私という不在は
どこまでも低みを目指している
熱に満ちた小さな楔です
歴史の大きな体躯のうちへ
群衆の相対化の波のうちへ
潜り込んで埋もれていく
人の目も陽射しも届かない
慢 ....
雨の朝、地図は濡れて滲んでしまった。だが世界は何よりも詳細な地図。経路を一つずつ抜き取っては、オブジェを作り上げる。今度の地図は庭にしつらえられたオブジェであり、どんな雨が降っても壊れない .... 生きづらさが聳え立っている
直方体の連なりがひたすら重い
それは取引先のビルだった
生きづらさがメールの着信を知らせる
たくさんのウィンドウを処理しきれない
それは自分の職場のパ ....
電車がぐいぐい風景を牽引していく
人生のように目まぐるしく暴力的な窓外の風景
自分の人生でももはや傍観者だ
たくさんのことを諦めてしまった
今ドアをこじ開けて
窓外の暴力的な推移 ....
植物は感情を放っている
言葉でも意思でもなく
多様な感情を放っては
私たちの感情を直接打ち鳴らすのだ
ただ生きるという基本的な感情から
日を受ける喜び
雨を受ける憂鬱まで
私 ....
秋の日
歴史上初めて空を見上げた人類のように
清々しい気持ちで空を見上げる
できることなら
人類の歴史を全てやり直したい
毛筆で描かれたかのような雲が見え
空は余りに明るいので
 ....
存在するということ
そこに立つということ
それは紛れもなく敵であるということ
私は隅々まで敵を探し出す
現象の狭間に隠れた見えない真理も
みんな敵なのだから
私は何も信じなくて ....
秋は漂うもの
木陰の道を蛇行し地の上を這いときには上空を舞う
風とは全く無関係に辺り一面を漂っていて
思いがけない屈折や飛躍をする
動物や植物や人間に時折吸い込まれては
全く無関 ....
深夜、遠くから爆発音が聞こえる
それは濃すぎて圧力が高まった闇の暴発
あるいは居場所を失った光の散華
あるいは人間の諦念が投擲した幾つもの痛みや欲望
深夜、もはや爆発音は聞こえない ....
この静まった秋の日に
一枚の紙を机の上に広げれば
過ぎ去った春と夏
来るべき冬とが集まって
一年間の物語が告白され
あなたに宛てられた
自然界からの手紙が
書き落とされるだろう
 ....
虫の声が逆さまに鳴いている
逆さまの虫の声はどこか自壊の音のようで
奇妙で遠い自壊が草むらで起こっている

太陽が逆さまに輝いている
逆さまの太陽は少し気が狂っていて
一面の大 ....
急に進入禁止になった
今まで自由に通行していた通路に
身体は次々と進入禁止の立札を立て
私は狭められた自由に対抗すべき権限を持たず
身体が君臨し支配し禁止する
私は身体の王国の臣 ....
秋の初め、台風の影響により大気は急激に冷え、雨が降り続いた。激しくもなく、ただ訥々と雨は屋根や樹の葉をぬらしていった。私はこの冷雨にようやく安心を感じていた。
私は仕事で余計なトラブルに ....
金木犀が静かに燈る
花びら一枚一枚が
一つずつ詩を破壊しながら
自らを誰にも捧げず
何物をも説明しない
人間の意味づけを
ことごとく拒絶することから
あの橙色が生まれているのだ
 ....
 世の中には「詩人」という肩書がある。だが、詩を書いていても自ら「詩人」を名乗ることに抵抗を持っている人はたくさんいる。では「詩人」を自称することの何が問題なのか。
 肩書というものは社会的 ....
ただ電車が通り過ぎていくのを
意味もなく微笑んで見送った

誰に語りかける言葉もなかった
本当の言葉など要らず
偽物の言葉で構わないのに
偽物の言葉すら持ち合わせていない
も ....
歩いてくる人の音楽
マンションの音楽
電車の音楽
実際に空気を振動させる音とは別の
抽象的な音楽が流れる

抽象的な音楽は
視覚的イメージによって構築される
細胞のような構 ....
母校へと続く道を
十数年ぶりに歩いていると
風景に込められた無量の意味が
過ぎ去った感覚を再び過ぎ去らせて
私の身は引き裂かれ
その間隙を過去の雨だれが舐めていく

緑地公園をさまよう私 ....
目に映る風景と
もはや言葉を交換できない
私は風景から情緒を受け取らず
風景も私によって何も証明されない
風景は完膚なきまで破壊されていて
私の視線もその破壊を継続するのみだ
 ....
叫び声に満ちた夜だ
すべての距離が叫んでいる
だがこの叫びは全て
私自身の黙された叫びだった
闇がつぶれている
渦を巻いている
夜の風景ばかりが
激しく身をよじるが
私はも ....
墓参りに出かけて
墓石の前にたたずむと
墓石に映った自分の姿が見える
墓石に映った世界はあの世のようで
私はあの世からこちらを見返している
あの世は墓石の暗い色で覆われ
いつま ....
仕事帰りにめまいがして
錠剤を呑む
俺はもう俺ではなくなった
俺から仕事を抜き取ったら何も残らない
俺はもう何者でもなく

こんな簡単な仕事ですら
調子を崩してしまうなんて
 ....
吹く風に涼しさが混じり、蝉の死骸は夥しく落ちた。夏はまさに終わろうとしていた。だが今年の夏はただの夏ではなかった。私は勤めている会社を辞めるかどうかの瀬戸際に立たされ、自らあれこれ相談や交 .... 脱皮の夜
徘徊する動物たちは
一斉に時間を蒸発させて
つややかな静物となる
脱皮は内部より始まり
うごめく老廃物が
細胞の隙間を練り歩き
外気に凍らされて
喜悦の皮膚となる ....
論理に頼っているので詩人失格
物語を好むので詩人失格
ほんとうのことばかり言うので詩人失格
人生にこだわり過ぎるので詩人失格
現実が見えすぎるので詩人失格
働いているので詩人失格 ....
初めは意地悪されただけ
仕返ししたら
少しだけ体が膨らんだ

今度はひどい目にあった
怒りにまかせて復讐したら
みるみるうちに体は大きくなった

大きくなった体は
他人の ....
見かけはふつう
少し美しいくらい

性格もふつう
少しやさしすぎるくらい

それなのに
嫌われやすく
面倒に巻き込まれやすく
しばしば傷つけられてしまう

そんなあな ....
一冊の本を収めるためには
大きな空間が割かれなければならない
一冊の抱懐する情報の連なりは
本そのものの行為の空間として
潤沢な広がりを要求するから
すべての本の必要とする空間を ....
俺が死ぬときは
ただでは死なない
人間のうっとうしさ
いやらしさ
めんどくささ
何もかも抱き締めて
遠くを見晴るかした先に
人間との和解があればいい

俺が死ぬときは
 ....
真夏の炎天下に自転車をこぐ
すべては明るすぎて却って曖昧に
すべては熱すぎて却って柔弱に
こんな快晴の日だが
ひたすら過去の雨が私を打つ
水ですらなく重さもない
透明な過去の雨 ....
葉leaf(914)
タイトル カテゴリ Point 日付
まえがき自由詩415/9/26 6:29
雨の朝自由詩315/9/25 6:19
生きづらさ自由詩115/9/23 17:23
秋の旅自由詩115/9/23 7:24
植物自由詩115/9/21 13:25
自由詩115/9/21 4:06
自由詩315/9/19 6:22
秋に思う自由詩415/9/17 5:30
深夜自由詩215/9/16 3:59
秋の手紙自由詩415/9/13 9:21
逆さま自由詩315/9/12 8:04
自由詩115/9/11 5:30
冷雨自由詩115/9/9 5:56
金木犀自由詩315/9/6 17:14
「詩人」という肩書について散文(批評 ...3+15/9/6 9:30
廃人の唄自由詩615/9/4 3:57
抽象的な音楽自由詩415/9/2 4:59
母校自由詩415/9/1 5:49
帰り途自由詩215/8/30 5:01
ゆがんだ夜自由詩315/8/25 6:34
自由詩415/8/22 14:25
錠剤自由詩015/8/21 4:02
夏の終わり自由詩315/8/15 15:07
喜び自由詩315/8/11 6:15
詩人失格自由詩415/8/8 11:09
台風自由詩215/8/5 16:03
聖性自由詩415/8/4 15:12
図書館自由詩415/8/1 15:47
俺が死ぬときは自由詩315/7/30 9:20
過去の雨自由詩515/7/26 14:17

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