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音の空から斜めは降る
親しげな空ほど
高みへ去る
列は青く
青は遠い
朝の月や朝の星
鳥や雲に重なったまま
水底の火を見つめている
けしてけして澄むことのない
濁 ....
思いがけず
可笑しさがこみあげて
くるが
すぐに冷め
可能性の欠落を夢みる鋭さ
鮮やかな月に照らされて
{ルビ青灰色=せいかいしょく}の肌は
淡く
光合成を告白するが
しおりは空 ....
君がぽかんと口を開けているのは
口の中で風が吹いているからだ
その正体が何であるのか
問う方法も知らないまま
ある日突然に
君は君であることに気づくだろう
そしてそれは
君が君で無いこと ....
おばあさん たべねば だめだ
見舞いにきた人が
そう 励ましてから
おばあさんの 体調は悪化した
食べれねぐなったがら もうだめだ
と 急に思いつめたらしい
看護婦さんがみかね ....
夜の野を
羊たちは走る
帰るところなく
羊たちは大群となって
夜の腕の下を疾走する
月の微笑に照らされる夜
野の果ては地平線で切断されている
人はひとり凍えて横たわる
夜は ....
君は脱ぐ
同時に着る
どんなに脱いでも
君は君の核心から遠ざかっていく
まばゆい光の中
生まれたての姿になり
男たちの暗い瞳でできたプールを泳ぐ
淵に腰掛けていた男たちは
....
あたたかい雨の季節にこがれて
梅の実は ほそ枝に寄り添い
みどりいろの葉陰を肌にうつして
いっそう深い みどりに染まりながら
かぜに ゆれていた
「あたたかい雨は いつになるだろね」
....
とめどなくなかから、そう、こんなふうに
星が消えて、灯りがうずくころ
風がなって、たましいのうまれるころ
そこにはやっぱり流れていて、
何処にいたって流れていて、
はねてうず ....
貝殻を気取る私は
捕獲されるのを警戒する
辺りが静かになった頃
深い深い、おそらく他人には不快と思われる
夜の底にて
ようやく貝は口を開く
ポロポロと子守歌
誰にも与えら ....
刈り入れ、葉、枯れ
わたしたち。
貧窮は カタカタ 呼ばわる
明るさについて。
茎が折れ、そのあたりを、
嗅ぐ。 鼻孔、ひらき、
足も萎え、
何度もなぐられた ....
君のだみ声は大海原のうねり
君のいらっしゃいは忘却の号令
ねじり鉢巻
生の残酷さと尊さを知りながらも
君の口は頑なに語ることを拒み続ける
いま目の前には
かつて自由に泳ぎまわっていたも ....
君の背中にある八番は
誰がつけたというのか
躍動する大腿筋
身体から溢れ出していく汗
すべては君そのものだというのに
ただセンターとだけ呼ばれ
どこまでも白球を追いかけてく
スタ ....
お嬢の小唄を
宙に放れば
おてんと様が照らしてくれる
小僧の小唄を
地に撞けば
根っこの隅々しらべてくれる
手毬唄、ひとつ
この手に優しい
中身かどうか
優しくこの手に帰 ....
腕から生える腕
腕から生え他の腕に潜る腕
すべて腕
てのひらの無い腕
てのひらだらけの腕
今日の天気は腕ときどき腕
ところによりにわか腕
という天気図を指し示す腕
腕そば一丁、腕大 ....
悪気などないのだから
だから尚更
優しいあなたは嘘つきになる
誰をも騙せなくて
自分を騙すことではじめて嘘つきになる
それがたとえ取り繕いの仮面であっても
優しいあなたは
....
チョコレート
チョコレートの包みを
あけたのは
退屈なカエルが
土の中から這い出て
鳴いたから
スカーフ
ほめたら{ルビ白髪=しらが}まじりの
老婆がくれた
....
太陽を盗んで、
穴に落ちて、
暗闇で、
空っぽで、
誰もいなくて、
誰もがなくて、
誰も待ってなくて、
遠くで、待って、くれなくて、
悲しくて、
苦しくて、
....
何を忘れたかったのだろう
街に一つしかない小さな駅で
男は窓の外に向かって手を振った
無人のホームでは鉢植えに植えられた
カモミールの花がゆれるばかり
やがて男を乗せた列車が発車すると
駅 ....
道の途中
その曲り角の 節目ごとに
石を埋める
浅く
また深く
土を掘って
掘り出されることを予期せずに
宝石のように
ただの石を地に埋める
その上に霜が降りる
あるいは雨が降 ....
からっぽな、そらっぽ。
空々しくて白々しい。
誰もいない。
遠すぎて、
ひとりがとっても空っぽい。
ここにあるものを
遠いことのように
海辺にはひとりで
いつも見る夢に
ひれ伏すようにして
倒れる
砂の積もっていく音
どこかから落とされる音
仰向けに空
口を開ければ世界が
飛 ....
何千という群れを養う
豊かな牧草地の中で
音楽は再生した
静かに呼吸しなければ
その音に紛れてしまう
星の明滅よりも微かに
息をひそめて
やがて高音部が聞こえてくる
そして低音 ....
たとえば少年の溜息を
たとえば少女の独白を
空は拾いあげるでしょう
空にはみんなの星がある
たとえば背広の焼酎を
たとえば情婦の香水を
空は拾いあげるでしょう
空には ....
平均台の上を歩くみたいに、生きてる
両の手を横にのばして、バランスをとる
あせってはだめ
はしるなんて、なおさら
足もとばかり、見ている
けど、前を向いたほうがキ ....
いつもの駐輪場の屋根の上で
虎縞が昼寝をしていた
あいつめ、昨日俺の前に来て
にゃあと鳴きやがったが
今日はすやすやか
薄目を開けても
何もやらんぞ
ちんまりと背を向け
弛 ....
この世界には もう
ひとつも乾いた場所など無い と
そんな風に思うほど
360度 水浸しの溢れ出る水槽です。
窓を開けると 外は白い縦線で埋まる巨大な水鏡で
映った私の全身から ....
男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
目を 吐き
草を 食べ
今生の 別れに今 抗うものがあれば
砂糖で できた林檎を
黒風呂敷で 包み
きびすを返そう
つかんだ者は やがて堕ち
つかまぬ者は 行ってさ ....
あなたは俺が生まれ育った場所を知らず
まるで外国のように感じている
だから楽園のような場所だと言うと
そんな所は無いと明るい声で言う
吹けば飛びそうな二人
町の手前で
恋をしている
お客 ....
無地のワンピースを着て
濃いめのカルピスを作った午後
汗の珠を額につくり
夏のにおいを、すこし思い出す
ベランダのコンクリートにできた
幼い模様に
ため息を吐いて
また高くなり始めた ....
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