仕事で硬化した私は
社会に消費されて一日を終える
駅からの帰り道
我が家に近づくと
三階の角部屋に灯りがともっている
この部屋こそが妻と子の部屋
この灯りに膨大な愛が集約されている
この ....
積み木を積んでいる君は
ほんとうはいったい何を積んでいるのだ
四角い積み木に円い積み木
赤い積み木に青い積み木
いろいろな積み木をいろいろに積んでいく君は
いったい何を積んでいるのだ

 ....
君は生まれてから一年半、少しずつ表皮を脱ぎながらも、もうろうとした世界の中心できらめく窓を一つも持たなかった。君は窓のない世界で完結しながら、しかし窓は少しずつ成熟を重ね、ついに曙光とともに開いた。君 .... 夜、高台から街のあかりを眺める
一人一人の生活がたくさんの光の粒となって
生命の音を奏でている
このように街が小さな活力の集まりでいっぱいなこと
私はその一つ一つを味わいうれしくなる

朝 ....
一歳半になる娘が
どんどん人間になっていく
言葉を理解し人格を備えていく
この発達を前にして
私は一人慄然とする
生命の恐怖というか
我々人間の仲間としての闖入者
この恐るべ ....
クリスマスの日、私は生業で大きな成果を出したものの、そのストレスと疲労で体調不良に陥っていた。フワフワするようなめまいがして、日常生活にそれほど支障はないものの、極めて不快な日々を送ってい .... 物心つかない君は
まだ産まれていないまぶしい時間を生きている
この時間はまだ世界の胎内にあり
君はこの時間を記憶できない
君の楽しく充実した一日は
光り輝く断片の中に遺失され
君は毎日 ....
散歩をする君は多彩で、私と妻が辿ってきた人生の来歴を一つ一つ口に放り込んでいるかのようだ。君は新しい景物にふれることで心身の底が熱され、ほとんど走るように前進しながら喜びの声を上げる。散歩をする君 .... でたらめで、バラバラで、どこからでも飛んできて、どこへでも飛んでいく、そんな君だったけれど、君を構成する粒子は少しずつ君自身の色を帯びるようになってきた。

めちゃくちゃで、ぐにゃぐに ....
玄関に遺失された小さな靴はその都度捨てられては発見され、ありとあらゆる名前で命名されている。靴の平面はいつでも同じ体温と同じ表情を持っていて、豆粒みたいなまなざしで地面の消毒を繰り返す。混 .... 君は歩くことによって部屋を所有する。歩き始めた君は生まれ育った唯一の部屋から解き放たれ、いまやすべての部屋を歩くことができる。君はついにすべての部屋を所有してしまった。君が発達するごとに未 .... 職場環境が劣悪すぎて、夏のある日不安の発作に襲われた。その後つらい不安がときおりやってきて、胃は締め付けられるよう、理由もなく涙が出てきた。医師からは「不安障害」との診断がおり、仕事を休む .... 雨が繰り返される午前中
合間の曇り空の下で
娘を公園に連れていく
公園で散歩を済ませて
娘を駐車場まで連れてきたそのとき
天高くから降ってくる一瞬があった
この一瞬の中で
父と母と娘 ....
真夏の休日
妻子が実家へと避暑に行った
私は私の家へ一人取り残されて
くっきり一個の憎悪となった
妻子はやさしいかすがい
私を世界につなぎとめてくれていた
妻子が不在の今
私は世界の ....
君が不在のとき
スマホに撮りためた君の写真を見ていた
すると私の心は
君の存在とともに鳴り響くようだった
君は美しい絵画に似ている
君は瀟洒な音楽に似ている
君は心を打つ小説に ....
君は一つの円環を閉じた。満足と倦怠と安らかな眠りとともに、小さな心臓の鼓動の頂をたくさん残して。その一つの円環の中で、君はさまざまに人間だった。常に大地と一体であるがゆえに大地を知らない人間、大地と空 .... 一歳になる君の中には
言葉の胎児が眠っている
まだ器官が発達の途上で
それでもときおり胎動を返す
言葉の胎児がぐんぐん育っている
パパやママのおしゃべり
呼びかける言葉
絵本の読み聞かせ ....
おもちゃで遊んでいる君は
ひよこさんのぬいぐるみに吸い込まれ
同時にひよこさんのぬいぐるみをまっさらに吸い込む
君はもうひよこさんのぬいぐるみそのものだ

ママのおっぱいを飲んでいる君は
 ....
9カ月になった君は人間の芽である。これまで可能性としての種であった君は複雑に発達することによりついに芽として外界の光を吸収し始めた。君の眼はもっとも愛しい人ともっとも恐ろしい人を瞬時に見分ける。君の手 .... 乾燥肌の娘を皮膚科に連れていく
娘はおでこをひっかき血が出ている
父と母と娘と三人で車に乗って
これが家族だ、と
父は急に気づいてしまう
三人の間に緊密な連携があって
三人の間に消すことの ....
今日君の雛人形が届いた
産まれて間もないころ
まだかすかにしか存在していなかった君が
日々成長することで存在の濃度を増し
この初節句でいよいよ確実に存在する
気体から流体へ
流 ....
降り積もる雪の
微細な分布に亀裂を走らせて
わが血族はうなり声をあげている
閉じてゆく都市の
活発な経済に喜びの舌を挿し込み
わが血族はいっそう血の温度を上げる
子が生まれることで
 ....
6カ月になるわが子は驚異であり脅威である。わが子が自身へと生み出したもの、わが子が両親へと生み出したもの、わが子が彼方へと生み出したもの。わが子は常にほとばしっている、この親密な家庭へとほとばしってい .... 無邪気にはしゃいでいる娘のそばで
妻がそっと涙をこぼしている
そんな絵画が脳に焼き付いた
仕事から帰ってきたら
妻が憔悴した面持ちで
今日は体調が悪いのと
そう語った瞬間
私の中に描かれ ....
乳児のわが子と遊んでいて
腹の底からわが子に笑いかける
するとわが子は
ひらひら笑って返す
妻がわが子を膝に抱きながら
向かい合わせで笑いかける
するとわが子は
くるくる笑って返す
仕 ....
平凡さは記念碑として過去に埋没し、今や非凡さが林立する群雄割拠の時代だ。そのなかでルネサンス、かつての平凡さを生きる人は今やとりわけ非凡な人であり、人生を高速で泳ぎ渡らなければ自らを生み出せない。零歳 .... 子が生まれて4カ月になる
育児はこれまでも長かったしこれからも長いだろう
一つの生殖はこんなにも長期に及ぶ
出産とは瞬間かもしれない
だが親になることは長期に及ぶ意識の問題で
さらに生殖は子 ....
君は世界がポジティブでないと
我慢がならない
好きな絵本に
好きな音楽
好きなパパ・ママ
好きなおっぱい
好きが周りにいっぱいでないと
激しく泣いてしまうんだ
君は世界がポジティブであ ....
小さな君が笑うと
その笑顔にみんなは恋をする
君が笑うときその笑顔は
すべての古いものとは異なり全く新しく
君はそのたびに再び誕生する
小さな君はまだ何も知らないから
かえってすべてを知り ....
私は父である、という定義がむなしくこだまする。名前はまだない、と途端に心が大声で叫ぶ。私は父である、ゆえにこれまで子の妊娠、出生、生育に一喜一憂しながら螺旋階段を登りつめた。後戻りができず強い太陽が照 ....
葉leaf(914)
タイトル カテゴリ Point 日付
窓の灯自由詩323/4/3 3:52
積み木自由詩223/3/5 3:48
照応自由詩023/2/26 6:44
あかり自由詩023/2/18 4:25
恐怖自由詩2+23/1/15 6:03
クリスマスプレゼント自由詩322/12/27 4:20
記憶自由詩222/12/7 4:00
食べていく自由詩222/10/10 6:18
人生が始まる自由詩122/9/25 17:26
海へ自由詩222/9/3 8:46
歩き始めた君へ自由詩222/8/20 10:08
自由詩022/8/14 3:34
降ってくるもの自由詩122/7/16 12:10
一個の憎悪自由詩022/7/2 17:23
共有自由詩122/6/24 3:47
一歳自由詩022/6/6 5:21
言葉の胎児自由詩222/5/25 5:45
憑依自由詩022/5/25 5:44
9カ月自由詩122/3/3 5:48
家族を作成する自由詩222/2/6 5:44
初節句自由詩122/2/6 5:42
血族自由詩022/1/3 5:53
6カ月自由詩121/12/13 5:12
母子像自由詩121/11/17 7:12
照応自由詩121/11/17 7:09
零歳児とともに自由詩021/10/16 6:01
生殖自由詩121/10/1 4:55
ポジティブ自由詩021/9/5 5:31
新しい誕生自由詩121/8/8 13:49
パタニティ自由詩021/7/13 10:21

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