クリスマスプレゼント
葉leaf




クリスマスの日、私は生業で大きな成果を出したものの、そのストレスと疲労で体調不良に陥っていた。フワフワするようなめまいがして、日常生活にそれほど支障はないものの、極めて不快な日々を送っていた。私は世間的な成功の代償として健康を失っていた。世界とはこのように贈与でできている。何かを与えられれば何かを奪われる。
妻は月のものがひどいときは実家の風呂に入りに行く。クリスマスの日も妻は子を連れて実家に行った。私はそのはざまとなった時間に近くのラーメン屋に行ってラーメンを注文した。注文してラーメン屋の内装を見渡していると、私はある変化に気付いた。私の呼吸がいつもと違っていたのだ。
これまで私の呼吸は硬直し、不純で、平板で、膠着していた。日々の仕事と育児、そして趣味もまた私の呼吸をこわばらせていた。そういった生活の忙しさにより、いつしか私は自由な呼吸をすることを忘れていたのだ。このクリスマスの日、仕事からも育児からも趣味からも解放された私は、まったく自由で純粋で柔軟で創造的な呼吸をしていた。この呼吸こそが私には必要だったのだ。
妻からの最高のクリスマスプレゼントだった。


自由詩 クリスマスプレゼント Copyright 葉leaf 2022-12-27 04:20:13
notebook Home 戻る  過去 未来