女郎蜘蛛がさっきから 私の大脳に巣をはっているようだ
  縞模様の尻をふりふりさせて 時折転げ落ちそうになりながら



  東からの弱い風に レースのカーテンが波立ち
  椅 ....
  あたたかいミルクを 絨毯にこぼしてしまった日
  きみはゆっくりと愛していた
  町を、陽の光を、そでの長い服を



  きゅうくつなかなしみが胸を染める
  言葉にできな ....
  その日 空は折れ曲がっていた
  梯子の上ではくたびれた猫が
  真昼の光を嫌になるほど浴びていたし
  グラスに注いだ麦茶は埃を被りつつあった
  


  忘れ物はのこさ ....
  さっき、背の高い老人が窓の外を横切っていったのだが
  まもなく 横断歩道のあたりで 見えなくなった
  花粉の多い 春の 晴れた日
  喫茶店には いやみな観葉植物が 所狭しと並べ ....
  羊の影が
  小径を歩いて行くのがみえた
  人も居らず ごみばかり落ちている
  その小径は雨の臭いに満ちていて
  もう
  まもなく、
  日暮れが訪れる
  マフラー ....
  古い蝉が、この部屋の
  窓に貼付いて乾いている
  色々なものが置かれていたが
  結局ひとつもとどまらなかった



  きょうの月は、頼み方しだいでは
  ベランダに ....
{引用=  /とけた猫
 
  コバルト色の階段をとけた猫がつたっていく、春、うつむくこと
  は似合わない、踊る石と、まだ眠りから覚めない風を抱いている、
  きみには。

   ※
 ....
  火のついた白い煙草を
  きみが 一の指と二の指から
  二の指と三の指に移すのを見ていた



  なんでまた 髪なんて伸ばしてるんだ



  くちびるから 夢まぼ ....
  机に載っていた、何枚かの
  便箋は すみれ色をしていた
  グラスに注がれた玉蜀黍茶を空にするまで
  夕焼けをわたしは眺めていた……飽きもせずに
  複雑そうなものごとが、ほん ....
  夕がたの田舎道を
  きみの車で走っていたとき
  ステアリングをつかんだまま
  きみは溶けてなくなってしまった



  遠くには海がみえた
  少なくとも、海のような ....
  栗色のひとみが
  風にさらされている
  窓のきわ、沈みゆく陽はとおく



  きょう、
  なにもいえなかった
  だからたぶん、あしたも
  きみになにもいえない ....
  首すじの まるい砂に
  あまい夢が 今日のしずくを落とす
  夕いろの、せまい、部屋のような瞳を
  ころがしてあなたは とかげの顔で笑う
  いつも 恋は速すぎるし、
  と ....
  晴れた日も、雨の日も、花束は
  年式の古い、ベージュのビートルの
  黴臭いトランクに入れられていた
  (どこがどうとは言わないが)蝸牛に似た平べったい影が
  後部座席にいつ ....
  日がないちにち、きみは
  ふたの閉じたオルガンにむかっていた
  やりばのないかなしみはもう、
  とうの昔に過ぎさったはずなのに
  雨をうけた一頭のサフォークが
  抱いて ....
  うつむいて
  ひもをむすぶ
  しろいシャツに
  あかねいろが染みる
  今日はきみを 抱きしめたくはない
  ありふれたことばで 濁らせたくはない
  きみはうつむいて  ....
  なにか、やわらかい言葉を
  あなたには いったほうがよかったのだが



  木枯らしが身を刺す日
  かたむいたなんらかの光
  洞のなかの熊に似たあやうさが
  あな ....
  わたしの胸のなかは
  春がくると、空の色とおなじになる
  うぐいすも桜もないこの町を
  がたのきた軽自動車で駆けてくあなた



  風のそよぎが耳にうたう
  鋏を ....
  かなしい歌をつれて、
  春風がきみの頬をさわるとき
  ひとびとのささやきは町を彩り
  光が、もの静かな雨のように靴に落ちる
  白い花の影がひとつ、心のなかに揺れている
  ....
  きみの手を握ったとき
  カモメたちが空の低いところを横切った
  それから 二人で歩き出したとき
  潮風が鼻をつんとついた



  沈んでいく夕日のせいなのか
  き ....
  女は戯画のなかのインディアンみたいな出で立ちをして
  紙紐を使って ベッドに男の四肢を括り付けていた
  人工の冷めた光は磨りガラスの窓を白く染め
  取れかけた口紅を不気味に照ら ....
  不確かな骨だけを残して
  夕暮れの時間は風に流されていった



  きみの膝の上に載せられた 白いパナマ帽
  それは何の前触れもなく ただそこにあった
  それはまるで ....
  見知らぬ男が一人
  バッターボックスに立って
  枯れ葉のような色をした 外套のボタンをはずした
  上から三番目、ひどくほつれて、取れかかったボタンだ



  透き通っ ....
  珊瑚礁がわらっている
  夕方 潮風のかわりに



  わたしは、
  爪を剥がされた猫と 体毛の薄くなった猫とを
  膝のうえに半分ずつ抱いて 雨を受けた、
  あなた ....
  滑らかな掌が 部屋の中で
  私たちの内のどちらかをさがしている
  (夜は こんなにも 明るいというのに)
  捩じれた、青白い樹の 影が、こごえている
  いつか 囁きに似た笑 ....
  春、ひとすじの川が
  豊かな緑に彩どられるころ
  薄い衣をまとっていくといい
  きみは女なのだから



  岸のむこう側では
  きれいなかたちをした石が
  見 ....
  そして光が
  ひとつの小さな部屋であるとすれば
  わたしはその入り口も出口もしらない
  冷たげなスツールに、半分だけ腰をおろして
  長い窓についた雫をふいたとき、
  あ ....
  女の手は 梨を食べたばかりで、少し濡れていた
  夜風を正面から浴びて 枯れ草たちが咽び泣いている
  角をもたない鹿が そこを踏み分けて奔り
  しだいに速度を緩めて止まる
   ....
  多くの角砂糖が 紫蘇色のスカートにこぼされても
  彼女は 眉ひとつ動かすこともないだろう
  ただ膝のうえで掌を握っては開き(開いては握り)
  あなたの影が砕かれていく その場所 ....
  静かだった……
  禁じられていることは それほど多くはないはずなのに
  ただ、いくつもの瞳だけが 土埃に塗れながら
  風と風の間で何度もはね返っている
  男たちの沈黙はカラ ....
  円い影を銜えて その犬は闇へ紛れた
  ときに思いもよらないところから降ってくる、雨……
  厳めしいマンホールがあなたの靴を覚えている
  わたしだけだったのかもしれない いつも  ....
草野春心(1124)
タイトル カテゴリ Point 日付
女郎蜘蛛自由詩314/5/5 19:28
ミルクときみの春自由詩1014/5/4 6:34
折れ曲がった空に自由詩414/4/27 10:51
背の高い老人自由詩314/4/26 21:02
羊の影自由詩914/4/20 8:28
古い蝉自由詩1014/4/10 22:26
春へのコラージュ[group]自由詩914/4/3 20:55
アカシア自由詩314/3/29 8:19
すみれいろ自由詩814/3/23 22:27
[group]自由詩314/3/16 22:55
かなしみのかたち自由詩514/3/12 14:44
あまいゆめ[group]自由詩814/3/8 22:07
年式の古いベージュのビートル自由詩414/3/6 23:56
サフォークのオルガン自由詩5*14/3/6 22:22
風のあと自由詩2+14/3/5 15:56
悔い自由詩314/3/1 16:20
わたしの胸のなかは自由詩314/3/1 15:01
春の歌自由詩614/2/27 0:59
別れ際に[group]自由詩314/2/11 19:37
女たち自由詩314/2/11 16:50
白いパナマ帽自由詩514/2/9 22:43
バッターボックス自由詩314/2/9 16:19
珊瑚礁自由詩414/2/9 13:03
滑らかな掌が部屋の中で自由詩214/2/8 21:45
薄い衣自由詩8*14/2/5 0:22
エーテル 19[group]自由詩114/2/2 11:39
エーテル 18自由詩414/2/1 22:33
エーテル 17自由詩214/1/22 0:09
エーテル 16自由詩414/1/20 23:55
エーテル 15自由詩014/1/20 0:21

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