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――静かな風が吹き始めます。
  感情は涙のように滴り、
  バラの花びらが、
  ぼくらをどこか知らない遠くへと招く。

ようやくちいさな春がやってきた。
ようやくちいさな春はやってきて ....
朝一番の教習所
仄青い雨に濡れ 人々が集う
配車係のカウンターには 秋の虫
鳴いている鈴が耳打ちをする
“ぼくらはさようならの虫なのさ”
明日には居ない私の影
古びた床にすり込む 秋の靴
 ....
少しの間心を殺して
世界に心を溶かします

何もかもが私になった気分で
私がすべてになった気分で

部屋の中、ぽつりと
不潔な体を書きながら
ため息を漏らす

所詮、それは幻なんだ ....
この大きな水たまりは俺がつくってしまったのか
海を前にして蛇口は茫然と立ち尽くした

もしかしたら俺の栓を大事に開け閉めしてくれた人たちの家も
どこかに沈んでいるのかもしれない

そう ....
海の中で生まれた気がする
始まりは遠い手のひらの中
重ね着をして、重ね着をして
風邪を引かないように眠っていた頃
どこへでも、の世界は
指先まで暖かくて
つまずかないように歩けば
いつま ....
思いもかけず月がふくれあがる
―コオロギが膨らましている。
また一匹、また一匹と 
たくさんの虫たちの鳴き声が、
あるいはそこに
誰かの小さなささやき声も混じって、
月にあいている無数の穴 ....
メロンパン!チョコチップメロンパン!メロン果汁入りメロンパン!メロンクリームメロンパン!カスタードクリームメロンパン!あん入りメロンパン!ジャム入りメロンパン!抹茶メロンパン!バナナメロンパン!巨峰果 .... 毎年几帳面に
庭で鳴く虫たちも
ただ手をつくねているのではなく
住みよいほうへ
住みよいほうへ
移動しながら
運を天にまかせて
鳴いているのだろう
こんな十五夜の晩には
月のおもてを みがいたのは
ウサギではありません
神さまに供える詩を たべてしまい
途方にくれているのも
ウサギではありません
海の底から太陽を見上げる
眩しくて 神々しいそれは
ぼくを照らしてはくれなかった
お散歩に行きましょう
今日も歩けるしあわせ

草の香りが立つ道を
踏み歩いて

香りをすぅっと
吸いこむと
幼い私と手をとる父
横を歩く

いつか
子供に私は話す
父と手をつ ....
鈍く輝く影を見ながら

鈍く輝く影を見ながら

私と影は

互いに五指を張り合わせ

ゆったりと

文字を綴る

keep

文字を綴る

out

その境に綴られ ....
雷紋の刺青は火傷できえて


  砂塵の街にジャンビーアはおいてきた


   砂の海にはねるウサギはきんいろ



    狂暴な太陽はみんなを干物にしたがってるんだ


 ....
のどに はしゃぐ みめいの
つきの すずか つむぐ かるた

まわる やまの はるか さます
かやの ねむり まどう むごん

みちぬ おもい ゆきて きえる
かえぬ こころ ぬぐう ....
銀色の刺に、凍える、空気は、
青い空の下で、
白い、息をつき、声がもれる、
頬の骨に、拳が石のようにあたる。

わたしは、
バラ線を後ろに、殴られる。
放り出された、ランドセルの黒い光。 ....
筆圧の高い私は
消しゴムで消しても
けしてきえない
言葉を持っている

ただ
その消えない
言葉は わたしの胸の奥にしかないので
消して消えない言葉だということを だれも知らない

 ....
夜空にはウシが瞬いていた
草原では干しが干からびていた

もう一つ出まかせを言おう
この袋には伝えきれないほどの
星が詰まっている

飛行船のように女は笑った
                   こうず  まさみ
 梅雨が明けると
 辺りは緑一色
 眼に優しいその色は
 穢れを知らない少年のように
 きらきら 輝いていた

 ぼくは
 緑の ....
モノを置かないでください
と張り紙のあるところに
モノを置いた

そんな些細なことがきっかけで
そんな些細なことの積み重ねだったのだろう

「いつもの」
そう修飾された朝は
あっ ....
日常にくたびれた玄関先で
茶色のサンダルが
ころり

九月の夜気がひんやりするのは
夏の温度を知っている証拠

おまえには随分と
汗を染み込ませてしまったね
サンダルの茶色が
少し ....
各駅停車の鉄道がはたらいている
ひとの数だけ
想いの数だけ
星空のなかで
各駅停車の鉄道がはたらいている

天文学には詳しくない僕たちだけれど
きれいだね
しあわせだね
このままでい ....
しらないのですか

 しらないのですか

わたくしはもはや
すがたなきもの

たいしゃはすれども
かれはのしたの
つち
とおなじ
からだをもっているのです

しこうはすれども ....
 温もりの中にいた
 みんな微笑んでいた
 すべて輝いていた
 
 時が経った

 胸に冷たいナイフがささっていた
 みんな嘆いていた
 灰色の光景だった

 また時が経った

 ....
茶碗についた
食べ残された米粒のように
一人になって

通り雨が残していった
淡い湿気にたたずむカエルになる


きっと
この悩みが晴れようと晴れまいと
君が居ようと居まいと

 ....
肩が
うっすらと重みを帯びて
雨だ

気がつきました
小雨と呼ぶのも気が引けるほど
遠慮がちな雫が
うっすらと

もちろん
冷たくはなくて
寒くもなくて
そのかわり少しだけ
 ....
空の瓶が
割れない、音
そして
割れる、音
そして
割れた、音


さ、ゆう、


往復の波で揺れるのは
左右の、
暗い曲線の、
たったふたつの、耳
 ....
窓から空を見上げると
 直線的なエッジを持った二条の白い雲がある。
 これは、と思ってよく見ると
 天井蛍光灯の映り込みだった。

 そうだ、自然界には直線は無いか極端に少ない
 直線 ....
生まれ ささげ 手わたし 去る
鏡のなかに増えてゆく
誰もいない家並みに
打ち寄せるすべての見えないもの
やわらかく 冷たく
悲しいもの


暗がりに立つ光の線が
自 ....
わたし、という曲線を
無謀な指が
掌が
少しの優しさも無くなぞる


書院窓の向うでは
秋の長夜の鈴虫が
交尾の羽音で月の影絵を滲ませて


こっちにきて
こっちにきて、と ....
瞳をとじて あかい海

金魚の鉢に くちづける

からからの ぷらんくとんを ばらまくと

ゆれる水面に さざめくひかり 

プランクトンはぷくぷくみずを吸い込んで、
ぶくぶく息を吐 ....
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