洗面台
墨晶

 手を洗ってばかりいる子供は

 同時に

 髪の毛を抜く子供で

「地獄」と云うものは

 それは「毎日」の意味だった


 夜

 布団の中で

 この世のあらゆる汚物が

 代わる代わる訪ねて来て

 眠れない

 闇へ逃げる

 何もない場所へ走り続け、疲れ果て

 その子供はやっと眠れる


 他人が手を洗っているのを見る

「ああ あのときの子供がいる」


 手を洗っているさなか

 鏡のなかの白髪の子供と目が合う
 
 
 


自由詩 洗面台 Copyright 墨晶 2021-04-10 21:28:57
notebook Home 戻る