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満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと ....
冬の空のしんとした質感に
しなだれる肺のたおやかなこと
木枯しに枯れていく太陽のもと
不透明な雪の結晶となる重さを
熱く呼吸して火照る
湾曲している波に共鳴する
空との境界で
風 ....
明治生まれの 女らしき女の貴女に会いに行きました
いつも凛としていて こぎれいで 弱音を聞いたことはありませんでした
気丈で 自分の意見を曲げない所もありますが。
今の貴女は 腕には ....
他人に優しいって事は
自分にも優しいって事かな
君に優しい顔を見せるたびに
僕は自ら犯した罪を
古いものから順に消し込む
過去に犯した罪を贖う為に
君の気侭な振る舞いにも優しさ ....
つながっている
(
青く透けた日の光が
結晶となってふりそそぐ季節
つめたい雨は 灰となってしまった
存在している私
無くなる。
空から堕ちた秘密が
虚ろな視線で風を呼ぶ
無神経 ....
すき。
つらつらと
窓硝子に透明な静脈
いつしかの雨
ちいさな胸にけむり
せつなさ響くぬけ殻の
透過する自殺
すき。
その精神
クシャグシャにくずれそうな
物理的に映らず視覚さ ....
頬を追い越してゆく風と
手招きをするような
まばゆい光
目指すべき方角は一つだと信じて疑わず
出口へと向かって
足を運んでいたつもりだった
不思議だね
振り返ることは敗北では ....
嘘つきだった君を剥がしてあげよう
昼間のシャツは
白すぎたんじゃないか
夕飯のサラダは
潔すぎたんじゃないか
嘘つきだった君を剥がしてあげよう
すべてを明け渡し ....
何もかも すべてに 絶望を感じ 暗闇の中に 一人佇んでいた
そこに ひとすじの 光と やさしい琴の音色
弾き手の やさしさを 表現するように 指先から 静かで 穏やかな
音色が こぼ ....
部屋に突然インドがやって来て
勝手にインダス川を氾濫させるものだから
部屋は水浸しになるし
大切にとって置いたものも
すべて流されてしまった
これは何の冗談だ、と
食って掛かっては ....
わたしにゆるされることは手をかさねること
六月の墓地でしゃがみこんで草笛を吹くと
わたしの手はやわらかい土のように
生まれたてのなめらかな手を覆う
(ささやくのはありふれたうたのよ ....
しがらみが
やさしくて痛い
振り切ってしまえばいいのに
そうできる青さが欲しい
飛び込む勇気をください
たった一言でいいから
振り切ったら
新しい世界が待っている
知っ ....
ひとしずく
ほほの目方をふやしてく
ひとしずく
夕陽は目方をへらしてく
ぼくらは肯いた
つつむ
こころを
その手で
そっと
つつむ
いのりを
ひとり
その手で
つつむ
その手は
あの手を
つつむ
そして
手は
ひかりを知った
....
ポテトを食べている
短いポテトをつまんで拾いながら時々長いポテトを食べる
店の中は客でいっぱい
僕だけがひとりだ
一人でポテトを食べているのでいろんなことを考えるほんとうの思考は無心のときし ....
小さな庭に
骨が積もった
息子は
動物だと思っていた
夕陽のあたる背表紙にする
「た」行まで来た
この書架で
冬も越す
みず色の空に 浮かんだ
白い月
明けたばかりの朝
洗濯物を 干す
厚着をして でた外は
首もとから 冷えていく
夜を終えた 世界に
濡れた 竿から 雫が 落ちる
寒 ....
からだをまるくちぢめて
うたえないうた
かけないことばを
つぎからつぎへと
もてあそぶまよなかに
ただひとつのこる
ほんとうのことは
かなしい
かなでてしまえば
もうそこには ....
都市では
すべての生きて動くものはその死の時に
鳥によってついばまれる
そのようにして葬られる
人も 例外ではない
夕陽が昇るように沈み
そのかたわらでくるった金星が
美しくほくそ笑む時 ....
いちばんうつくしいものは
いきて うごいているもの ですが
つかれはて とまりはてて
くずれさってゆくものたちの
なんという いとおしさ
なごりのかたちばかりを
とどめて うごか ....
すべてを失いました ほんとうにすべてです
そこで手に入れたのは、ちっぽけなタネです
でも、信じてしまう
みんなだってそうだと思います
だから、たいせつに水を与えつづけます
一日はそのように始まって
一日はそのように終わっていく
きっと
部屋の隅、テレビの上
ほんの少しの暖かさ、の裏側で
空が重心を失って色を零していく
十時十分
並んでいる時計の ....
傷ついて
しまった者
遠くからみてる
見守っている僕は
朝
傷だらけの朝
まどろんでいる
ねぼけた手つきで
昔を
まさぐって
あんまり欲情しない
大丈夫かな
おんなのこと思う
....
秋のこがねに
ざざめく山の
ざんざと落ちる
もみじ葉に
分けいりたくもないわと
言うに
うでを掴みし
指の強きに
あゆみ とふとふ
ついて ま ....
薄暗い軒先で
植えてもいないのに咲いている
高貴とは程遠い
紫の嫌な匂いを放つ花を
じっと 見ていた
「毒に彩られた花やね。」と教えてくれた
少女の丸くかがんだ背中から
....
雲色のインクで
書いた文字は雲色
すこし湿った
すこし陰った
僕の色
その雲から雨が
落っこちないように
こらえながら
こらえながら
がんばりながら
がんばりながら
....
浮浪者がひとり
ホームの支柱に寄り添いながら泣いていた
灯りを落とした回送列車が
静かに通り過ぎていった
駅員がひとり
チリトリを持ったまま
トンネルの奥底を見つめ ....
一つ
二つ
数えながら歩いている
わらった わらった
影を数えている
花火の影が網膜にちらついているので
手をひいて二人で夜道を帰った。
消えいくものはすべて
かつて私 ....
宇宙は極上に澄んでいます。
美しい漆黒に漂う、
つやつやした青色の星は
エイリアンの観光名所になっています。
月から地球を見るのが
最も美しいそうです。
宇宙は ....
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