石がある
ずっしりと重い石だ
この重さは降り注いだかなしみであり
煮えたぎった苦痛であり
裏切りや赦しによって凝集されたものだ
石に尊厳はない
尊厳は火の属性だから
石に孤独はな ....
都市がその分厚い装甲をこっそり脱いで
機能のための回路が途切れるやさしさだけの広がり
人もまた分厚い甲冑を脱いで
失われた自然の脈動の中へ包まれていく
公園は人が空間を食べる場所
疲 ....
出発は時刻を持たない
ただ消長する獣の声が遠くに響くのみだ
石たちは獣とともに鳴動する
その冷たいおもてに私はまなざしを遺していく

かつて出発とは地上から月へ向かうものだった
だ ....
 詩人が死ぬということはどういうことであろうか。2011年に、同人誌「kader0d」を一緒に立ち上げた友人である伊達風人が亡くなった。33歳だった。彼の詩は『風の詩音』という詩集にまとめられて、20 .... 病を得て復職してから私は長いトンネルをくぐってようやく陽の当たる場所へと出てきた。だが、いくら太陽が照っていても私は世界から敵意を感じ続けた。どうも人々は以前とは違った態度をとっているかのよう .... ある日一つの愚かさが生まれて、
流言蜚語のようにばらばらと伝染していきました、
でも人生は無窮の海よりも美しくて、
人生を形容することが許されているのは「美しい」の一語のみです、
人生は形 ....
道路はよこたわっているのではない
限りなく渦を巻いては
自動車たちを加速させている
建築は直立しているのではない
限りなく燃え上がっては
過ぎる風を減速させている
世界の心臓は血液 ....
眠りはいずれ海に至る山奥の渓流
眠りが海に至る直前に人は目を覚ます
人は覚醒の光の中におぼれ
眠りは海の中に混じる
眠りは海の中で最も深い眠り
死の眠りとなる
人が眠りとともに ....
快晴の空に
描きたいことは尽くせず
快晴の空から
雨でも雪でもない
何かが降って来ることを期する
快晴の空は
毛布のように柔らかく
どんな硬いものでも包み込む
快晴の空は
分 ....
珈琲は人を眠りに導く
人は冴えた頭脳と安定した精神で
目覚めながら眠るのだ
眠りのような精神の治癒と
眠りのような身体のほぐれと
人は明晰に読書しながら眠る
人は勤勉に労働しながら眠る ....
病を得て復職してからも、私はしばらく長いトンネルの中を歩き続けた。私の関心は己の傷ばかりに集中して、社会や人間に対する根本的な不信がぬぐえなかった。些細なことで傷ついては暗澹たる気持ちになり、 .... 木が泣いている
闇そのものとなって
迷い果てて尽きている
何かが内部で生まれては死んでいる
その呼吸の音ばかり際立って

囲んでくる無数の球体には
どろどろした風景が墨で描かれている ....
愛をください、と果てしない緑の淵からため息がこぼれた。誰に聞かせるつもりもなく、ただ朝露の澄んだ輝きの中に溶けて砕けていけばよかった。崩れた愛でも壊れた愛でも屈折した愛でも、それが愛である限りここに定 .... 無為が高貴に輝く真昼
私も一つの無為となって
一つの細胞も残さず輝いていこう
無為が潤沢に波打つ真昼
私も無為を周囲に放ち
虚無をどこまでも伝播していこう
無為はどこからともなく降って ....
美術館の展示物は
来館者のまなざしを食べる
じっくり詳細に見る来館者のまなざしを
ふんだんに咀嚼し飲み込んで
まなざしの味を吟味する
一般者の軽いまなざしは
スナック菓子のよう
 ....
いま、確かにたくさん詩が降ってきた
それこそ豪雨のように
詩は辺り一面を打ちのめすと静かに蒸発し
跡形もなく消え去り
私はそれをただ茫然と見守った
だが確かに、今夥しい数の詩が降って ....


ああ、遠いあの日のように烈しい夏がほしい。少くともあの日だけは夏だったのだ。雑草の生い茂っている崖っぷちの小道を、私は駈けていた。谷側の斜面には血のように赤い彼岸花が咲き、山側には雨のように ....
トラブルとは人が知らぬ間に
執務室の自分の椅子に腰かけるように
社会が血を滴らせて巣を作る場所に
何の予測もなく腰かけてしまうこと
そして社会の雛たちが嘴で突いてくるのと
ひとしきり格闘 ....
時間と空間の摩擦音が
遠くから響いている

全ての自動車はエンジンを失っている
速度だけが鮮やかに残った

街灯は顔だ
化粧した美しい顔

雲は空の濁り
人は歩く樹木

外の匂 ....
冬が深まり、各地で豪雪が降り、外気は刺すような寒さで、ものみな凍り付きそうだった。私は復職が徐々に軌道に乗り、周囲の声や目があまり気にならなくなり、集中して仕事に取り組めるようになった。仕事も大詰 .... 自問自答するのは世界の青さについて。どんなに光や闇に汚染されようと、世界はすべて青色であるのはなぜか。夕焼けの橙も朝焼けのピンクも、青色を解きほぐしたものに過ぎないのはなぜか。それは青が法則の .... 国家試験合格を目指す人たちの中で
唯一学問を目指していた
法学研究科に所属しながら
自分は哲学専攻だと思い続けた
周りから優秀さを嘱望されながら
結局試験には受からなかった
友人が次々 ....
けだるい朝
仕事に行くのもおっくうで
とりあえずコーヒーでも飲んでみる
そういえば
全てのものには重さがあった
部屋のサッシのガラスにも重さがあるし
この蛍光灯にも重さがある
 ....
暗い駅のホームにてかじかんだ手で
自販機から買ったホットコーヒーを飲む
コーヒーとともに朝が費やされる
未来の広がりよりも
過去の堆積の方が圧倒的に大きく思えるのは
いつからだろうか ....
 社会は個人に対して物質的で不条理であるというイメージが強い。あるいは社会は個人がその役割を果たすことにより自己実現するステージであるという積極的なイメージもある。だが、積極消極いずれに解する .... 何のために存在するのか
そんな問いを無効にするため雪は降る
世の不条理と人間の不条理との
遠い血縁を否定するため雪は降る

雪の冷たさは仮面の冷たさ
雪の素顔のうごめきは
辺りを ....
駅のホームには
人々の疲労と希望が散らばっている

コンクリートの怒りによって
掃き清められた余りにも尊い人生たち

線路は狂おしく悲しみながら
大きないかづちを流している
 ....
晴れた空が広がっているのは
誰かが空に感謝を投げたから
海がいつまでも青いのは
誰かが海に感謝を流したから
「ありがとう」は持続する響き
どこまで遠くへ行っても決して衰えない
 ....
澄み切った均衡の成熟のもとに
季節の気まぐれな散逸を防ぐため
私は薪を手に取り機械で割っていく
身体が材料の要点をつかみ
材料を機械の中心に割り当て
身体と材料と機械とが
美しい諧 ....
平穏の訪れを告げる
朝の鳥の声が鋭い

町は信頼により配置され
道路は情義によって接続され

酒はすべての裂け目を流れ
裂け目をきれいに架橋した

笑いはすべてのとげを包む
 ....
葉leaf(914)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩216/3/18 5:22
公園自由詩216/3/13 9:42
出発自由詩316/3/10 5:04
詩人の死散文(批評 ...016/3/5 15:20
仮面自由詩216/3/4 5:33
無題自由詩3+16/3/3 5:13
過程自由詩516/3/1 5:37
眠り自由詩416/2/22 6:40
快晴自由詩216/2/21 6:12
珈琲自由詩116/2/17 14:58
恢復自由詩316/2/15 6:24
断片自由詩216/2/14 4:08
自由詩116/2/13 1:52
無為自由詩216/2/12 6:02
美術館自由詩416/2/8 5:33
自由詩316/2/6 16:54
井上靖小論散文(批評 ...216/2/5 22:48
トラブル自由詩216/2/2 5:01
透明な通勤自由詩316/1/29 6:13
精神自由詩116/1/27 14:01
自問自答自由詩016/1/26 4:47
法科大学院自由詩1+16/1/24 7:17
重さ自由詩416/1/22 4:56
朝の闇自由詩416/1/18 2:54
文学の社会的機能 散文(批評 ...216/1/16 8:55
朝の雪自由詩316/1/16 6:58
朝のホーム自由詩616/1/15 6:09
感謝自由詩1016/1/13 6:36
労働自由詩416/1/11 1:18
平和自由詩516/1/8 8:07

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