冬の浜辺の
一本の髪の毛を
さびしさ
と、読んだあなたの
ほんとうの名や
構成物などを
とんと知らぬぼくを、
つぎの光が
....
胡散臭い
新興宗教みたいな夜のバーで
僕は水しか飲む気がしない
みんないて
みんないない
ここにあるのは
下手糞な詩の下手糞な朗読
ここにあるのは ....
行ったね
ふたりで
いくつも話したね
井の頭公園
横浜の観覧車
行ったね
ふたりで
名前もしらない
とうめいな扉たちを
な ....
墓石があるから
人は静かに死んでいられる
出来れば
喧しく死んでいたい
醜く腐食し
おぞましい異臭をはなち
いつまでも
この世に迷惑を ....
{引用= 夕暮れ近くになると
老いた女がアスファルトに
一つの箱を置きにくる
ただの箱だ
ダンボールでできた、薄暗いだけの
小さな箱
それを置くと女はきび ....
国道沿いの
ひと気ないバス停
それは待つための場所
立ちどまるための
誰かを摘みあげ
載せてゆくための場所
僕も
君も
....
{引用= 精液が夜に喪い、形のようなものを、
鮮やかさに押し込めるために、闇を乳白
にしてゆく、スローに叩かれるエンター
キー、ポットで黙るコーヒー、まだ幼い、
少 ....
たえてって言ってた
ぬるい食事に
吸いおえた煙草に
このうえない馬鹿の
ひとつおぼえ
ひとつわすれ
ひえた夕陽
干からびた光に
....
ゆうぐれの
あいいろの
そらたかく
こころでえがく
とうめいなさんかく
かんたんで
たんじゅんで
わらっちゃうよな
つらいことが ....
はらのはらには
ぶたのふた
きのみきのまま
ぶたのふた
ぶたのふたあけ
ふたのふたあけ
つきのつぎ
あんいなあいに
やみよがそこに
つ ....
からすのかってでしょ
からすのかってでしょ
と、
きみは、
無愛想に歌いながら
目に見えぬいっぽんの釘を
目に見えぬ大きなクヌギの樹に
ロボットよ ....
秋のひかりが
きみだけを手に載せ
小さな声でうたっている
{引用= どんぐりころころ
どんぐりちゃん
あなたまるで
使いおわった命みたいね
どんぐりころこ ....
猫よ
おまえは邪魔だから
どこまでも流れていってしまえ
そう言うと僕は
ギャアギャアとあばれる君の飼い猫を
便器に放りこんで
「大」のレバーを回したのだ ....
そこに
動かないものがあったので
蓋を開き
白い花弁や
視線や
高層ビルなどを
挿してみた
動かないものは
動かない
闇を ....
朝の月は
言いたいことがあるのに
黙っているような感じ
薄明かりの部屋に
てんでばらばら
きのうの話
おととしの髪の毛
あさっての哲学 ....
ああ
うん、
ちょっと待ってくれ
考えているんだ
ええ
もちろん、
聞いているけれど
考えているんだ
感想を
箇条書きにし ....
{引用= 銀色のスーツを身に纏った男が浜辺でギターの
死体を検分している。場違いなセンチメントが、
五十六種類ほど波間に明滅しているが、男は勿論
意に介さない。鉄の壁。ク ....
光が白いので
裸体だけが空気にうかび
瞳の深みをもとめて
幾度も反射されている
きこえる
ひかりがきこえる
波打ち際に
わたしは耳を置いてきてしまった
遠い日の
あなたが歯をみせて笑ってる
くりかえし
....
硬いひざにきみの
頭をのせて
ひとつ、
ふたつ、
みっつ、
よっつ、
いつつ、
歳をとるように静かに
きみはまどろんでしまう
....
胸に抱いた
ちいさな逸脱を
きみは、
そっと足もとにこぼして
かなしげな
落ち葉のように重ね
どこか、
もっとかなしげなところへ
....
きみの喉に
さっきから{ルビ痞=つか}えているものがある
注意深く
確かめるんだ
そうでなければそれは
ただのつまらないジョーク
いいかい
....
世界にはたくさんの場所があり
たくさんの営みがおこなわれている
その日、僕が
することを選んだのは
床屋に行き
髪を切ってもらうこと
ひどく ....
黄金の季節
老夫婦が小屋の中で
夕餉をはさんで向かい合っている
アイリーン
それはハリケーンの名
土間には
几帳面に並べられた
いくつかの古い ....
僕の中に小さな女の子がいる
無垢な目に鋭さを湛え
頭には白い花のかんむり
僕の中に女の子がいる
僕は彼女に恋をしている
それは君じゃない
君 ....
いとしい夜に
枕がふたつ
いい歳をして
ひつじを数える
悩みはつきず
喧嘩はたえない
僕たちの日々に夜が
静かなのはいい
....
{引用=「葡萄」
葡萄の皮を
小さな部屋の
ドアをひらくように……
……
そのなかには
何か
静かな音楽を奏でているひとが
椅子に座って
....
{引用=――Morrisseyに}
音楽の
無遠慮な激情のあと
きみの足もとで
タンバリンが死んでいる
雨がふったら
傘を差しましょう
ワルツ、
そう、ワルツ。遠いところ
ふたり笑って
置きわすれたもの
雨がやんだら
傘は捨て ....
言葉を
影に埋めて
やがて歩くだろう
さっき来た道を
あたたかい
心から漏れる
音、ひとつ
ただひとつ抱いて
本当な ....
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