照応
葉leaf

君は生まれてから一年半、少しずつ表皮を脱ぎながらも、もうろうとした世界の中心できらめく窓を一つも持たなかった。君は窓のない世界で完結しながら、しかし窓は少しずつ成熟を重ね、ついに曙光とともに開いた。君は窓のそばへ歩み寄ると、反射的に私たちに呼びかけた。窓は呼ぶための窓であり、呼び声を受け取るための窓でもある。

君は視線で呼びかけ、声で呼びかけ、しぐさで呼びかけ、私たちが応えるのを静かに待つ。私たちもまた視線を返し、行為で返し、あいさつを返し、窓を通した呼応はじかに接触する以上の快楽を君に与えるようだ。君は始まりの窓を開いた。君はこれからも人生において次々と窓を開けていくであろう。そのいちばん最初でいちばん開けがたい窓を君はいみじくも開いたのだった。

手をタッチするとき、君の神経は確かに指の先端で息づいている。絵本に出てくる動物を指さすとき、君の神経は私たちの声を待つ受容体だ。私たちが絵本を持ってくるように言うと、君は全神経を駆動して絵本の方へ向かう。かつてきみはほとんど肉として生まれてきたが、今や君は肉の上に神経を張り巡らせている。

君の開いた窓を通して、君の神経と私たちの神経は交じり合う。君は私たちの鏡としてはあまりにも曇っている。だが鏡として私たちを映し始め、咀嚼し始めた。君と私たちは呼びあい、照らしあい、その呼応と照応の営みに鋭い快楽が潜んでいる。窓にはこちら側とあちら側がある。君はこれからたくさんのあちら側に出会っていく。そのたびに窓を発見し窓を開いていくということ。そこに冷厳な快楽の鉱脈がある。


自由詩 照応 Copyright 葉leaf 2023-02-26 06:44:31
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