母親が
  朝食を作る途中で氷になっていた
  フライパンと
  目玉焼と
  五十二歳の痩せた体が
  透明なものでひとつに包まれていた



  トイレの戸を開けると ....
  風が吹いていた
  サッカーボールが
  高い網を越えていった
  哄笑と
  悲しみと憤怒が
  蝶とともに群がり
  吸いこまれてゆく一本の樹
  その陰にもたれて
  ....
  透明な空に
  透明な取っ手



  空を開けると草原があった
  草原を開けると発電所があった
  発電所を開けると僕があった
  僕を開けると藍色があった
  藍色 ....
  沈黙を
  六つの段落に区切り
  ふりがなをふりなさい



  青空をゆく白い雲と
  どこかから聴こえるピストルの音と
  くすりともしない人々
  この光景の
 ....
  真っ白な歯で
  梨の実をかじるとあなたは
  ゆっくりと透き通り
  青空とひとつになった



  僕のそばを
  一人の子どもが駆け去ってゆく
  おそろしくひたむ ....
  仕事を終えて部屋に戻ると
  ベッドの上に死人が載っかっていたのだが
  その耳朶があまりに綺麗だったので
  ぺりりと剥がして自分のと取り替えた



  ワイングラスを揺 ....
  寒いときはストーブのかわり
  暑いときには
  砂浜と風鈴のかわり
  あなたがいれば



  うれしいときは歌のかわり
  かなしいときには
  ぼくの心とから ....
  黒い
  八肢を載せた
  白さが
  恰も肌だ



  呼ぶな、
  呼ぶな。
  肌は、
  危うさの面だ



  息を
  潜らせ、
  探ってい ....
  馬鹿と呼ばれて
  夫は酒瓶を叩きつけ
  妻はヒステリックに叫んだ



  馬鹿と呼ばれて
  有名人は会見を開き
  一般人は参考書を買いに走った



   ....
  身構えないで
  かなしみは空のように
  僕たちとともにある
  あるときは透明に
  あるときは責めるように



  手放さないで
  よろこびは風船のように
  ....
  実りすぎたのだろう
  夕暮れ
  ぼたぼたと光は落下し
  夏の川に
  鈍く奏でられる



  水は鳴り
  子等も響く
  夏の川は
  ひとつなぎの譜面とな ....
  いつも想っているよ
  きみは可愛いから
  宇宙がきみをつかまえて
  さらってゆくんじゃないかって
  今日も会えたね
  おかえり



  じつは妬んでいるよ
 ....
  なまえをつけようね
  あなたの
  たましいに届くように
  大声で伝えるね
  きっと
  忘れないでね



  なまえをつけようね
  しだいに
  それは漢 ....
  歩きたい
  ひとつひとつ
  言葉を知っていきたい
  赤ん坊はいつか子どもになった



  遊びたい
  唄いながら
  どこまでも駆けていきたい
  子どもはい ....
  ある日の授業で先生が言った
  宇宙を暗唱してください



  興奮したように
  エントロピーやら引力やら
  べらべらと捲くしたてた委員長は
  廊下に立たされた
 ....
  嫌い、
  それは速い。
  あっという間に届くから
  いつも取りもどせないんだ
  嫌い、
  それはウサギ。
  いじわるなウサギ。



  好き、
  それ ....
  そのとき
  歌うのをやめていた
  いっせいに
  目蓋も
  胸に泡立つ
  つたない血球も
  もう歌うのをやめていた
  きみが
  心をこめて笑ったとき


 ....
  新緑の木々と風が
  奪い合うように睦み合うそばで
  夕暮れの光とあなたが
  隔て合うように惹き合っている



  もしも生まれ変わることができたら
  同じ時に同じ ....
  夏の朝の
  コインランドリー
  放りこんで座る
  わたしと
  あなた



  何だろう
  あなたは笑って話している
  わたしは
  聞いていない

 ....
  仕事をおえ
  歩む家路の安らかさ
  大切な人とともに食べる
  白米のしぜんな旨さ



  簡単に愛してよ
  行間にひそませた
  なんやかんやはいらない

 ....
1.社会


  職場に社会があり
  学校に社会がある
  家庭に
  託児所に
  公園に社会がある

{引用= 夕餉の時間
 うつろなサイレンとともに
 社会の ....
  恋に落ちる
  わたしが落ちる
  瞳が
  胸が
  たましいが落ちる



  小石のように
  みずうみに落ちる
  透きとおっている
  水草もゆれる
   ....
  夕暮れの教室に
  ぼくたちは産み落とされた
  生きてゆくことは
  いつ終わるとも知れぬ居残り
  帰る家もなく
  子どものころ
  教科書をひらくと
  とうめいな雲が立ちのぼり
  そこだけに雨をふらせた



  教科書はいつも
  本のかたちをしていなかった
  どこをひらけば ....
  未来のような
  だだっぴろい草原で
  詩を読んでくれたのは誰だっただろう



  幸福のような
  雨が降っていたのはどこだっただろう
  なにからなにまで
  や ....
  初夏、
  一日が終わるころ
  本を読む



  人が死ぬ
  ふとしたとき
  自分以外の人が死ぬ



  心は、
  陳腐だ。



  そう呟 ....
  大気が
  産卵している
  (だれの子?)



  繁殖する
  七月
  七月、
  七月……
  (幾つも、
   尊い。)



  夏の
  膜
   ....
  余計な話ばかり
  聞いて
  喋って、
  つかれてしまったよ



  関係ない
  関係ない
  椅子と
  ブランケットをたのむよ
  飲みものはいい

 ....
  きみは一篇の詩
  ただひとつ
  この星にうまれた
  かけがえのない一篇の詩



  時間は目眩めくリズム
  若さに弾み
  老いて穏やかな
  飽きることのな ....
  世界があまりに苦すぎるので
  曇り日の朝
  空を飛んでいた
  歌を
  菜箸で奪った
  噛みしめたそれは
  {ルビ土塊=つちくれ}の味がした
草野春心(1124)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩2*11/7/16 16:25
[group]自由詩111/7/15 19:37
抽斗自由詩6*11/7/14 17:49
国語の試験自由詩5*11/7/13 17:34
[group]自由詩2*11/7/12 14:11
死人自由詩211/7/11 16:25
かわり自由詩411/7/10 17:17
蜘蛛自由詩011/7/9 12:05
馬鹿と呼ばれて自由詩1*11/7/6 18:18
空と風船自由詩2*11/7/5 16:04
夏の川自由詩4*11/7/4 18:03
おかえり自由詩1*11/7/3 23:41
たましいのなまえ自由詩5*11/7/2 23:39
願い[group]自由詩3*11/6/30 18:40
自由詩7*11/6/29 18:40
ウサギとカメ[group]自由詩1*11/6/28 18:34
休符[group]自由詩3*11/6/28 12:33
転生自由詩5*11/6/27 18:38
コインランドリー[group]自由詩311/6/26 13:34
かんたんに自由詩6*11/6/26 9:22
思想シーソー自由詩711/6/25 10:18
みずうみ[group]自由詩411/6/24 18:32
居残り自由詩3*11/6/23 17:51
教科書自由詩211/6/23 17:33
喪失[group]自由詩411/6/22 23:27
本を読む自由詩011/6/22 17:33
夏の卵自由詩211/6/22 17:27
銃声自由詩5*11/6/21 18:32
世界はきみの歌自由詩4*11/6/20 18:32
曇り日の朝自由詩4*11/6/19 18:13

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