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川を越えて
戻ってこなかった
砂利になった言葉ならば
ひとつかみにして 気のすむまで
玩んでいられるのだが
駅の屋根に
ふる雪のかなしさ 静かさ ....
火葬場で
親しかったものの焼失を
ただ待つことの夏に似ている
そのイーゼルは ほどなく
別の出来事に似ていく
喚ばれて
追憶をなめらかな塊のように撫 ....
わたしの胸のなかは
春がくると、空の色とおなじになる
うぐいすも桜もないこの町を
がたのきた軽自動車で駆けてくあなた
風のそよぎが耳にうたう
鋏を ....
きみは自分が誰かしっているのか
湯で卵のはいったカレーパンを口にほおばり
買ったばかりの黒い手帳に夢中になっているとき
見境のない冬の風が 昨日のきみといまのきみを重ね合 ....
終着駅まで眠っていた
雪がこそこそ降っている
汚い水のなかに
ゲンゴロウは浮かんでいる
だが、その正確な形状を
ちっともしらない私だ
....
降り続いた氷雨の残り香と
幽かな血の臭いがたちこめる
その日の屠殺小屋は静かだった
赤い肉がまだ少し残された
一頭ぶんの、豚の外皮だけが
壁にだらしなくぶら下 ....
まるでこの世の始まりから
僕を待っていたように
茶色い床に君の
十二枚の写真が散らばっている
秋の風が窓の外で
穏やかにはためく午後
僕はグラスに冷たい ....
あなたを
埋めてしまわなくては
なりません、突然の雨に
暴風に、雷に
あなたが苛まれないために
土深く埋めてしまわなくてはなりません
スコップに土をすくい、 ....
十月の豊かな光が
いつもの駅前
喫煙所のボックス灰皿のあたりに
私が待たせている
ひとりの女の額のあたりに
しっとりと落ち、
浸食するように広がる
....
猫よ
おまえは邪魔だから
どこまでも流れていってしまえ
そう言うと僕は
ギャアギャアとあばれる君の飼い猫を
便器に放りこんで
「大」のレバーを回したのだ ....
僕が死んだときには
僕のペニスを切り取っちゃってくれ
抽斗に
ナイフを入れておくから
残りの部分は燃やしちゃってくれ
僕が死んだときには
僕 ....
実りすぎたのだろう
夕暮れ
ぼたぼたと光は落下し
夏の川に
鈍く奏でられる
水は鳴り
子等も響く
夏の川は
ひとつなぎの譜面とな ....
きみの
女性器のまえに屈んで
カリリと酸の肉を噛んだ。
淫れ髪から香るは春、
その物語をそっと吸うと
ぼくらの時間はふいに、
反復横跳をはじ ....
引用符を背負った
かたちのない人たち
昨日の影に向って
蝉の声が落ちてくる
薄暗い景色は
横断歩道の向こうで止まった
僕をさ ....