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水曜日は午後から天気が下り坂らしいのです。
その坂を下り続けて、僕は海底へ帰りたいのです。
街路樹の根元に
延々と連なるラベンダー
夏になったら咲くのだろう
この街に 夏が来るのなら
誰と誰が生きのびて
新しい詩を書くだろう
マスクをつけて歩いていると
先生が電話してき ....
歩き疲れてベッドに横になった
からだがスライムみたいに
ひらべったくのびて
平面と化していく
目も鼻も
どこにいったかわからない
耳だけはラジオの音をひろう
手も足もシーツの端から
ゆ ....
運転手さん
そのバスに僕も乗っけてくれないか
行き先ならどこでもいい
いつだって
乗り遅れる僕なのだけど
もしも人生に疲れたら
プラスチックのCDケースに
爪を立ててみろ
それを壊すとそこには
バン ....
電柱を数えていると
母にはしたないと叱られた
数える以外、電柱の用途など知らないから
何で、と聞いてしまった
何で、と二回聞いてしまった
風景の端っこを小型犬を連れて婦人が横切る ....
目の前に置かれたコップに
なみなみと注がれた透明な夜を
一息に飲みほせば
僕はもうすっかり自由になれる
高い窓の鉄格子の隙間をすり抜け
出ていける
幽かな光 ....
鮮やかな色の花みたいな
血管に触れる音が聞きたくて
私は何度も踏みつけて来た
救われなかった過去くらい
丈夫な化石は展示しておく
胸のいちばん真ん中の谷間で
誰か引き受けてくれないかな
....
ざわざわと
視界を埋めて啼き騒ぐのは
梢で触れ合う
青葉たち
輪郭をなぞろうとすると
否定形しか使えない
あまりに崇め過ぎたから
信じるということが
見ないという事でし ....
原初のもりのなかには
原初の夢があったのだろうか
生命ははじめて声をだしたときに
詩を綴っただろうか
曖昧な系統樹のはてに僕たちは
何の権利もないことを知るが
それが自由なのか ....
私が見ている光景と
あなたがたに見えている事件は違っている
ということを
驚きとともに思い知る事がたまにある
でもあなた方が一斉に
同じ景色を見ているのだと思うのは
たぶん私の錯覚で
....
風、が
向こうの山から降りてきて
体を抜けて
そしてまたあっちに流れてく
風の粒、のなかに
きっかけは無かった
駅も、バス停もない
親だけが、年を取ってる気がしていた ....
死んだ父が
殺された、という
名札をつけて立っている
その横をコンビニ袋に
かつ丼を入れた男が
実存の靴を鳴らして歩く
蛍光灯の下で
頭だけ照らされた女が
命について考えると
....
レタスって
あの
苦味がすきなんです
雨降りあとの
鉄さびのような
あの
匂いもうれしいです
かさを
ぐる ぐる
回してみました
ぐる ぐる
ねこが
丸い手 ....
星が見えないのに光を探し
誰もが抱えた夢に近い場所
地面が少しずつ高くなった
東京タワーの最上階から
靴紐であやとりをしながら
イルミネーションを作っているよ
街に贈る熱のような火が
丸 ....
とり急ぎ、という言葉を初めて聞いたとき
鳥も急ぐのだと思った
正確に言うと
へえ、鳥も急ぐんだ、と思った
それはユウコの初めての言葉だった
今思えばあの頃
鳥は皆、急いでいたよ ....
プリンを冷やし固めている間に、僕はこっそりと旅に出ました。
知らない街で少し心細いですが、僕にはあのプリンがついています。
君の言葉の方向にいつも僕はいて
過去を育ててくれたからきっと
プラタナスの木みたいに
両手を広げて未来を抱きしめる
何度も救われた夜があって
君を特別な存在にした
星が瞬きをするように
....
挟んだ栞を抜いた時に
鍵を回すような
音を立てて物語が始まる
決まった台詞じゃ
足りないくらい
人の心は本よりも厚く
だからこそ読み続けていられる
僕等は借りてきたように
生きる言葉を ....
午後が落ちている
歩くのに疲れて
坂道を歩く
人だと思う
エンジンの音
やまない雨の音
降り積もる
昔みたいに
曜日のない暦
夏の数日
確かに生きた
覚えたての呼吸で
....
揺らぐ感情も理性も
鼻歌でかき消された夜
音量を絞るほどに
主張は心に傷をつける
カーテンを閉めても
光は朝は告げるから
今夜は白湯で乾杯しよう
酔いが回れば
世界も私もど ....
気楽に生きられない性分です
なぜなのだろう
こんがらがった感情を見つめている
楽にリラックスして
くたびれた躰をいたわったり
細胞の隅々に油を足してみたりして
ほんのひと手間で楽になる ....
目の前の
馬鈴薯と玉葱の炒めものは
たった一枚の皿であれ
時と所により
どれほどの幸いを、もたらすだろう
空が握手をした
昼と夜の歴史的和解
世界が呼吸を始めたのは
忘れ物を思い出した君が
今笑ったから
天候曇り
雲量は十
尊重すべき
涙を踏みとどまる自由
もう一人で大丈 ....
ジャズを聞きながら
君に手紙を綴っていたら
知らぬ間にアルファ波が
出ていたらしい
気がつくと
時計の針の30分が
あっという間に過ぎていた
願わくば
退屈で長い1日よりも
....
今日の別れが
永遠のさようならに
なるのかもしれない
そんな思いが過るので
玄関の外に出て
あなたはそんなにも
手を振るのだ
今日の別れが
最後になるはずがないという根拠など
....
黙して待つ
それだけのことが
辛い
私はここよと
叫びたくなる
目を閉じて
眠ってしまえば
逃げ場を亡くし
回り続ける
水の中に
ゆだねたのは
存在理由 ....
正月が終わるころ、
いつとなく思うことがある。
母の島へいってみたい、
そう思う。
オレさえ生まれてこなければ、
兄と両親は、
幾度となく島に、
かえれていただろう…
....
店員さんが運んできたコップの中に
凪いだ海があった
覗き込めば魚が泳いでいるのも見える
こんなにたくさんの海は飲めそうにない
先ほどの店員さんを呼ぼうとしたけれど
彼女なら里に帰 ....
愛と平等という
矛盾に気づいた深夜に
冷蔵庫は唸り出す
絶えることのない
沈黙にも似た説教に
何一つ解決策は見出せず
労働者は眠る
冷蔵庫の不眠不休
労働者の不平不満
実 ....
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