(わたしは秋
枯れゆく落ち葉のしたで
春の夢を待ち焦がれている)
北国の夏はぬるい
日焼けした肌
汗臭いTシャツ
サングラス
海と空がひと ....
胸の想いは、
薔薇色の珊瑚だよ
だから貧乏だなんて
口が裂けても
絶対に、
言ってはいけないよ
こんなふうに、
今は。
志のある人なら誰でも
・・・・とても
苦しい、時代だ ....
うろこ雲の尻尾につかまって
東の空へ流れ去った君は
雨雲に紛れ込んで
細やかな涙を降らせた
柔らかな時の掌に撫でられて
色鮮やかに頬を染めた君は
頼りない指先に手折られて
夕餉の ....
実態がない
1ミリもない
あの子の必要としているのは俺じゃあ無くて
俺が必要としているのはなぜあの子なのか
そしてこのタイミングなのか
三本足の野良犬のびっこの足跡をたどる ....
いつも果物をならべている
腐ったものはないか確認しながら
ひとつひとつのウマさが
きわだちゃしないかと
あわよくば
そう考え
数秒後に忘れる
これは仕事だ
....
冬の継ぎ目を
誰にも気づかれないように
走りさったあの日
あの日は毎年やってくる
それは 玄関の扉を開くと同時に
背中に 過去を想い出す懐かしい匂いと
肩に もどか ....
雑音が聞こえる
鞄の中から
聞こえる声を聞きながら
母は呆けた
雑音が聞こえなければ
昔のような
声で母は話した
鞄の中から
雑音が聞こえると
途端に母は
声を濁らせ ....
病院の朝食のバン
焼いてないし
おいしくもないけれど
このパンを
食べるしかない
選択の余地など
ない
好きなひとに
好きって言える
余地もない
独り
想いを募ら ....
{引用=するとすべて
こうして、秋が呑む飴色の庭に流れ入る日々
立ち尽くすことはできないから倚りかかると
ステンレスの台がたわむ
窓の
外
暗く黄昏れる湖
刷毛の肩に金のほつれ毛 ....
おまえの腹を枕にして
大の字になって
昼寝としゃれこんでみるが
いやいやいや
ぱっちり開いた
おめめは
青いフィルターのかかった
大宇宙に
ストップ光線かけられて
瞬きす ....
りんごが食べたい
泣きながら
りんごを食べたら
美味しそう
わたし
泣きたいの
身体から
毒をみんな
出したいの
青い車の隣で
真っ赤なりんごを食べてみたい
ビルは氷柱(つらら)のようであって
交差点に、滴る微笑の鋭角が
夜はひときわ映える
空は無限の海にはあらず
月のマンホールに、僕らは吐き捨てる
ばらけた感情語
それを生 ....
落ちてゆく
夕陽の触り方を
知らない子どもが多い
つるりと
何のためらいもなく
なで回すと
とたんに飽きてしまう
そうして
バイバイと手をふって
見送ってしまうのだ
そんな
少し ....
たったいま完成した
きみの思考の円錐
てっぺんからひん曲げて打ち崩したいから強く
強い骨をつくるために
わたしは泥臭い牛乳を飲もうと思った
信じられないほど白い液体
きみを信じられないと思 ....
正直今日の日はえぐれるような1日だった
いろんな意味で
あたしはもっと強くなっていかねばならない
昨日よりももっとぐるぐるめまいがした
あたしはもっと強くならなければならない
....
ながい腕を
まっすぐに伸ばして
陽ざしをさえぎり
さらにずんずん伸ばして
父は雲のはしっこをつまんでみせた
お父さん
いちどきりでした
あなたの背中で
パンの匂いがする軟らかい ....
根は分解されて土に還っていた
枝の先にわずかに最期の吐息が残っていた
去年咲かせた花の種を形見に取っておくんだった
オー マイ リッラ
後悔はいつだって遅刻する
ぽっかりと丸い穴が空席 ....
かたん。
わたしの、やわらかい場所が、いい部分とわるい部分とに、ひとつひとつ解体されていく。いい部分は、礼儀正しくつるんとしていて、感触がない。わるい部分は、どれもいびつに明滅して ....
まず本
本が絶滅する
たとえば資源の枯渇、高騰
工場で印刷される書籍はなくなり
図書館やブックオフはレンジャーによって守られていて
古書街は聖地と化している
それからネット
イン ....
息子の成績が悪いということは
幸せなことだ
悪いということで
親父は あれやこれやと説教し
妻は ガミガミ小言を言い
息子は 神妙な態度でかしこまる
妹達は これはヤバイと脇目もふら ....
少年Aは今日も何気なく日常を過ごす
背が高い
その高さがよく目立つ
少年曰く、遺伝らしい
家族で外に出歩けないとよく言っている
彼ひとりでも道行く人々が二回ほど彼をちら見するらしい
....
ゆうぐれをあびると
くびすじから、すこし
てんしのにおいが
する
だから もういちどだけ
とべる
きみも ぼくも
もう もどってこれない
こくばんに
らくがきしたかっ ....
片足を曳いて
空を登る
これは頂上から下げる予定の頭
導く、斜陽は赤く、大きく
目を伏せる、花は白く、不気味に
大きく
わたしを
きみを
祝福して
大きく散るだろう花の学術名を手探っ ....
海のきぬ擦れが耳を攫う
だれかに名前を呼ばれた気がしたから
水の色が碧から黒に変わるころに
海豚のやさしい瞳を胸に抱えて
こっそりと{ルビ宙=そら}に顔を出してみた
鳥の嘴が白の甲羅を遠 ....
きみを覆いながら
明け方
恋は側溝であった
大木を根こそぐ竜巻の強さでわたしの右足を巻き込む
この浅さで溺れる
母に嘘をつき
父を裏切った
上睫毛と下睫毛を固く結んで拒んだ景色
目 ....
ここが好き
机と本棚の少しの隙間
すっぽりはまって
ほっくりゆったり
ここが好き
縁側に干した布団の上
ぽかぽか陽気に
閉じたまぶたで
視界はオレンジ
ここが ....
父さんと
楽天の試合を見にいった
けれども本当は
野球よりも球場を一周する
小さな汽車に乗りたかったから
父さんは入場券をポケットにしまって
試合が終わるまで
何度も何度も汽車に乗 ....
夏のおわり
夜風をあつめて
帆をたたみました
骨のぬるい晩のことです
しん、と澄み切った屋上の一隅で
片付かない、ちっぽけな一匹のままでした
(金属製 ....
秋を潤わす金色の木立は
この時季、配色に惑うのです
茜色に染まった夕陽は
黄熟した稲穂を金色に光らせ
時を刻む砂時計に全てを託した
ざわめきと胸の鼓動は止まらない
....
まちを遠くはなれ
まだらに草がはえた
さびしい砂浜の
海ぞいの道で
わたしはめくらのふりをして
ほどこしをもらった
(ニセめくら)
海から吹きつける風が
砂を舞い上げたが
空は青 ....
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