一輪のすみれを
  花のところだけ切り落とす



  いとしい{ルビ女=ひと}よ
  きみの優しさが
  どこまでも悔しかったからです
{引用= ――はるな「桃のこと」に寄せて}

  桃を剥く
  なるたけ薄く
  しゅるしゅると
  あなたを剥く
  透明な肉



  最初に
  いだかれた痛み
  それ ....
  さわってもいいけれど
  そこにはないよ
  僕の手にも
  やせた胸にも
  ズボンの下にも
  さわってもいいけれど
  つたえられない



  書いたっていいけ ....
  それはあなたですか

{引用=   いいえ、それは麦藁帽です
   それはかぶることができます
   それは夏の人々に好まれています

   いいえ、それはすみれです
  ....
  かあさんのあいしてるは
  おつきさまみたい
  やさしくつつんでくれるから
  こんやもぐっすり



  とうさんのあいしてるは
  とうさんのせなかみたい
  しんぶん ....
  突然
  女の胸が
  扉のように開き
  細く
  こわばった
  いくつもの指たちが
  ぼとぼとこぼれた



  モネの指
  キースの指
  アルゲリッチ ....
  初めて
  父にぶたれた日
  近くの河原へ行った



  ひとり座って
  痺れる頬をさすりながら
  川のなかの魚を見つめていた
  一匹、二匹と
  その生きも ....
  お願い、
  ドアを閉めて。
  その椅子に座って。



  涙のギター、
  スライドして。
  出来るだけ、
  音を伸ばして。



  歌うなら、
  ....
  この砂浜で
  風が砕ける
  ばらばらと
  この砂浜で
  波も砕ける
  ばらばらと
  愛が終わる
  心が終わる
  未来が
  忘れられてゆく
  ばらばら ....
  わたしの喜びが
  きりきりと痙攣する
  ただ一滴で
  あなたの
  搾りだしたさよならのせいで



  落下するさよなら、
  道をゆく眼差し、
  世界じゅう ....
  一組の対句が
  狛犬の像さながらに鎮座しているのを
  ベンチに掛けて眺めている
  だがその奥に控える本堂はどうだ
  冷え冷えとした静けさは
  推敲を重ねられてゆく
  ....
  歌ってはいけないことは
  ひとつもなかった
  嬉しければ笑えばいい
  悲しければ机に突っ伏し



  歌ってはいけないことは
  どこにもなかった
  愛しければ ....
  輝く空に
  心がかなしい
  何か切実なものが
  巣立ってしまった後の朝
  月の光に飽きてしまい
  深く眠りにつくと
  君が
  僕の手を切断し
  それを使って一篇の詩を書いた



  朝、
  それは元通りに
  手首にくっついている ....
  このソファーで母が寝ていた
  昼に
  半刻ほど
  低い音で鼾をかいて



  その後は僕が寝ていた
  このソファーで
  黄昏時
  ふたつの眼を
  天井 ....
  働いて
  働いて
  四角い紙と
  円い金属



  立ちっぱなし
  犬が過ぎる
  犬が嗤う
  中也の
  失くした椅子



  生きっぱなし
 ....
  他にやり方はあったはずなのに
  言葉でもよかったのに
  きみは{ルビ擁=いだ}くことを選んだ



  他に道はあったはずなのに
  きみの肩ごしに
  山並みは夕日に ....
  きみのうしろに
  きみが見える
  脱ぎ捨てたシャツのようにさりげなく



  きみのうしろに
  きみの母や父が見える
  ひっそりとしたブランコや
  いくつもの ....
  歌よ、
  さようなら。
  みずみずしい言葉の列を
  かつてはわたしに注ぎ込んでくれた
  歌よ、さようなら
  これでおしまい。



  わたしよ、
  さよう ....
  クロッキー帳に僕は絵を描いた
  麦藁帽を被ったあなた
  はにかむように微笑んで
  そのとき僕が目にしたすべて



  あなたは絵にインクを一滴こぼした
  ワンピー ....
  僕が死んだときには
  僕のペニスを切り取っちゃってくれ
  抽斗に
  ナイフを入れておくから



  残りの部分は燃やしちゃってくれ
  僕が死んだときには
  僕 ....
{引用=  ――Raymond Carverに}

  男の頭を
  少し傾けるとレイに
  もう少し傾けるとアル中患者になる



  注意深く
  あなたは頭を傾ける
  朝
 ....
  祖母の家で
  祖母と話す
  昔ながらの広い居間
  たっぷりの朝日が射しこんでいる



  通っている盆栽教室のことを
  嬉々として話す
  新しく入った若い女の ....
  君は机に向かう
  ボールペンを握る
  罫線の上に
  言葉を置いてゆく



  それは君の決めた枠
  君の胸の奥で
  何か切実なものが発熱している
  窓の外 ....
  果実
  という言葉を胸に抱いて眠った



  眠りのなかでわたしは一匹の鮭だった
  寡黙に
  川を遡上する
  ほんの小さなものだった



  朝がきて目 ....
  きみの洗ってくれた
  白いシャツ
  お茶をこぼしちゃったよ



  二つの椅子が
  笑っている
  名前もしらない駅で
  通過待ちをしているような午後


 ....
  死人の眼には
  海
  それは彼が
  最後に目にしたもの



  命をかけて成し遂げたいことが僕にはあった
  今は無い
  今朝、
  僕が目覚めたところは
  朝靄に包まれていた
  どこだろう
  鳥の声ははるか向こう



  身じろぎもせず
  大きなかいぶつが立っていた
  僕の体 ....
  風が細り
  土が痩せる
  人の心は落ち葉のように
  秋には秋のかなしみ
  寄り添いあって焚き火をする



  闇が冷え
  光がけむる
  静かな予感で街は煌 ....
  真昼
  一人の男がテトラポットに座り
  何か岩石のような物を
  サンドペーパーでごしごし研いでいた



  これは私のポエジーです
  問いもしないのに男は言う
 ....
草野春心(1124)
タイトル カテゴリ Point 日付
すみれ[group]自由詩511/8/4 17:47
桃を剥く[group]自由詩5*11/8/3 16:23
つたえられない自由詩511/8/3 9:16
らぶ・ぽえむ[group]自由詩4*11/8/2 17:38
あいしてる自由詩4*11/8/2 11:42
イストの指自由詩411/8/1 17:44
数える自由詩3*11/8/1 10:10
クソ自由詩211/7/31 22:25
ばら自由詩1*11/7/30 22:23
一滴のさよなら自由詩3*11/7/30 18:15
読むこと自由詩211/7/30 8:05
歌ってはいけないことは自由詩7*11/7/29 17:50
羽根自由詩2*11/7/29 9:01
滑らかさ自由詩311/7/28 21:30
ソファー自由詩111/7/28 17:41
中也の椅子自由詩2*11/7/27 10:16
擁く[group]自由詩3*11/7/26 12:47
きみのうしろに自由詩211/7/26 12:38
おしまい[group]自由詩411/7/25 16:49
自由詩111/7/25 8:25
僕が死んだときには自由詩3*11/7/24 7:48
傾ける自由詩6*11/7/23 9:34
祖母自由詩711/7/22 8:41
夜に自由詩411/7/21 18:03
小さなもの[group]自由詩5*11/7/21 9:04
午後自由詩3*11/7/20 17:23
自由詩211/7/20 9:11
かいぶつ自由詩3*11/7/19 16:37
かなしみの四季自由詩4*11/7/17 17:45
研ぐ男自由詩2*11/7/17 9:48

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