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せめて はいさぎよい
悔いにのみこまれてもその上に震えたつ
涙もかれた花のいろをしている
せめて はもとめない
とうめいになったからだで小さなものたちを拾う
どんなにこぼれても心のあ ....
なき虫であっても
なく虫ではなく
よわ虫であっても
つよがる虫なのである
にがり虫に似た
にがい顔で
本の虫は点とり虫というが
てんとう虫はほんらいお ....
おんなは夜ひとり泣いたりする生き物だ
目をこすって赤く腫らしたりする生き物だ
落ち込んだりじぶんを責めたり
おんなは忙しくて切実なる生き物だ
おんなはみんな渡り鳥だ
あたまのなかの磁石に ....
会えてよかったですあなたが遠いところに行ったみたいで淋しかったから一つずつ小さな部屋の窓ガラスが静かに開け放たれていくようなお話かしらあなたがこれからも清潔な歌をうたいますように瑞々しい歌がうたえま ....
母は 捨てる
真昼に閉じた雨空へ捨てる
滑空する白色の鳥が堕ちる所
そこに堕ちる母のものを捨てる
湿地帯に隠された 母の書いたもの
そこに堕ちる母のものを捨てる
滑空する白色の鳥が堕ちる所 ....
い、痛くないの?
男のひとの満足げな顔って決して嫌いではないのだけど
京急立合川駅って普通電車だと運転免許試験場のある鮫洲駅からひと駅
競馬の好きな方なら大井競馬場への最寄駅で通り良いか ....
この小さくみすぼらしい結晶がもつ
本当の意味を
おまえは知らない
俺だけが知っている
その輝きの意味を
おまえは知ろうともしない
「キットハゼッタイデハナイノダヨ」
おまえはひん ....
とてもとても遠く離れた
それは
距離であり時間であり
近づきも交わりもしない
見えていても決して届かない月のよう
離れ離れのふたりの思い
奇しくも重なるふたりの思い
離れ ....
小さな蛇のミイラも大雨で流されて
ほっとしていた
蟻に狩られた子蛇
もしかしたら毒蛇の子で
しっぽしか食べられなかったのかもしれない
食べた蟻は死んだのかもしれない
助けを呼ぶように身をく ....
切なさに押し倒された心は
バクテリアに分解されて
影もなく
跡形もなく
消滅します
そう、だから
安心して眠るといい
悲鳴は求めています
私はマジックアワーに焦がれ
真っ赤に ....
思い描く
ラブソング
想像する
重さ
月夜に蝉の終わりの羽音
打ち上げ花火の余韻
声を殺して泣く
身体感覚とたましいが
握手する
風が
薄いカーテンをふ ....
うそには わざとだまされて
だまされる自分を楽しんで
むなしくないのと訊かれれば
わたしは機嫌よく答えられます
日頃 自身を欺いていますので
時には他人にだまされたくて
そう ....
本当のかなしみを知るひとは
かなしみのあり様をあれこれと邪推せず
涙で濡れた手のひらにあたたかな眼差しを重ねてくれる
本当のかなしみを知るひとは
ひとの過ちをあれこれと論ったりせず ....
猿ぐつわを噛まされた
裸の青白い男が椅子に坐っているので
私はどういうわけか
ふるさとを思い出さずには
いられない
椅子の背に両手を縛りつけられ
陶器のようにつるりとした太ももに
一 ....
大きな空の真ん中に
言葉にならない穴があって
その奥の色は群青色で
いろいろなランプが
つり下がってる。
いつでも自分は一人なのですが、
このごろますます一人なので、
言葉に ....
静かの海
ここはどこまでも静寂な 砂がさらさらと、
乾いた想いを落としていく
初めて出会った日を思い出しては
ナトリウムの大気に
耳をすませる
小さな部屋で聞いた
パステルの紙を走る ....
のっぴきならないのっぴ―のような
蛙の声が雨音にまぎれるような
御飯、パン、御飯、パンのような
星空がスイッチのない電灯のような
ゴミの日のカラスの合 ....
立ちションしてたら
虹がでた
手のひらで
掴もうとした
おしっこが終わるまで
何度も何度も
隣の姉さんが
バス停を降りるのが見えた
高校生になっていた
おしっ ....
{引用=(自動筆記の試みとして)}
薄っぺらい靴底を通してアスファルトが足裏を焼く。
体温と等しい大気の中、人は噴き出す体液で白い布帛を半透明にして抗えもせず、
仕事に炙られ夏にじっと茹でられる ....
「真面目にやってる人を馬鹿にしてんのか!」
真面目そうな奴が叫んだ。
俺はもっと大きな声で答えた。
「違う!これは不真面目なやつを励ましてるんだ!
真面目じゃなきゃ励まされる資格もないのか?
....
眠らないバスにのった
眠れないぼくは
あの野性化した雲といっしょに
あかるい夏の海辺をどこへむかっていたのだろう
写真でみただけの
マリアナ諸島の鮮やかなブル ....
蛾が舞う
びいどろ焼けた肌
今日は木曜
粘性の雨
水あめ
甘い茎を廻る
二十ニ色の蛾
電信柱の骨
涙浮かぶ川ふたつ
中洲の向こう
ひとさらい
手も足も
舌の ....
きちがいのきれいな歌声が
鞠のように転がる夜明けの街路
途切れた記憶が空気に触れて
朝露となってショーウィンドウでこと切れる
ぼくは眠れなかった
きちがいの歌声 ....
夏休み
坂の途中の煉瓦塀
遊び疲れて帰る途
突然、夕立の中
古いモノクロフィルムの
縦縞ノイズのような雨が降る
崩れかかった煉瓦塀の
裂け目から洋風の庭に
飛び込む
そこは荒 ....
おばちゃんに先導されて何気ないビルをエレベーターで五階にあがった
ほそい通路をニ度ほど折れておばちゃんがドアをあけた
そこがコピーショップだった
数分のうちに千元のブランド時計が五百元になっ ....
バケツをひっくり返したようなって言われても
ピンとくるわけじない
ひところ軒先で騒がしかったツバメの巣はいつの間にやら静かになっていて
育ち盛りと餌を催促してた雛たちは
ハーメルンの笛の音 ....
狂女の独白
いつもそれは夕刻よりも暗い夜明け
一日は、東の地底で死んだ胎児のように
いつ迄も、紫色の胎盤にまみれて
暗黒の硬い産道に引っかかっている
胎児の頸には硝子のつららが刺さって ....
乗馬パンツを試着する
膝に白い羽毛を見つけ
これにファルコンの綴り
を刺繍してもらう
*
まわるまわるルレットの
太陽
を日付変更線で切り取り
新しい布地と縫い合わ ....
{引用=
カーテンと足袋だけでどうにかなる話でもないが
思い出すことはできる
電気がチカチカする街を通り過ぎて
二度目の宿屋に泊まる
夕食はバイキングなので好きに採る
電気砂が入り ....
{引用=
「おはよう、
せっせとお弁当箱に昼食を詰める
この世界のなんらかに収まりなさいと
話しかけてくる忙しげな背中
通学路に捨てられた雑誌には
艶びかりする牡牛の角と蛙の屍
女の子の ....
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