草野春心



  ある日の授業で先生が言った
  宇宙を暗唱してください



  興奮したように
  エントロピーやら引力やら
  べらべらと捲くしたてた委員長は
  廊下に立たされた



  次に君が手を挙げた
  そして、



  その先は何も憶えていない
  光のように
  音もなく風が流れていた
  校庭にそびえる大きなけやきの樹
  遊具たちに記された静かな約束



  その先は何も憶えていない
  ただ
  その日確かに僕が
  君を好きになったこと以外は





自由詩Copyright 草野春心 2011-06-29 18:40:53
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