{ルビ転寝=うたたね}をしながら
  ピーナツの殻を割る
  眠りと目覚めの隙間には
  すこしずつ雪がつもってゆく
  ひどく無口で、
  愛らしい雪が切れ間なく
  ピーナ ....
  きみはぼくに
  ただ一言の問いかけをした



  夏、
  夕暮れのきつい光が
  少しだけ漏れる部屋で
  きみはぼくに問いかけをした
  どんな手がかりも
   ....
  何冊かの本を捲りながら
  目についた語句にマーカーをひく
  燕
  ウクレレ
  信用取引
  太陽と五徳ナイフ
  辛亥革命と水たばこ
  有機ELディスプレイとビート ....
  終着駅まで眠っていた
  雪がこそこそ降っている
  
  
  
  汚い水のなかに
  ゲンゴロウは浮かんでいる
  だが、その正確な形状を
  ちっともしらない私だ
 ....
  よく晴れた空の下
  十数羽の烏が女の体を
  生きたまま啄ばんでいた
  幼かったわたしは
  生家の二階の部屋で
  宿題をする手をそっと止めた
  本棚に置いたラジオから ....
  壁の向こう側に
  白球を落としてしまった
  顔をもたない父との
  キャッチボールの途中



  孫悟空のような
  星飛雄馬のような
  仮面ライダーのような
 ....
  遅い昼食を済ませて  
  苺の実を一つ齧る



  幾つもの
  目には見えない高い壁が
  頭のなかに聳え立ち
  増えたり減ったりしている
  煙草を一本吸う
 ....
  ながい歌のあとに
  みじかい言葉があった
  冬の夜の
  ひろい海のまえで
  そこらに捨ててきた
  古い自転車のことも忘れて
  ぼくたちは手をつなぎあった
  なが ....
  愛することができたものと
  愛せなかったものを
  苔色の水面に
  あなたが浮かべる



  夕暮れはしだいに  
  薄くひろくのびてゆく
  冬空を流れている、 ....
{引用=  テクノの骨、



  銀色 の夢、抱えて。
  左 に憧れ
  右 に足の痺れ
  固めた砂 のような
  闇の中で ね
  キミはいったい
  どこの馬の  ....
  接続詞を
  石の上に載せ
  はげしさを宿した鉄でもって
  あなたが叩いている
  灰色の部屋に閉じ篭って
  その外を通りがかると
  カンカンと逞しい音がきこえる
  ....
  カモシカの眼が二つ
  側溝で雨にうたれていた
  遠い昔の話のような
  青空の粒子が今、
  その奥で消えようとしている
  ビニールコートのフードをおろして
  ほろ苦く ....
  小学校は
  投票所になっていた
  冬のひととき
  ぶらさがるカーテンの波を
  光の風が揺らす教室



  長靴にしのびこんだ
  濡れ雪を気にしながら
  ま ....
{引用= (fall)

  秋
  娘の胸に
  はじめての乳が溜まり
  銀杏の香り実る頃に
  心は夢と出会う  



 (shape)

  「長い廊下の向う ....
  画板のうえに
  赤と
  青を置く



  青のための赤と
  赤のための青



  意味
  固い殻を剥かれた
  何者かの咳
  冬になるときみは
  樹下の落葉をひろい集めて
  ぼくの胸のうえに載せ
  火をともしたものだ
  それ以外に
  やり方のないような手つきで



  あのなつかしい ....
  今宵、風の
  滑るような冷気の端に
  一本の象牙が生えていて



  きみは両手で
  そっと包みこむ
  通り雨の過ぎたあと
  かなしさの残る街の片隅
  電 ....
  積み木の赤い部品が
  緑のうえにそっと載る



  駆け抜ける電車の影が
  血の気のない床を砕いて
  それから
  途絶えて消える
  轍のひとつも残さず
   ....
  おまえはだれだと
  蟻が訊く
  秋枯れの
  木の根をしいんと横切り
  くたびれた靴の色より
  鮮やかなぼくの影
  ジャック・ダニエルを呑んで  
  やってられないとつぶやく
  おぞましい闇を
  月明りが潰す
  猫のようなきみの手も時に  
  すばしこいジャブを繰り出す
  痣模様 ....
{引用= (stones)

  喜びは
  あなたの膝に
  置かれた石
   


 (eyes)

  漆黒の髪と
  睦み合う指の
  眩暈をもよおす
  数 ....
  1

  夜に錠をかける
  炭酸水に精液を混ぜる
  クレジットカードに鋏をいれる



  2

  美術室
  置きざりのままの
  パレットに絞った絵具のこ ....
  カップボードのガラスに
  葡萄の果実が映しだされる
  一粒ひとつぶ、
  丁寧に描いたみたいに



  時計の針の刻む音が
  穏やかに年老いてゆく間
  ホテルか ....
  頭の中に
  一匹の犬が眠っている
  擦れてしまって読みとれない
  古い名札のついた小屋で



  静脈のほそい暗がりを
  血液がそっと滑ってゆく
  夜、
  ....
  痩せた熊が
  水底に沈んでゆく
  両の眼を開けたまま



  だだっぴろい冬は
  晴れた日の砂漠のようにきらめき
  しろい女は
  しろい男の唇に
  海より ....
  
  小さな鍵のうえに
  丈夫な檻をかぶせる
  はかり知ることのできない
  うしろ暗いかなしみの末
  その幼さだけが頼みの
  あなたの白い歯が
  深い夕闇にとっぷりと ....
  秋の途中
  枯れたような空の下に
  一本の柿の木が侘しげに立っていて
  きみがそれを見上げている
  もう、少し皺のついてしまった
  グレーのコートに身を包んで
  甘 ....
  生臭い夜に
  九本の足が生えている



  洗いたてのシーツに置かれた
  ただひとつの丸い石
  きみの汗がそのうえを伝い
  鼠がねぐらに帰るように
  闇の奥へ ....
  皺くちゃの子ども
  緑色の鋏を手にして
  揺らめく雲の端を断った



  いま、
  目覚めの時
  山の連なりは遠く
  朝焼けに縁どられ煌めく
  森のどこか ....
  肌のきらめきだけで
  月が出ているとわかる夜
  きみの胎が優しく
  蒼い氷をはらんでふくらむ



  白いシーツのうえで
  ふたつの影がみっつになり



 ....
草野春心(1124)
タイトル カテゴリ Point 日付
ピーナツ[group]自由詩613/2/9 1:33
問いかけ自由詩813/2/3 22:15
マーカー自由詩713/1/29 21:56
終着駅[group]自由詩14*13/1/29 20:29
幼さ自由詩5*13/1/28 0:53
ヒーロー自由詩613/1/25 20:01
苺の実自由詩813/1/20 20:58
ながい歌[group]自由詩1213/1/18 22:45
浮力自由詩713/1/16 21:23
テクノの骨自由詩413/1/16 0:09
自由詩913/1/8 19:49
カモシカ自由詩8*13/1/1 16:18
投票所自由詩612/12/23 8:44
色彩へのコラージュ[group]自由詩512/12/16 22:09
画板のうえに自由詩612/12/15 10:28
[group]自由詩812/12/9 23:17
象牙自由詩412/12/9 23:05
積み木[group]自由詩712/12/2 22:48
[group]自由詩712/12/2 20:16
ジャンプ自由詩7*12/11/30 0:43
無へのコラージュ[group]自由詩512/11/30 0:24
The Taste Of The Glass[group]自由詩5*12/11/24 18:16
カップボード自由詩5*12/11/24 11:10
静脈自由詩13*12/11/24 10:38
痩せた熊自由詩812/11/18 23:19
夕闇の檻自由詩512/11/11 10:54
柿の木自由詩212/11/10 16:26
ねぐら自由詩612/11/10 10:48
皺くちゃの子ども自由詩712/11/10 10:37
蒼い氷自由詩512/11/4 16:03

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