歩き始めた君へ
葉leaf




君は歩くことによって部屋を所有する。歩き始めた君は生まれ育った唯一の部屋から解き放たれ、いまやすべての部屋を歩くことができる。君はついにすべての部屋を所有してしまった。君が発達するごとに未来は大きく広がっていく。君が空間の所有を始めることで、君の未来はあふれんばかりに増殖した。君はもはや世界のすべての部屋を所有することが可能だ。

君は常に君からあふれ出ている。君は常に君以上だ。ただ廊下を歩くだけでも、それ以上の存在と運動を世界に投げ出している。生れ落ちるという劇的なクライマックスをいつまでもその身体にまとわせながら、君は今日も生れ落ちている。私たち大人はもはや自分以下の存在でしかない。社会によって規定された存在の外見を保つので精一杯で、内実はその外見以下でしかない。

君はこれから世界のすべてを所有していく。あるいは所有以上に深く世界に分け入っていく。君は君からあふれる余剰にこそ本体を持っていて、その余剰により新しいものを創り上げていくだろう。所有から創造へ、歩行から操作へ。君の手はとても器用におもちゃを操作することができる。君の手はおもちゃから製品へ、創作物へと移っていく。世界の所有を始めた君は、その所有した世界に対して変更を加えていく、つまり新しい世界を創造するだろう。


自由詩 歩き始めた君へ Copyright 葉leaf 2022-08-20 10:08:00
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