手で触れようとすると崩れてしまうおそれがあります。
できることならば遠くから眺めているのがよいでしょう。


 *


 雨だれ

 雨の音がするのです。
 理由はそれだけです。
 ....
おばあちゃん
亡くなる何ヶ月か前に
ぼくのアパートにやってきた
外車に乗りたかったので
おばさんの買ったヴォルヴォ

だけどぼくんちなんか来たって
そりゃやることもないので
縁側から外 ....
葉っぱが舞う校庭

都心の小学校

少女は
アーバンコートの校庭に
いつも上履きで駆け出し
そして遊んだ

外履きに履き替えるのは
校庭の隅にある「自然園」に入る時だけ

自然 ....
ラジオをつけると
聞いたことのある曲が流れていて
愛とか希望とか自由とか
そういったことを叫んでいた

壁に掛けてある絵は
何の絵であるのか解らなかった
右下の隅に小さな文字で
ユリネ ....
さくらがみたいのと
おまえは呟く

けれども
おまえの為に
こんな時期に
桜は咲いてくれないのです




ようちえんにいきたいの
とおまえは呟く

しかし幼稚園は日曜日に ....
このアパートに住み着いている猫の話では
世界はすでに終わってしまったらしい
猫は目を細めて悲しそうにしているが
世界がいつ始まったのかまでは教えてくれなかった

仕方がないさ、と猫は言う
 ....
女にふられたので、
稚内へ行って死んできた。
稚内へは、羽田から直行便が出ている。
うすぐもりの空がまるでばけものの飛ぶ空のように広い。
ツアー客のでっかいトランクのなか、
浪人生みたいに手 ....
とても広い湖の
至るところにブイが浮かび
竹を編んだ丸いものが
そっと押されて岸を離れる
竹を編んだ丸いものから
一つのブイが遠のいていき
またそれ以外のあらゆるブイが
どれも等しく遠の ....
太陽が落ちかける頃
森の中で
ベンチに君と座った
今年最初の蝉の鳴き声
そこで聞いたんだ
月が霞んで見えた


高すぎるビルに囲まれた場所
誰もいない場所をさがして
ベンチに君と座 ....
いとうさんと飲んだ


あしたのあたしはあたらしいあたし
という一文があって誰の詩か思い出せない
みたいな話をしたような気がするけれど酒のためか思い出せない

いとうさんと飲んだ
みた ....
暑さ蒸し返し始めた

暑さ

黒いパーカの袖は汗に湿って

そして子供の頃にも一度感じたことのある憂鬱またやってきた

しずめつづけられる

意識の基礎がそれに塗りこめられて息がし ....
?.

あなたを
あなたのすてきなところを

一日
大切にする

あなたを
あなたの汚れたところを

裏返して
日に透かしてみると
おかしな影ができるから
その影に指で ....
ムーンは名犬ではなかった
おれが不良にからまれたとき
まっさきに逃げた
のびているおれのそばにきて
目のよこの傷をなめた

ムーンは名犬ではなかった
堀内と土井と高田の
サインの入った ....
 前回登場したA氏の話を続ける。月日が経ち、ネットの海辺で呆
然としていたA氏も素潜りなどできるようになった。詩論を交わせ
る知り合いも幾人かできた。様々なサイトを足繁く覗くうちに素晴
らしい作 ....
とべない君の
飛び箱になりたい
夏のあいだの
君の上履きになりたい

君のすくうプリンの
一口目になりたい
君のぬるリップクリームの
真ん中らへんになりたい

君のさくらんぼの種に ....
「こんばんは、お久しぶりね」
聞き覚えのある声に振り返ると
おんながひとり乗っている
「今日ぐらい早く帰ってきてね」と
妻にせがまれたのに残業を強いられた
可愛いひとり娘の誕生日だっていうの ....
彼方からの気流にのって 届いたそれを
あのひとは
夏だと言った



わたしにとって
わたしの知らない、どこか
遠い場所で あのひとが
笑ったり、泣いたり、しているということは
あ ....
解かれるものがあって
解けないものもあって
元気ですか
その言葉だけで繋がっている

わたしを折る
折りたたむ
そして開けば
鶴にでもなりたい

配達の遅れた願いのようなものが届く ....
大きなガラス扉
日焼けしたブラインド
貸店舗、の白い貼り紙
コンビニになりきれなかった
角の、たなか屋

殺風景な店先のコンクリートには
ただひとつ
小さな郵便ポストが生えたまま
舌 ....
     君君君     君君君
    君君君君君   君君君君君
   君君君君君君君 君君君君君君君
  君君君君君君君君君君君君君君君君君
  君君君君君君君君君君君君君君 ....
ヒトラーの「わが闘争」を
いつもポケットに入れていた
まるでサリンジャーの小説の
脇役のようなH君から
十二年ぶりに電話がきたのは
二年まえのことだった

十二年前H君は中国人の留学生に ....
「狐つき」

こん と ないてはなりませぬ
こえをあげては なりませぬ
とられたくない だいじなものは
かくしておかねば なりませぬ

くらいよみちは こわいけど
ふきさすかぜは つら ....
   
{引用=  あのひとの記憶がしずむ海は、いつしか防砂林で見えなくなった
  越えられない高さに、すこし安心した}   





砂が、降って
深く深く沈んで 底まで
皮膚 ....
「ポエ根ドラマがあってもいいかもしれない」
(註:これはサブタイトルであって小熊秀雄から学んだことではありません。)

昨日、とあることがあって「罵倒する」ということについて考えてみた。罵倒する ....
いってらっしゃい 
おかえりなさい 
ごはん できているわ 
おいしそうだね いただきます
そうだわ にちようび どこへいく
えいがをみて さんぽして
いっしょに ゆうはんのかいものにいこ ....
一.


春待ちゆびが
くちびるにふれて
かた
むね
こし

跳ねていく

抱きぐせがつくからだめよ




二.


ぱた ぱた
と舞う洗濯物を
清潔とす ....
筆先で湛えきれず
液体が
ぽたり、ぽたり、と
滴るので
両の掌をくぼませて、ふくらみをつくり
上向きに 
すこしかさねて
それをすくおうとしてみるけれど
わずかな隙間を
液体はすりぬ ....
ターミナルに出ると
うす青い空が広がっている
通りは車で渋滞していて
そのまんなかでは 赤信号が
意味をさがしながら
点滅する
帰らなければ、と漠然とおもっていた
帰ろうとするその方角を ....
その日も、少年(予定)は、間違えた言葉をそのままに口にする
変換の仕方も削除の方法も、最後には気付けないことばかりなので
いつまでも、「あ」と「い」が上手く発音できない
それでもいいか、なんて思 ....
ねえ、ブランシュ、
あのとき
あなたが越えようとしていたものがなんだったか
今のわたしにはもう
それを知る手だてもないけれど
あなたはいつも わたしの
理解の範疇をこえて
日常のただしさ ....
石田 圭太さんのおすすめリスト(1522)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
6月の取り扱いについて- 降旗 り ...自由詩28*06-11-10
おばあちゃんの洗濯物- しゃしゃ ...自由詩806-11-1
上履きの少女- ささやま ...自由詩15*06-10-31
ユリネプララの人- 青山スイ自由詩2206-10-28
さくらはなぜさくの- 自由詩91*06-10-27
ブルードロップ- 青山スイ自由詩3006-10-25
稚内で死んできた- しゃしゃ ...自由詩1906-10-22
魔法- 砧 和日自由詩12*06-10-7
ベンチ- 水町綜助自由詩5*06-10-5
say- れつら自由詩20*06-9-28
nayameruブタ- 水町綜助自由詩7*06-9-21
あなた- 水在らあ ...自由詩76+*06-9-19
ムーンは名犬ではなかった- しゃしゃ ...自由詩2006-9-10
インターネットの閉鎖性_2- いとう散文(批評 ...17+*06-8-7
蚊取り線香になりたい- しゃしゃ ...自由詩1006-8-5
帰らざる海まで- 恋月 ぴ ...自由詩20*06-7-28
透けていく、夏- 望月 ゆ ...自由詩42*06-7-13
いつかインターネットでこの詩を読むであろうあなたに- tonpekep自由詩23*06-7-1
たなか屋の角- 佐野権太自由詩54*06-6-20
恋のかたち- 降旗 り ...自由詩6*06-5-31
鳥人間コンテスト- ZUZU自由詩1306-5-29
狐月夜の物語_(三つの狐つきのうた)- 降旗 り ...自由詩17*06-5-27
不感症の夜に- 望月 ゆ ...自由詩63+*06-5-17
小熊秀雄に学ぶ_その1_- 降旗 り ...散文(批評 ...5*06-5-14
しゃらびぃ- 降旗 り ...自由詩11*06-5-13
断片集「幸せの庭」- 簑田伶子自由詩47+*06-4-15
水墨夜- 望月 ゆ ...自由詩50*06-4-14
終着、そこからの- 望月 ゆ ...自由詩2206-4-11
少年予定- 霜天自由詩4506-3-29
ブランシュの丘- 望月 ゆ ...自由詩24*06-3-10

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