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ほほ、
雨上りの風が、
ほほをなぜてゆく
にわか雨の詩人は、
詩を吐いてまっかっか
死んじゃった
時は八月六日、
つるをのばしたつぼみの花は
夜空のかすみをうらめしげ
ええ、こと ....
壁の向こう側を
幻視する
真夜中の花火
身体は溶け出して
分解される
空中に映し出された
追憶の景色
クルクルと
鉄くずがまわると
小さく鳴り出す
不安定な ....
手をのばしかけてやめた
あの日の、すこし歪んだ夕方を
ねんどをこねるようにまるめて
食べた
ひといきで飲みこんだ
だってどうにか、前にすすまないといけない
わたしは何に悩んで
わたし ....
星空の下では今日も
作業灯が明るい
掘り起こされる大地
積み上げられゆくコンクリート
道行く人は
まだか、と未来を吐き捨てる
けれども作業灯は
必ずの未来へと向かって
....
台所の隅でゴキブリが
腹を天に向けて死んでいる
死骸にざまあみろって言ってやったんだ
その死骸さえ嫌悪感を抱かせる
何もしていない彼らを殺し
何もしていない彼らを罵り
彼ら ....
時を刻むより他に
自分にはすべきことがあるんじゃないか
時計は思った
けれど何をしようにも
手も足も出るわけがない
ただ柱にぶらさがって
そこはそれ時計の悲しい性なのだろう
正確 ....
ほら、見てごらん
無数の蛍
無数の蝶々
せっかく部屋を暗くしたのに
ほら、見てごらん
僕らはすっかり取り囲まれてる
吐息、ひとつ
(甘く、美味)
喘ぎ、ひと ....
いずれ姿を消す
だろう月光
光を失った者の記憶には残ら、ず
されどその引力は
植物の{ルビ枝葉=しよう}に
昆虫の触角に
魚の尾びれに
爬虫類の肺に
鳥の翼に
哺乳類の脳に
空の風 ....
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
波のような顔をして
手をふっていた
それから、 と言ったあとの
あのひとの声が
ノイズにのまれて、ちらちらと
散ってしまったので
....
入院してる友達のために折ってるのと
その子はちょっと淋しそうに
鶴を折っていました
それを手伝おうと
わたしも折ったのですが
できあがった鶴の
羽を広げようとしたとき
その子 ....
私の獏は夢を食べない
捨て獏だったからかしら
母乳で育たなかったからかしら
理由はわからないのだけど
とにかく夢をさし出しても
ふんっと顔を背けてしまうから
長い長い格闘の結果
....
夏休み
街から人はいなくなった
窓という窓
木陰という木陰
ベンチというベンチ
そのいたるところから
少しの匂いと
体温を残して
静寂、というには
まだわずかばかりの音 ....
壊れかけたラジオが
なぜだか中国語の放送だけを受信する
意味はまるでわからないが
聞き覚えのある声だ
演説口調に冒されて
空間は異次元的に歪んでゆき
西壁はすっかり半透明の灰色の寒天に ....
寒冷に順応できず
やがて
命を奪われかけて
それゆえ
灼熱
灰と 火柱と 黒煙と
好き好んで
化身となったわけでは無いのに
ただ
寒さに耐えられず
ただ
冷た ....
今日いる場所も
明日いる場所も
ひとつの裏側
表側としか感じることが出来ない
かもしれない
ひとつの裏側
ここは寒いが
そこでは暑い
君はたしかな表側
同時に君は
ひとつの裏側
....
もともと
あてになる眼ではないけれど
それでも
夕陽の色彩くらいは
心得ている
川辺は 減速を始めている
木立は 瞑想を始めている
鳥達は 安息を始めている
あきらかに夕陽の時 ....
り りく
蝶 の 足は
おもくなり
つかまっていた 草葉
そっと 目を 開ける
大きな杉の木 のてっぺん
見る間に越えて
生まれたすべてを かけて
のぼり ....
パラパラとガラスをたたく
大地から沸き上がるあつさと
ねつの滴りに
味サイが帽子を揺らす
アスファルトは硝煙のかおり
かさのはながさく
しばし 追憶にまどろむ
ローソンの前にキャミソールが落ちていた
どこをどうやったら
そんなとこにキャミソールが落ちるのかが分からない
しかしまぁ、理由はどうであれ
結果としてそこにキャミソールは落ちていた
落と ....
大きな花火があがります。
小さな花火もあがります。
中くらいの花火もあがります。
きらびやかな色という色が
夜空を照らすのではなくて
夜空を背景にして
星の合間 ....
わたしは、ほんとうは楽譜なのです
と 告げたなら
音を鳴らしてくれるでしょうか
指をつまびいて
すこしだけ耳をすましてくれるでしょうか
それとも声で
わたしを世界へと放ってくれるでしょうか ....
いくつか 折りたたんでいくうちに
角が たくさんできるから
どこかの角で
会えればいい
続かない我慢が
言葉を避ける
触れるものは きちんと
きちんと きちんと
....
風を含んだふくらみが
道からひとり飛び立とうとしていた
波は空を洗いつづけて
地平に着いては羽になった
指は闇に触れていき
倒れたままのかたちを知る
波を無色の魚 ....
高村光太郎が
智恵子の首を彫ったのは
34歳の頃だという
写真では
苔生したような絨毯の上に
白い
智恵子の首が
ぼそり と
載っている
愛なのか
悲痛なのか
....
日曜日に夕日があたるので
さらに 奥まで入り込みますと
サヴォイの 看板が
悟ったように私は
このままの 状態で
さらに 奥へと進みました
壮健な 壮健な ....
あなたがいなくなって
正直
ずいぶん楽になったなと
思います。
もう、泣いたりわめいたり
行かないでくれとすがったり
不条理にいらだったり
そんなことをしないで済む分
ずいぶん、楽 ....
夜明けの風にほどかれた
雲の帯をたぐるように
よぶように手を伸ばす
朝日 そのへりにそって歩くぼくを
路地の無音のスピーカーが振り向かせる
民家の中 ただひとり
あのひとが嘲っている
日 ....
コンクリートの丸いもようは、踏んじゃだめよ
って、
しあわせになれないから
って、
きみが言ったとき
さっき
二度ほど踏んでしまったぼくは
ちょっと泣きそうになって、あわてて
声をだし ....
空は鋼鉄製の空
優しい飛行機だけが
僕らの所有する
すべてだった
乗客は皆
海のかたちをしていて
ポケットは
いつもだらしない
客室乗務員が
小学生のように
一人
また一人と
....
花は
咲きました
果てしなく
遠い色をした
沈黙の産声を放ち
それは
ここに刻まれています
みわたす限り
墓標の無い地平(こんな世界があるとしたら)に
墓穴をほり
ここに
種 ....
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