誰の号令だろうか
風景が停止したり開始したりを繰り返している
誰の合図だろうか
些細な感情の波に気付いたり気づかなかったり
社会的には「休暇」と名指されるこの期間
実際は「休暇」 ....
ここで石を降ろせ
お前の背負っている石は
他界への動線に満ちている
人間のつくった組織は
あかるい論理とうつくしい体系を
表皮まで張り巡らせているはずだが
その組織は必然のよう ....
           ――D.K.へ

あなたは穏やかな光の輪を、都市の人々の瞳の裏側から見つけ出しては、一つ一つ連ねて一冊の純粋な本を作った。始まりも終わりもない劇のクライマックスで、錯綜し ....
硬い殻の中に無理やり閉じ込められ
手も足も出せず
約束も果たせない

知らないうちに
他者の無関心による距離に埋もれ
書籍から著者の血液を大量に浴びた

俄かに近い人のまな ....
人の輪郭ばかりがまばゆく降り積もり
忘却される往還は歌として刻み込まれて
歌は正確に人のさざ波を導く
正しさに先立つ正しさは愛欲に似て
幾つもの河を集めては飛び立たせる
人生がすべて ....
こんな暑さを生み出すなんて
太陽はとんでもない偽物だ
それだけではなく
空も海もすべて偽物で
言うまでもなく
実は私も偽者である
では本物は一体どこに?
偽者の私の本物はどこ ....
陽射しが強くこの地方を焼き、蝉の声が激しく響いている夏のある日、実家の旧家の建屋の中で姪の一歳の誕生日パーティを開いた。かつては無垢であった姪も、繊細な感情を抱くようになり、羞恥や恐怖や興 .... 季節は停まったままなのに
何かの遷移があったかのように
すべてが熱にうなされ
憂鬱の涙が豪雨として流れる
世界のどこかで木の葉が青らんだ
それだけの微細な亀裂が
瞬く間に感染し ....
 詩もまたコミュニケーションの一種である。確かに作者の意図が読者に正確に伝わらないこともあるだろうし、そもそも作者は伝達を意図していないかもしれない。だが、詩を書く者がいて、読む者がいる。 .... 労働者は金属でできている
炎のような金属でできている
青くまっすぐに静かに燃えている
いつまでも消えない炎の金属だ

労働者は工場で製品を作る
すると一つ一つの製品が
そのま ....
夏の暑い日に網戸にしていると
室内で流しているCDの音楽と
外で働いている工事や車の物音が
互に覆い合ってくるので
どちらがほんとうの歌なのか分からなくなる

余暇のために目的 ....
この選ばれた正午に
光と熱は直角に世界を満たす
一切のものは燃え上がり
上昇する炎で太陽から受精する
世界のそれぞれの部屋に
まどろみは垂直に立ち
世界のそれぞれの通路に
歓声は ....
死にたい、という発語が季節の初めての落葉のように池に浮かんだ。毎日ひげを剃ってはコーヒーを飲んでスーツを着ていつもの道を出勤する、そんな生の周到な殻が静かに割れたかのように。僕は部屋で本やCDが平積み .... 旅立つ日はついに来なかった
お前はいつでも準備はできていたのに
旅立つ夢を抱きながら
こんなにもボロボロになってしまった
My Bicycle
チェーンは錆びてあちこち傷だらけ
 ....
俺とお前だけをめぐる静かな風に
何も唱えるものを持ち合わせずに
鮮やかな紅葉の幻想に乗って
お前そのものが伝わってくる
交わす言葉はすべて常識的だが
本当の言葉は沈黙して
かわ ....
服から体を脱いで
くるくる丸めて
ひょいとお湯の中へ収める
お湯は贅肉と置き換わり
いつまでも響いている
火に爆ぜる木の枝のように
鳴り始めた雷のように
響きが流れ落ちて浴槽には ....
仕事上のトラブルで疲弊した私は、医者の診断書をもらって長めの休暇をとった。しがらみの藪の中で沢山の蔓を引きちぎって、ようやく手にした明るい広場のような休暇だった。この明るい広場には何から何まで .... 体だけではない
体をめぐる血液も
体を覆う衣服も
方向から自由になったのだ
方向でないもの
例えば香りや手触りのようなもの
途端に私は対象になり
香りを発し誰かに触れられるも ....
人が優しくあるためには
厳しさや残酷さに基づかねばならない
人が優しくあり続けるためには
きわめて残酷な決意が必要だから

僕は毎朝へヴィメタを聴いては
厳しい絶叫により優しさ ....
洪水が激しく流れたが
それに先立って激しく流れた風景の束があった
音響が激しく鳴り響いたが
それに先立って激しく鳴り響いた光の板があった
先立つ抽象的な激流によって
地上の生物の ....
社会人になったとき、私の目は少年のような熱を帯びていたに違いない。学者になる夢が壊れたり、大失恋したり、世間の醜さに絶望したり、私のそれまでの人生には挫折の爪痕ばかりがくっきり残っていた。 .... こんな潔癖に晴れた朝でも
新しいものなど何もないのだ
木にしても空にしても光にしても
すべては太古からの使い回し
真に新しいものなど何もなく
きわめて古いものが形を変え
手を変 ....
時計の針が壊れた残骸のある
人気のない広場で口笛を吹いている
早朝の光に満ちているが
もはや早朝といった時間を超えている
みな、何かを確かめようと躍起になっている
私は既に確かめ ....
人間としての純粋さは
美しすぎる少年のように夭折した
私はそれを補うものとして
社会という書物を解読する意欲に満ちて
純粋なサラリーマンになった
だが純粋なサラリーマンはあっけな ....
人生の沸騰する地点に足を踏み込むと
風景は次々と変転する映像となり
社会の新しい通路がどんどん扉を開き始める
人生は貪欲な海のように
人から物から制度から巻き込んでいき
至る所が ....
雨粒が小さな花を咲かせては
微かな匂いとともに散っていく
この瞬時の花々は
大地のてのひらに握られ
次々と貴重な命を失っていく
これは供犠であろう
あるいは祭儀であろう
今日 ....
どんなに醜い人でも
人を愛することができる
愛することに資格は要らない
愛は誰をも美しくする

どんなに迫害を受けている人でも
人を愛することができる
傷だらけの愛には
傷 ....
生まれてくることを
たくさんの罪行を
積み重ねていくことを
風の広がりそのものである
行政官にゆるされたときから
私も同じ分だけ他人の罪行を
ゆるすよう定められていた
私は未 ....
世界中の海から集められた
追いきれない広さと迫りきれない深さ
あるいは群れをなす魚の一匹が発した
どこまでも届く一瞬の輝き
そういうものが
個人のはるか遠くまで開け放たれた
借 ....
重たくてでこぼこだらけの
大きな石を呑み込んだ
トラウマは
呑み込んでしまえ
噛み砕いてしまえ
胃腸の中できれいに消化されて
跡形もなく消え去ればいい

確かに私は被害者で ....
葉leaf(914)
タイトル カテゴリ Point 日付
夏澄自由詩315/7/26 6:36
暴力自由詩415/7/25 18:47
報告自由詩215/7/24 8:10
億劫自由詩315/7/23 14:28
労働自由詩615/7/22 10:38
夏日自由詩415/7/21 18:25
旧家自由詩115/7/20 16:26
自由詩415/7/20 8:42
白鳥央堂詩集『晴れる空よりもうつくしいもの』について散文(批評 ...215/7/19 10:10
労働者自由詩215/7/17 4:17
sing自由詩115/7/14 14:17
世界自由詩215/7/13 7:51
希死自由詩215/7/11 16:39
My Bicycle自由詩215/7/10 6:30
自由詩315/7/9 8:54
温泉自由詩315/7/8 12:07
額縁自由詩1+15/7/7 8:55
休養自由詩415/7/6 15:53
ハードロック自由詩1+15/7/6 6:19
大洪水のあと自由詩315/7/4 12:30
大きな世界自由詩115/7/3 8:22
新しさ自由詩215/6/28 17:22
時計自由詩415/6/27 7:25
かなしみ自由詩515/6/25 6:01
自由詩115/6/23 6:21
雨粒自由詩415/6/21 6:40
自由詩315/6/20 8:21
ゆるし自由詩315/6/18 6:59
絶望自由詩415/6/17 5:07
克己の朝自由詩115/6/16 6:42

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