アスファルトに捕らえられた君を
すくい上げたこの手が
愛だと信じていた
四畳半の沃野に
刳り貫いた天井に
それでも君は
ただ背筋を伸ばして
その時を待ち続けていた
この手が ....
ほんとうのことは
今俺がお前の中にいること
どれほど身体すり減らしているのか
知りながらお前は綺麗な眉をひそめて
お前の中の俺を撃ちつづける
挟まったフライドチキンを爪楊枝で遊ぶ
この ....
浴槽に浮かんでいた小さな虫の死体
小さな小さな
わたしが少し波を立てたら
もう沈んで見えなくなった
彼は
どこまでも広がる青空を見ただろうか
暖かな太陽のひかりを浴びただろうか
....
いもうとを 見つけた
薄紅色のあじさいに架かる蜘蛛の巣に
囚われて 泣いて
いもうとを 見つけた
砂まじりの南風に吹き舞わされて
囚われて 叫んで
やあ ....
今からある情景の描写をするが
それはけっして
何かのメタファーではない
それを読んで
書かれていること以上のなにかを
読み取ろうとしたりすることは
まったくの時間の無駄である
/
....
―健二に
包丁一本さらしに巻いて
君は西洋にやってきた
言葉なんて何にも知らないのに
義理人情
いろんな人を愛し 愛 ....
泣いて泣いてただ泣きじゃくって
目を腫らし鼻先赤くなんてして
泣き疲れ ふと夜空を見上げれば
そこには月だけが輝いてるから
僕はまた 泣いた
静寂だけが包み込む世界で
....
神社の石段はクロマティックで
綻びを縫うたびにリズムが泣く
鈍色の穴から囁く間歇気流は
先回りして落としてきた脳の断片
がえんじない足をすり抜けていく
させよ。
そう念じるも
た ....
私の体を キノコが 侵食する
菌糸は腕をからみとり
足をからみとり 心臓をからめとり
やがて 脳に達し
心すら からめとる
私は キノコと同化し
静かに 眠りにつく
やがてキノコははい出 ....
てんとう虫が
はじまりを見ようとしている
いつも黒々として
その目に届く瞬間
昨日の蝶のように青くなる
寂れた車輪の下
命の枝葉いくらでも伸びる
葉を噛んでみると
溢れんば ....
?.
星を
呼べるんだね
あのロバ
ほら
また流れたよ
願い事三回は
いじわるだね
静かにしていよう
叶わないよ なにも
どうせこれ以上
たどり着こうとして
....
寝苦しい夜 はみだした足が
そろりと風を止まらせた
畳の上を這う 小さな羽虫の陰
名札をはずしたつもりになっても
はずれたくない場所がある
どこからもひ ....
◆詩集は目につかない?
あたしなんざこの年になるまでほとんど詩なんぞ読んだことはなかったわけですが、その理由の最たるものは、「詩集は簡単には手に入らない」これにつきたように思います。
まず書 ....
空が暗くなると
あなたが来る暗示
空が明るくなると
あなたが離れる合図
夜は好き
あなたに会えるから
暗いのが好きだから
でも
あなた ....
父が死んだ時 私は少しも悲しまなかった それは幼児期に虐待を受けた
トラウマなのかもしれない
私にとって 父親とは 暴力以外で存在
できなかった
全身が暴力の固まりで
それは私に ....
六月の香りの入った
お手紙
あなたから
お久しぶりです
から
始まって
麦わら帽子をかぶった
七月の夜に
なぜか さみしかった
その日の
星がひとつだけの夜に
かわい ....
電車
向かい合って座るくらいなら
街
タバコの煙交換するくらいなら
いくらだっている
人の中
一番いっぱいの
感情投げつけた
あなた
離れること
あれば
あた ....
おりのそとには あおいもりだわ
はだしであるく みずごけのうえ
うでよりほそい おがわがあって
あたまくらいの うえきもあったよ
むせるほどの きいろいひかりに
ふらつく ....
夏の朝
とうもろこし畑の中に溶けてみた
一直線に並んだ黄緑の
甘い匂いが夏だった
気づけば夏の中に溶けていた
黄色の穂先から見上げる青空は
水を見ているようだった
土から湧き出る水蒸気が ....
最近どうにも足が疲れて疲れて仕方が無いので病院に行くと
一応疲れていますねと診断された
一応と言う言葉にむっとしたが
いやそれは最初から分かっているのですが
原因が分からんから調べて欲しいので ....
くろに燻ったぼくのいかりと、きのうのゆめが
ちらかったなつのよる、小さなさんぶんをぬりつぶします。
くれよんとかえんぴつをなめて、蛍のうみをえがこう。
あじさいのはなびらが、 ....
朝になって
公園の湿った土の上に突っ伏していたんじゃないか
雨が上がってむかえる朝のにおいは
ひやりとした黒い土のうえ
収斂していく類のもので
奥に深く潜っていく
噎せ返る速度ににて
....
1
昔、三人の男が互いに足の速さを競っていた。最年長の男はやがて体力が落ちてきて競争から脱落した。だが彼は、健康のためにいつも歩き続けることを自分に課した。凡庸な男はやがて自分の才能に見限りをつ ....
* 雨 ぷらす 享楽
かたつむりを追いかけたり
水たまりに入ってみたり
いつもと違う遊びができる
この日を待ちわびていた
泥だらけのズボンの裾を誇らしげに
明日の約束を交わした
....
もしもし もしもし ――
もしも、もしも、しもしも、しもしも、
A:林檎ジュースのような苦しみかい?
B:冷やさなくていいよ常温で
A:甘い方の苦しみかい? 飲んじゃえよ
B:飲 ....
続いた雨の音階は消え
訪れた静かな夜
問うこともせず
答えることもなく
過ぎてゆくだけの影に
狭くなる胸の内
満たしていたもの
耳に慣れた雨音と
肌に馴染んだ湿度と
それらの行方 ....
バカにすんなって、空に思わず毒づいたよ
昨日あいつに「顔も見たくない」
なんて言われてさ
酒かっくらって気付いたら朝で
カーテン開けたらさ、どピーカンでさ
あまりに眩しく ....
宇治橋
夕霧にかすみつ渡る面影に
露けき花の色が重なる―――
観月橋
しめやかに
欠け満たされぬ夕月の
心を以ってなぞる君の名
....
指先だけで、そっと
窓を開いてみる
隔てていた向こう側には
空の海があり
紙飛行機を飛ばす
誰宛てとかではなく
紙飛行機を飛ばす
そこに、意味なんてない
ここは海だろ ....
舌がある
それで君を舐めようか
冷えた舌先が触れるとき
君の肌で
どんな音がするか
固まった
ちいさな
ちいいさな結晶が
溶ける音がするか
こんなすこし暑い季節なら
しゅと
音が ....
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