母ちゃんが、洗濯物の皺をのばして
竿に衣服を干している。

実家を離れて久しい
娘についての深い悩みを
ひと時、忘れて。

日にましろく照らされた
タオルを
丹念に、のばして。

 ....
無数の雨達はアスファルトに、跳ね
世界を覆う
ざわめきを鼓膜に残して
私は夢から、目を覚ます。

布団から身を起こし、のびをする
朝のひと時。

夢の中で、瞬く間に
姿を消す雨達と
 ....
一つの苗を手にした、僕は
じぃ…っと屈み
{ルビ水面=みなも}に手首を突っこんで
柔い土に、苗を植える

どんなに風が吹こうとも
どんなに雨が降ろうとも
どんなに陽が照ろうとも

い ....
昨年、天寿を全うし、肉体の衣服を脱いだ
山波言太郎先生の御魂に捧ぐ手紙を綴り
我が家の神棚に、お供えした。

妻が蝋燭に、火を点けた。
少しして、じいぃ・・・と言って
火は、消えた。  
 ....
朝の信号は、青になり
盲目のひとは白いステッキで
前方をとんとん、叩きながら
今日も横断歩道を渡ってゆく

日々の{ルビ道程=みちのり}を歩く
惑い無き後ろ姿は
人混みに吸い込まれ
段 ....
遠藤文学講座の後に、皆で語らう
この店で僕は、受洗を決意した。
この店で僕は、息子の障がいに泣き崩れた。

四ツ谷の地下の珈琲店・エルは
奇遇にも
遠藤先生の命日である、今日
四十五年の ....
白球は時に、燃えている。

ふいに巡ってきた
体調不良選手の、代役出場。

3回表、2アウトランナー2塁のピンチ。
1年中ぱっとしなかった、彼の
守るレフトの後方に
打者の打った白球が ....
丸い月を映す池の、{ルビ水面=みなも}はゆれ  
草の露に宿る月も、風にゆれ   

僕が苦手と思っていた
あの人の瞳の奥にも
もしや
僕に似た心象の水面に、ゆれる

月のひかり  
 ....
2013年・2月に行われた
渋谷Bunkamuraで
美術館の入口に、足を踏み入れ

ぬうと目の前に現れたのは
1760年頃描かれた
白隠禅師の自画像で
ぎょろり開いた目玉は、僕に云う
 ....
或るロシア画家の
画集をぱらぱら、捲っていたら
苦悩する女の肖像画に
薄っすら滲む
イエスの顔があらわれた


神や仏はいつも隠れている
画家の描く、キャンバスに
彫刻家のほる、木の ....
公園広場の人だかりに囲まれて
学ラン姿の少年は、笛を吹く。
指をぴろぴろ躍らせて
黒い瞳は{ルビ魚=うお}のよう。

楽しいメロディ奏でつつ
耳はだんぼに開いてる。
身も心も空っぽにして ....
太陽は常に西の空へと往きますが
この地球上に立っていると
まるで停まっているようです

花はゆっくり開いてゆきますが
開花はまるで、魔法です

孤児を育てる里親さんは、言いました
「親 ....
親父の血管は動脈硬化で、か細くなり
心もとないこれからの日々を思い
深夜にぱっちり目覚めた、僕は
汗を拭って、身を起こす

今頃、隣町の空の下
親父はすやすや寝ているだろうか?
気が気で ....
君はちょっと人より黒目が、大きいね
君はちょっと人より睫毛が、長いよね

今夜も、薄ら目を開いて眠り
夢見る二才の君は
人より染色体が一本多くて
まだ喋らないし、歩かない

ちょっと風 ....
ふだんは優しい女房が
時折、般若の顔になり
言葉の弾丸は
だ・だ・だ・だ・だ
だ・だ・だ・だ・だ
だ・だ・だ・だ・だ
柳のような面影で
げっそりとした
僕の髪を靡かせ
遠い彼方へ通過 ....
それは二度と帰れない季節
それは{ルビ陽炎=かげろう}の向こうの想い出

もう、手の届かない恋があり
これから手を伸ばす、夢があり

{ルビ永遠=とわ}に年齢の無い旅人のまなざしで
今日 ....
遠い夕陽の揺らめく畑で
夫は手にした鍬で土を耕し
赤子をおぶる妻はそこへ
種を蒔く

貧しい日々の暮らしに
俯きあう
ふたりの野良着は
仄かな金に縁取られ

夕陽に瞬く無数の種は
 ....
その人は大きく息をついて、腰を下ろした
――これは、何段あるんですかね…
――二百八十七段です、どちらからですか?
――高知です
――遠いですねぇ…僕は横浜です

傍らに、古びたリュックが ....
{ルビ久遠寺=くおんじ}の山門を潜り
巨きい杉木立の間に敷かれる
荒い石畳の道を抜けて
前方に現れる
天まで続く梯子のような
二百八十七の石段

緑の山の何処からか鳴り響く
{ルビ団扇 ....
風が、頬を撫でていった
仰いだ空を、雲は流れた
この道を往く
我は旅人
風の想いの吹くままに  
ぶわっと窓から風は吹き
カーテンははらり、膨らみ
空気の塊りに
部屋のドアが、開いた

人生のドアを開く
風も
思いがけずに、訪れる  
私の重みで、凹んでいる
タイヤの椅子のブランコが
ぎっしり…ぎしり…と{ルビ軋=きし}んで、ゆれる

軋んで、ゆれていくほどに
ぷらたなすの樹は、詩いだす
ざわつく若葉も、踊りだす

 ....
あなたの手にする
てるみーという不思議な棒は
香の煙をもくもく漂わせ
熱を地肌に{ルビ擦=こす}りつつ
体の痛みを和らげます

私の妻が
顔をしかめた腰痛も
止まらなかった咳さえも
 ....
フィレンツェに
500年間立っている
ダビデ像の目は、睨んでいる

未知なる明日から訪れる
いかなる敵も
この世の暗闇さえも
打ち抜く(時)を待つように

一つの石を、拳に握り。   ....
仕事でヘマをして、凹んで帰った。
さっさと布団を被って、寝た。
早朝にぱっちり目が覚めた。  
おもむろに立ち上がった僕は、外に出た。

西に沈むでっかい満月に
思わず、足を止めた。

 ....
この世の(ふしぎ)を探すのに
遠くを指さしては、いけない。

たとえば風に踊る蝋燭の火が
あなたの横顔を照らす、夜

胸に手をあてるだけで
あなたの(ふしぎ)は湧き出ずる  


 ....
今夜は義父の78歳の、誕生日。

2才の孫を抱っこしてもらい
僕と妻はハッピーバースデーを歌い
熱燗を注いだ{ルビ御猪口=おちょこ}で、乾杯した後
義父は主賓のあいさつ、を始めた。

「 ....
電車を待つ駅のホームで
小さい両手いっぱいに
飴玉をのせ
ほら、とパパに見せる女の子
(夢がたくさんあるんだねぇ…)

改札口を出た脇で
人々の過ぎゆく中に
突っ立って
開いた本とに ....
在りし日の哲学者は、背後を振り返り
あの朧な真理のひかりを、指さしている。

すでに肉体は消えて久しい、彼の
想いを継ぐ者は同じ方角を、指さすだろう。

あまりにも遠く離れる
朧なひかり ....
包丁を、ざっくり押しこんで
西瓜を割る。

無数の黒い種達は
それぞれの姿勢で
つややかに埋まっている。

――どうせぺっぺと吐き棄てられて
  土から芽を出すのでもなかろうに

 ....
服部 剛(1975)
タイトル カテゴリ Point 日付
洗濯日和  自由詩514/10/28 19:58
雨の合唱自由詩614/10/22 23:07
茶碗のゆげ自由詩314/10/22 22:53
夜の来訪者自由詩414/10/22 22:48
盲目のひと自由詩614/10/5 21:42
机上のワインー珈琲店・エルにてー  自由詩514/10/5 21:26
燃える男自由詩214/9/17 20:39
夜の池自由詩514/9/17 20:17
旅人の靴  自由詩314/8/30 20:22
遍在する顔 自由詩314/8/30 20:04
笛を吹くひと  自由詩614/8/23 23:15
地球ノ時間  自由詩11*14/8/14 20:21
形見の杖  自由詩314/8/14 19:51
夢の木自由詩414/8/4 23:56
姉さん女房に捧ぐばらっど自由詩614/8/4 23:46
陽炎の道  自由詩114/8/4 23:19
夕景自由詩614/7/18 23:29
旅人の会話  自由詩214/7/18 23:00
身延山にて自由詩314/7/18 22:29
旅  自由詩514/7/10 18:17
自由詩214/7/10 18:12
ぷらたなすの樹  自由詩614/7/8 21:24
不思議な棒自由詩414/7/8 20:34
ダビデの石自由詩214/6/16 20:22
夜明けの散歩自由詩614/6/16 20:00
瞑想録自由詩414/6/9 20:49
祝い酒の夜  自由詩414/6/9 20:35
子供のマーチ自由詩714/6/3 20:09
哲学者の指自由詩014/6/3 19:50
西瓜の種自由詩714/5/28 21:14

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 
ダウンロード
ダウンロードされるのはこのページの分(「洗濯日和  」から「西瓜の種」まで)だけです。
うまくダウンロードできない場合は Windows:右クリックして保存 Mac:コントロールキー+クリック で保存してください。
0.54sec.