りがいのある審判 ....
疾走感 と 焦燥感 の
折り重なった狭間で、
ドライブ
車の窓から手を出して
うしろへ、うしろへ、
流れてゆく景色を
さわって、あそんだ
ときどき
指のあいだをすりぬけて
流 ....
沈みかけた夕日に
灰色のカーテンを浸せば
世界は爆発する
*
うつくしい言葉を残すのはやめろ
あれは悲しみで あれは俺じゃない
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