すべてのおすすめ


インインと{ルビ頻=しき}り啼く蝉の声、
夏の樹が蝉の声を啼かせている。

頁の端から覗く一枚の古い写真、
少年の頬笑みに指が触れる。

本は閉じられたまま読まれていった……
 ....
砲口のまえで、
つねに張りつめている、
灰色のくもり空のした、
まなざしは玉結びのように、つねにかたく、
未開にもひとしい、山道を、
まるで履きなれない軍靴で、
踏みしめて、
ゆくように ....
いまは夏休みということだ
同じアパートの一年生がアサガオを持ち帰り
朝晩水をやっている
ここ数日の暑さも少しやわらいで
きょう風はさかんに木漏れ日をゆらしている
濃い影から飛び立った 一羽の ....
 忘れ物 に なったハンカチ
 あわいもも色 うさぎを飼って
 駅の向こうから来る
 おんなの子を見て
 つれていって
 と、輪をかいた
 石のむれをしずめた 海と
 とおい空 かすれた ....
夏の水の力を借りて
包丁を研ぐ
冷たい石の周りで
世界は沸騰し騒騒しい
蝉は
悲しみを
果てまで
追い詰めて鳴く

時折
人差し指で
刃に触れて確かめる
すり減りながら
鈍色 ....
雨が降っている
雨だと思う
すべてが細くなる
無い言葉
はずれた草花
消えていく庭は
町工場のところで
途切れてしまった
ノートの中にある
わたしの罫線
罫線に隠している
 ....
髪の後れ毛が
もやしのひげのように
蒸れた風とけっ託して
汗と貼りつく

ぽにーているならぬ
わたしのひとつ結びは
ねこのしっぽでありたい
脊髄のさきにあるまでの、感情

あな ....
 月の夜だった。欠けるところのない、うつくしい月が、雲ひとつない空に、きらきらと輝いていた。また来てしまった。また、ぼくは、ここに来てしまった。もう、よそう、もう、よしてしまおう、と、何度も思ったのだ .... ふたり分の沈黙を乗せて
笹舟は遠ざかる
意識を過去へ葬るための
ひとつの光の繭となって

むかし使っていた腕時計が
どこかで針を揺らしている
重ねた手が夜の魚のよう
夏の体温に静かに跳 ....
野球の音が聴こえる
野球をする音が聴こえてくる
誰もがみんな
胸の中に野球を飼っている
整備の行き届いた市営グラウンドから
夏草の生い茂る河川敷まで
球足の早いゴロが一 二塁間を
抜け ....
 よい父は、死んだ父だけだ。これが最初の言葉であった。父の死に顔に触れ、わたしの指が読んだ、死んだ父の最初の言葉であった。息を引き取ってしばらくすると、顔面に点字が浮かび上がる。それは、父方の一族に特 .... 未だ血圧の上がりきらない朝
乳白色の靄がかかった意識の西側から
コーヒーの香りが流れ込んでくる

オールを失くしたボートさながら
廊下をゆうらりと彷徨いながら
食卓のほとりに流れ着く
 ....
雨の気配を感じて手のひらを空へ差し出す

つるりとして
なだらかな
わたしの丘に
今日の雨粒が流れたら
くぼ地の枯れた水路が
一瞬よみがえる
かつて
そこへ流して遊んだ
笹の葉や
 ....
ホソカミキリムシよ、
君はぼくのひみつの友達、その一人、
君もまたいつの日かのぼくに似て、その身動きはまったく取れず、
やがて本格的なスピードで走行され始めてもなお、けっして振り落とされまいと、 ....
秒針が力なく明日を告げる、残骸だらけの街を抜けていくと海があるはずだ
けれどもあなたは空気の抜けた風船、口づけても口づけてもすうすうと抜けていく
今日のために買った靴を捨て 鞄を捨て 指輪を捨 ....
 あの……おれ、夢見るんですよね、海の。ときどき夢のなかに海がでてきて、おれはサーフィンやってるんです。でっかい波にのってると、そのままヒューッて空に飛んでっちゃったり……あと……パイプ・ラインのなか .... 日曜日の夕方
猛暑です
私がどこで何をしていても
ここは猛暑です

この世に参加して随分経ちました
参加賞を貰いましたか
まだですか
もうぼろぼろですがいつもポケットに入れています
 ....
願いが叶わなかった日
遠く、命の向こう側から聞こえてくるのは
ニイニイゼミの声
毛穴から染み入り、毛細をとおって
脳内に聞こえてくる

頭上を爆撃機がかすめて飛んでいた
なのに街は箱庭の ....
灰青色のかなしみが
時計の針にまつわるので
空気が気怠さを増してゆく部屋で

六月の似合うそのひとを
あなた という二人称に委ねないために
窓外に滲むあじさいを
しずかにただ眺めていた
 ....
雨は降ったり止んだり降ったりで
四季のある国のひそかなもうひとつの季節

室内干しの洗濯物
取り込むまえに
ちゃんと乾いているだろうか、とさわってみる

乾いているようにみえても
繊維 ....
このまま、眠らないでいると
うす紫の夢を見るじゃん
嘘のつがいが 空を
飛ぼうとするじゃん
飛ぼうとして、飛べなくて
それでもいいかって笑うから
嘘の全部が 愛になっちゃうじゃん

 ....
 夜

月明り
独り暮らしが始まっていた
絶望も希望も寝静まり
生活が一つ転がっている

 朝

目が覚めて思う
生きていた
しかも快晴だ
何にもないので
布団を干した

 ....
気がついてみると、あの頃にようには心や脳
が動かなくなったのか、とかなんとか。そん
なことはないはずで、身体と心のあちこちが
ゆるんで、ちょっとやそっとしたことなんか
で胸が高鳴り、涙を流して ....
歯医者さんの窓
いい天気
ぽかんと待ってる

歯に穴があいた僕は
言われるがまま
口をあけて

何か詰めてもらった
もう食べても大丈夫
治療は次回から

外に出たらギラギラお日 ....
拡がりが
拡がりを飲み込んで行く

私は 母の形をした服を着て
熱い、熱いと泣いている拡がりを宥める

いったいもうどんなかたちをして
街を許したらいいのか
どんなかたちをして 乞 ....
子供たちが整列をしていた
何をしているのだろう、とよく見ると
整列をしていた
身体の隅々にまでしみわたる雲のように
なだらかで滑らかだった
透明な水を植物にあげて
話すことなどもう ....
桜が散り 紫陽花が褪せ 沙羅の花がひらいた
ひと息のあいだに
あなたの背中が 広くなる
投げ込まれる目くばせに
くすくす笑いの小波に
あなたたちの髪は 伸びていく

結んで結んで ....
それは凄くて 彼の胸は貝がらだ
完璧な夏に 投棄された貝がらだ
涸れないことをほめるのは
ただ軽蔑するのと一緒だ

彼は{ルビ薬匙=やくさじ}を咥えさせて
蛇も寝なさそうな夢を明か ....
ホームセンターで
小さな紙袋に入った花の種を買い
土を入れたふかふかのプランターにまいた
ねずみ色の日々の傍らに
きれいな花を咲かせたかったのかもしれない

庭のひなたに置いたプランターに ....
子が産まれる、とわかって、
しっかり喜んでみたのだが、
まだ、わからないのよ
そうか、まだわからないのだ
無事に産まれてこない胎児たちもいる

産院の、陽がよく入る待合室
お腹の大きな妊 ....
七さんの自由詩おすすめリスト(1307)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
陽の埋葬- 田中宏輔自由詩15*23-8-7
演習- 本田憲嵩自由詩923-8-5
百鬼百景- ただのみ ...自由詩4*23-8-5
忘れ物になったハンカチ- soft_machine自由詩12*23-8-5
- そらの珊 ...自由詩12+*23-8-4
落書き- たもつ自由詩14*23-8-3
夏のしっぽ- 唐草フウ自由詩12*23-7-31
陽の埋葬- 田中宏輔自由詩13*23-7-31
怪異のはだえ- ただのみ ...自由詩5*23-7-30
野球- ちぇりこ ...自由詩14*23-7-27
陽の埋葬- 田中宏輔自由詩10*23-7-17
食卓に朝を置く人- 夏井椋也自由詩14+*23-7-15
手のひらの丘- そらの珊 ...自由詩18*23-7-12
ホソカミキリムシマン- 本田憲嵩自由詩823-7-10
風船- はるな自由詩523-7-10
陽の埋葬- 田中宏輔自由詩14*23-7-10
日曜日の夕方- 空丸自由詩1523-7-9
- 山人自由詩13*23-7-5
あじさい- 塔野夏子自由詩12*23-7-5
梅雨の通夜- そらの珊 ...自由詩11*23-6-30
うすむらさき- はるな自由詩623-6-26
One_Day_- 空丸自由詩1523-6-22
いつか_あえかなきみ- AB(な ...自由詩8*23-6-19
休日の途中- 日朗歩野自由詩4*23-6-17
拡がり- はるな自由詩323-6-17
夏の場面- たもつ自由詩723-6-16
成長- はるな自由詩123-6-12
夏塊つち- 蕎麦屋の ...自由詩823-6-12
アカザ- そらの珊 ...自由詩5*23-6-7
羊水- fujisaki自由詩723-5-31

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44