「おくるから、したでまってて」
「うん」
....
許せる、許せんっていうのはおこがましいからいつも怒ったあと死にたいくらいの絶望とダムの放流のような感情が竜巻になり、許せる許せんっていうのはやっぱり自分がヒステリックになってしまったからでてきた感情で ....
むずかしい言葉の意味を知らなくても
人を愛することは出来るはずだった
暗闇の中で掴んだ葦は
美しさだ
やさしい歌は
祈りだ
自転、公転
引力
その正しさ
土から ....
猫よ
おまえは邪魔だから
どこまでも流れていってしまえ
そう言うと僕は
ギャアギャアとあばれる君の飼い猫を
便器に放りこんで
「大」のレバーを回したのだ ....
夜が明けた。
冷酷な夜の鶏(とり)のサイレンの。
そうそれ無機質な(夜気)にひそむ
明けない呼吸
だから彼女は呪文になったんだ
いまじゃ音だけになっちまったけれど
傷つくたんびに口ずさんでいる
彼女はおおむね優しかった
おおむね面白い発見をしてくれていたし
おおむ ....
あの日
世界が一様に
劣等感を持った
でなければ911以降
あれほどの性急な
清濁の認め合いは
なかったんじゃないか
あの日
世界が一様に
....
光が白いので
裸体だけが空気にうかび
瞳の深みをもとめて
幾度も反射されている
女の部屋を出るのは
朝ではなく夕暮れにする
その鉄則
破るほど恋をしたのは
いちどきりだった
たぶん
苦しめるの分かってた
苦しみたいと思ってた
たぶん
女の部屋を出るのは
朝 ....
きこえる
ひかりがきこえる
波打ち際に
わたしは耳を置いてきてしまった
遠い日の
あなたが歯をみせて笑ってる
くりかえし
....
扇風機は空を飛ぶ
ちょっと角度を変えてあげれば
扇風機は空を飛ぶ
ちょっと力を強くすれば
扇風機は空を飛ぶ
ちょっと羽を大きくすれば
扇風機は空を飛ぶ
....
人に歓びを
捧げたいと思う
思わぬ悪意で
出来ている
このからだ
皮膚の下で
水滴に
よく似ている
骨が歌う
ハッピー・バースデイ
止まぬ時に
生まれ ....
硬いひざにきみの
頭をのせて
ひとつ、
ふたつ、
みっつ、
よっつ、
いつつ、
歳をとるように静かに
きみはまどろんでしまう
....
あなたが死んでも
僕は笑わない
あなたが死んだら
きっと万人が笑うだろう
表面に薄ら悲しい表情を着せて
あなたが死んでも
僕は笑わない
僕はきっと笑わない
きょうそとは
キンモクセイの匂いしている
それだけが湿気のように
こすれあう肌が
お花屋さんの冷蔵室の匂いだ
植物みたいな悲しみに
ふたりはじゃれあい
た ....
いいわけが思い付かなくなった
こじつければ無限にあった
あの頃は確かに
言葉は弱い私たちの
味方だった
* * * * * * *
体育館の
高い窓を見ていた
仰げ ....
ばななの身に
きりんの形をした
バナキリン
というのが いて
草丈も短いサバンナで
こういつまでも
夏が暑いと
やわらかく 溶けてしまいそうなのを
困ってる
バナキリン
海月に刺された女の子が、ひらひらと漂着する砂浜で、ささやき合っていた熟年カップルは、あらわれてはきえていく波の前で石像になっている。
白い波と青い波を残したまま、海は水平線で折り返し、遥か頭上をずっ ....
きょう
きみがうまれたひに
たどりつきました
ふたりでいっしょに
そのいみをすこしかみしめたい
いきかたは
ひどくつたなくて
そのすえに
きみにであったような
きがした
....
子供の頃、私も君も涼しい格好をして近所にある人の家の花壇に集まった。
その場所には私が誘ったのだった。
私はこのピンクの花は蜜が吸えると言って花に口を付けた。
君は私を疑って、引 ....
深夜、小さな
発車ベルが鳴って
ジェット・コースターは
動き出す
大きな音をたてずに
ゆっくりと
星と星の間を落下する
乗っている人を
起こさないように
幸せな夢を
壊 ....
世界にはたくさんの場所があり
たくさんの営みがおこなわれている
その日、僕が
することを選んだのは
床屋に行き
髪を切ってもらうこと
ひどく ....
見えるものさわれるものしか信じない
なんて事を君はいうけれど
そんなものはないだろうね
少なくとも今の君には
さびれた屋上の遊園地では
もう二度と動かないパンダの乗り物が
片隅に追いやられていた
大きな看板が目の前に見える
さっきまで雨が降っていた
空がどんどん黒くなっていく
インクを塗り ....
カウンターの木目の数をかぞえて
自分の歳をかぞえ忘れたお馬鹿な阿呆鳥は今日だってきっと
酔いつぶれてしまうのさ
君の秘密のぬくもりを思い出しながらね
官能の風は背筋をつたい
神経を縦断し ....
すいへいの
ばらんすで
らくえんを
しっていた
きぎにふれ
いのちをみ
つちをかき
しごとみつ
ようようと
うみあふれ
おうこらも
....
ぼくはずっと、
ぼくという人間が、夢見たことや、
苦しみが報われたり、
いつか救われたいと願うことが、
すべて、
恋愛によって明らかになるものだと、
信じてきたようなところがある。
....
押入れに入れられて
もうずいぶん長くなる
ときどき遊びに来るねずみに
爪をかじらせてやったり
みかんを潰したりしているうちに
骨の浮いた老婆になってしまった
これではいけないと思う
これ ....
僕の中に小さな女の子がいる
無垢な目に鋭さを湛え
頭には白い花のかんむり
僕の中に女の子がいる
僕は彼女に恋をしている
それは君じゃない
君 ....
奥に進めばいいと
席を立ったのはいいが
どこまで行けばいいのか
聞くのを忘れた
暗い明かりの下
行き交う人は
あなたの目的は全部
端から端まで知っているんだ
とでもいうように
意味あ ....
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