大震災と原発事故で被害を受けた土地に赴任して、日々復興の仕事をしながらもう一年になる。右も左もわからないうちから多くの仕事を任されてなかなか苦労した。今では大抵の仕事に慣れてきて、来年度に向け .... 自ら水晶の橋を作り
強度を改めながら渡ってきた人よ
あなたは無数の種だった
あなたから芽生えた茎をたどって
農村の体躯は静かに満ちていった
水路を設計することは
あなたの現在に次々と構 ....
人間を開けるための鍵は
どこにも売っていない
水道管から漏れ出た水とともに流れ出すように
都市の末端に転がっている
人間を鍵で開けると
中に隠されているものは
小さな地球
人間は ....
仕事で理不尽な要求をしつこくされて
ついつい怒って厳しい言葉を投げかける
相手が帰った後に残るいやなかなしさ
こんな俗世にまみれて
くだらないことで精神をすり減らして
僕ら風に巻かれる枯れ葉 ....
人のいない真昼
都市は連帯に悶えていて
都市の配管の末に一滴の誓いが芽生える
真昼の誓いは沙漠へと向かい
死の永続性を砂に誓う

涸れ果てた湖を
野獣の群れが飛び交っていく
無限に ....
切り刻まれた欲望をあとに
街のしたたる灯りの下で
男はコートの汚れをはらう
生まれ育ったこの街で
いま夜の表面に佇みながらも
男は限りない遠さの奥に囚われている
通り過ぎる日々に受 ....
太陽が光をあつめている
地上のあらゆる物体からあつめた光で
あんなにもまぶしく宇宙で輝いている
やさしいひとが
多くのやさしさを受けて
やさしくいられるように
うつくしいひとが
多くのう ....
 私にとって本を読むことと文章を書き表すことは、人生にとって不可欠のものとなっている。人生自体が読書や表現を前提としていて、呼吸や食事をするように私は言葉を吸収し吐き出す。読書と表現は、養分と活動であ .... 2月の頭、年度の終わりごろ、私はインフルエンザにかかって休養しながら窓の外を眺めていた。窓の外は吹雪であり、冷たい大気の中、強い風に押された雪片たちが絡まり合っていた。この雪片たちのように私たちは、冷 ....                  ――F.T.へ

君はとても複雑な静止画の連なりだった。複雑な君を愛する人は、きっともっと複雑な、例えば自然美の移ろいのような人なのだろう。君たちが複雑さを映 ....
本質的で普遍的な或るものが
繊細に欠落していた
関係性の網を裁ち落として
神聖に独立した君のてのひらに
降りてくる怒りの数は限りない
裏切りは雨滴のように
永遠に降りやまず体を濡ら ....
やさしさは
限りなく汚れた
命の流れの中枢で
まっすぐ彼方へと向かう
限りなく清潔な
祈りのまばゆいかたち

やさしさは
常に虐殺されている
それでも残り続ける
命を超えたもの
 ....
冬の路上を渉猟しながら
過去とはじめましての握手をする
今日初めて自分の過去と出会って
すぐさま慌てて別れたのだ
外気と同質の寒さを体内に抱えているから
私の中に冬は柔らかく広がって ....
仕事で運転しながら
軽く空を、雲を見た
雲が白く輝いていた

かなしみを集めて
より高次のかなしみを
作り出したい
そう思った
人の少ない朝のオフィスでは
電子機器たちが夜を黙想している
バインダーは窓ガラスに這い
闇を光へと代謝している
夜と朝の両方と手を携えて
迫ってくる名もない者たちのために
僕は一本 ....
始まりと終わりがきしみ合う早朝
雲は空に予言を描いた
行き交う自動車たちは
始まりと終わりの狭間を
どこまでも突き進んでいく
地上で最初の花が散った
地上で最後の花が開いた
人々 ....
ことばが語られているとき
ことばは消えている
そこにあるのは微笑みや苦笑い
ことばが刻まれるとき
ことばはこぼれ落ちていく
そこに残るのは物質だけ
ことばが叫ばれるとき
ことばは ....
大樹が葉を落とした夜に
大地は不在だった
葉は一斉に宇宙の広がりの彼方へ
解き放たれていった
神が啓示を下した朝に
人間は不在だった
鉱物たちは啓示に共鳴し
正しい解釈で構造を置 ....
闇が壊れている
このくぼんだ歴史の廃墟に
加えるべき進化などなく
終焉が今まさに始まった
冷たい死に向かう森羅万象の大行進
暫定的な真理が次々と自らを暴く
根拠もなく自由でもなく
ただ人 ....
君は生まれた
冷たい稲妻がひらめいた
君は駆け巡った
硬い稲妻がひらめいた
君は強く吠えた
優しい稲妻がひらめいた
君はたくさんの風景を記憶した
温かい稲妻がひらめいた
君は人と戯れた ....
帰るべき土地などあったのだろうか
求めるべき栄光などあったのだろうか
いま一年が黒い太陽のように
水平線に沈もうとしている
呼び止める声など一つもないのだから
黒い太陽とともに沈んで ....
生活のどんな些細な道行きにも
液状化した死者の本質が流れている
俗なる生活が聖なる死者と
次元を超えて互いを平均しようとする
人は墓参や供養という形で
聖と俗との架け橋を往来する
人はまた ....
社会人3年目の年の瀬が近づいていた。社会人になりたての頃の甘い夢や希望はもはや失われ、その代わりにきわめて冷徹な現実認識を獲得し、日々新しい出来事に対処していくスキルの獲得に追われた。目標や将来が具体 .... 社会人が仕事をする舞台では
みなが仮面をかぶって役割を演じていた
そこでは魔女狩りが行われ
決闘や縄張り争いが絶えず
仕事の達成と失敗があり
虚構の連帯が結ばれる
自宅に帰り仮面と衣装 ....
新しい赴任地で年末を迎えた。慌ただしく時は流れ、振り返れば日々の業務で毎日何かを学習していった。昨年度、私はトラブルで外傷を得たが、その外傷もいつの間にか癒えてしまい、ただ日々の忙しさの中に何もかもと .... 墓碑銘として刻む言葉は
「愛される資格も適格もなかった」
そうしようと思った
深夜のバスの暗いライトの下で

死にたいとは思わなかった
逆に強烈に生きたいと思った
だが生きたいという欲望 ....
駅のホームには
ひとつの世界が埋葬されている
それゆえに駅のホームは
世界の墓地であり霊場である
だから今日もそこには
忘れられた眼の光や
捨てられた愛の閃きなど
あらゆる感傷的なも ....
 若いころの孤独というものはナルシシズムと不可分である。若いころ、人はよく孤独に陶酔する。自分が孤独であることに酔って、孤独である自分がかっこいいと思う。そのような孤独な陶酔する主体が書いた詩とい .... 時間が感覚している
巨大なてのひらが極めて薄くなり
眼を開く刻限を探っている
仏は舞い散っては脱皮して
柱を支える土壌に滲み込んでいく
空間が覚醒している
門の内と外は色濃く混じり合って
 ....
 私たちにとって目や耳は透明である。視覚情報や聴覚情報は記号作用によりすみやかに意味に変換されるし、そこに世界は現前していても、その世界を映し出している目や耳自体は無視されてしまう。私たちはあたかも目 ....
葉leaf(914)
タイトル カテゴリ Point 日付
土地自由詩417/3/10 2:42
定年退職自由詩417/3/7 4:19
自由詩217/2/25 14:22
枯れ葉自由詩017/2/22 2:07
誓い自由詩817/2/13 5:15
街の灯り自由詩417/2/6 4:10
太陽自由詩017/2/4 9:03
読書と表現散文(批評 ...117/2/3 12:39
原因自由詩117/2/2 18:04
祝婚歌自由詩317/1/31 5:14
不良少年自由詩217/1/28 11:04
やさしさ自由詩117/1/27 11:32
冬のうた自由詩217/1/22 17:38
情景自由詩117/1/18 2:51
朝のオフィス自由詩017/1/15 14:36
朝景自由詩617/1/13 4:02
ことば自由詩117/1/7 3:33
不在自由詩417/1/3 7:07
年明け自由詩117/1/1 8:26
稲妻自由詩116/12/30 13:00
年末自由詩216/12/29 15:38
生活自由詩316/12/25 11:08
文学自由詩116/12/25 11:06
舞台自由詩516/12/22 4:39
とけていく自由詩016/12/17 2:09
何もない自由詩316/12/8 3:41
駅のホーム自由詩416/12/3 5:36
孤独の変質散文(批評 ...516/11/20 14:38
寺院自由詩416/11/20 13:19
石田瑞穂詩集『耳の笹舟』について自由詩116/11/9 12:04

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