話しかけても顔をそむけて
そっけない返事をするのは
なんか
愛ゆえのことで
千尋の谷に
つきおとして
ようすをみるてきな
かのうせいが
ある
と
おもっ ....
魚屋に雪が降る
並んでいる電信柱たちは
パンのように沈黙する
台所の窓辺にサボテンを置いて
今日は何をして過ごそうか
外のアスファルトが
小さな音をたてる
きみの体温も静かに ....
千早振る蛇を殺して猫眠る
美しい人を殺した怖い人
好きだった歌を忘れた四畳半
窓の外はあらゆる事の起こりうる
枯草熱試合終了五分前
ていねいなしらない人の顔写真
わたしの喜びが
きりきりと痙攣する
ただ一滴で
あなたの
搾りだしたさよならのせいで
落下するさよなら、
道をゆく眼差し、
世界じゅう ....
そういえば
姉の名前は
梨の華と書きます
はじめての孫に祖父が名づけました。
昨日の午後に
私はのこぎりを持って
全身を使って
梨の枝を切り落としていました
父と一緒に
....
歌ってはいけないことは
ひとつもなかった
嬉しければ笑えばいい
悲しければ机に突っ伏し
歌ってはいけないことは
どこにもなかった
愛しければ ....
ダビングしようと
君はいった
それはとても
素敵な提案に思えたけど
僕たちは
ダビングすべきものを
なにも持ってはいなかった
だからふたりは
ちょっと高価な
ビデオカメラを買って
....
地震
崩壊
揺れ
一度は死んだという思い
希美子、幸司、靖司
混乱
信頼
マンボちゃん、知沙
揺らぎ
ターハイ
イッチャン、ニチャン、サンチャン
巻き込みあいながら
ひとつとし ....
とは言わなかったが深緑
の海の底でシャワーを浴びる
人魚の群れ
いずれ死ぬ花と骨の埋没
うつくしい響き
何かが溶けるような
うつくしい響き
風にとばされながら
うたい続けている
うつくしい響き
鳴るよ
君は鳴る
その奥に潜むグロテスクな塊を
うつくしい響 ....
めだまやきには
苦痛をともなうべきだと
たまごがやかれ
失われるのは
とりのめだまの
源
だった
きみとしろみとその他もろもろ
たとえられて
身のぎせいを
あじわっている
なんて ....
バスが停車するたびに
バスガイドが代わる代わる乗り込んでくる。
口元に引き寄せたマイクから
日本から海外まで。観光地から
狭い路地から、台所から、寝室から
行くこともない土地の話を
そこに ....
いちご畑にみんな集まれ
にこにこ笑顔に
さんさん太陽
よんで
ごらんよ
ロックンローラー
七輪にうちわ
鉢巻き巻いて
焼べた赤い火で
唐辛子あぶる
五十五秒だけ待っててね
も ....
僕は今から体内を洗練する
温度を感じぬ裸足で外に出る
海に向かい血の付いた右手で空を切る
許しを得るために
残虐の対価として僕は
上記のように清らかに生きなければならない
....
{引用= ――Raymond Carverに}
男の頭を
少し傾けるとレイに
もう少し傾けるとアル中患者になる
注意深く
あなたは頭を傾ける
朝
....
ぼくたちは知らないうちに だれかの心をふんずけている
ふんずけられた人は たくさんの血がでて怒ってる
これだけ流れたら どれだけ辛いかわかっているのかと
そうだ あんなやつ殺してしまおうと
....
自分を切り売りする年でもないと
4年前に言って
それから
ほんとうにそうなったら
いったい
どうすれば
いいや、俺がピカソだ
お前がピカソなのか
そうだ オレこそがピカソなのだ
どうしてもピカソなのか
どうやらピカソなのだ
おまえは ピカソ化、そうなのか
....
深夜の営業車の中で
タバコを吸い尽くした日
君からの声
どこで自分を描けばいい
コンビニで雑誌を手に入れた
とくん、とくんときみはうなずいて
真昼の空をひろげてみせた
背伸びして手をのばしてもまだ遠い
青の時間につつみこまれる
目をふせて きみは何かを想ってる
雲にかくれた月に似ている
....
観覧車が
左回りに
新しい青を曳く
真昼
女のかたちをした雲の
乳房の裏側あたりに
太陽がかくれて
鼓動している
馬鹿が微笑む
それは見事に
芸術品の様に
きらり美しく
馬鹿が微笑む
そんな馬鹿を羨む
微笑むのは苦手だ
いつだって苦手だ
何も感じられない
と言ってはみるが
表に出な ....
桃のにおいの手が
空を混ぜて
はじまる
闇のなかを見つめ返す
まぶたの奥の水があり
ひとつの葉に隠されている
海岸と夜
手のありか
通り雨
....
絶望が空でとぐろを巻いている
僕は今日 夏に百万回殴打された
熱いアスファルトに嘔吐した胃液は
夏らしくきらきらと輝く
おそらく
今日という一日を
まめをつぶして過ごしてしまったのが
悔しくもなくて
誰のために
血を流していたのか
自分のために
なっていたらなあ
感嘆が漏れてから
夏の湿気につつま ....
僕は遠い昔に生まれ
すでに死んでいてしまいたかったな
神話は失なわれ
青空はなんにもない
空虚な哀しみに
剥げ落ちてしまった
今日の空を見上げると
夜の美しい闇も
ざわめきのライト ....
もし彼が待ってくれ
と言われても
私は旅立つ
もううんざりなの
安い香水をつけて
安いイヤリングして
安いバーボン片手に
安い高速バスに乗る
信じた私が馬鹿だった
のんびりし ....
母親が
朝食を作る途中で氷になっていた
フライパンと
目玉焼と
五十二歳の痩せた体が
透明なものでひとつに包まれていた
トイレの戸を開けると ....
もし僕が今夜悲しく死んだなら
すこしぐらいは
君も笑うか
....
死と屍
暗闇と風
犬と牙
火と血と着火
鏖
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